アザレア室内オーケストラ演奏会
2008年5月11日(日) プレゼンター: 藤井たけちか内科医院・オムロン倉吉
指揮/松岡 究 マリンバ/門脇志保
会場:倉吉未来中心大ホール 午後2:00 700円
アザレアのまち音楽祭2008 〜開会式典〜
1 ファンファーレ 打吹音楽倶楽部ブレーメン
2 会長あいさつ アザレアのまち音楽祭実行委員会会長 金澤瑞子
3 来賓祝辞 倉吉市長 長谷川稔
4 音楽祭賛歌 アザレア室内オーケストラ
歌/小谷弘幸 指揮/小谷敏彦
[ファンファーレ/小谷敏彦作曲 音楽祭賛歌/山本喜三作曲]
【プログラム 】
1)メンデルスゾーン作曲/序曲「フィンガルの洞窟」 Op.26
2)メンデルスゾーン作曲/マリンバ協奏曲 ホ短調 作品64 ソリスト/門脇志保
3)ベートーヴェン作曲/ベートーヴェン作曲/交響曲第7番 イ長調 作品92
【指揮者プロフィール】
松岡 究(まつおか はかる)
1987年、東京オペラ・プロデュース公演「ビバ!ラ・マンマ」(ドニゼッティ作曲)を指揮しデビュー。その後、文化庁優秀舞台奨励公演で「蝶々夫人」(プッチーニ作曲)、「オテロ」(ロッシーニ作曲)を指揮。その他「ヘンゼルとグレーテル」「婚約手形」「カルメン」「椿姫」「ドン・ジョヴァンニ」「ハムレット」等の作品も高く評価されている。
新国立劇場には「恋は御法度」(ワグナー作曲)や「ハムレット」(トマ作曲)で既に登場しているオペラ指揮のベテラン。
鳥取県に於いてはミンクス室内オーケストラ結成以来継続して、すべてのコンサートに登場している。そして、これまで6回の第九公演、第九合唱団との共演によるモーツァルトのレクイエム、フォーレのレクイエム、バッハの「ミサ曲ロ短調」、ヴィヴァルディのグローリア、ヘンデルのメサイア等を手がけている。更に、鳥取オペラ協会設立の1999年以来、「フィガロの結婚」及びその再演、「魔笛」、国民文化祭オペラ公演の新作オペラ「ポラーノの広場」の初演、「ドン・ジョヴァンニ」と続き2004年には「ポラーノの広場」の再演も手がけている。昨年の秋には、国民文化祭ふくい2005のオペラ公演でオペラ「つめ草の道標〜ポラーノの広場への道〜」を指揮し、年末に鳥取オペラ協会公演のオペラ「アマールと夜の訪問者」を手がけた。昨年の11月には鳥取オペラ協会公演のオペラ「コシ・ファン・トゥッテ」を手がけるなど、県内のトップ公演を担っている。
【ソリスト・プロフィール】
マリンバ 門脇志保 (かどわき しほ)
東京芸術大学附属音楽高等学校中退。1993年、第36回(日本木琴協会)東京マリンバコンサート出演。1994年、第45回全国選抜マリンバ大会出演。1996年、日本クラシック音楽コンクール全国大会「審査員特別賞」。1997年、中学ユース音楽コンクール打楽器部門「優秀賞」。1998年、第2回全日本ジュニア管打楽器ソロコンテスト「中学生部門」第2位。1999年、国際芸術連盟「JIRAコンクール」一次・二次通過、最終審査会出場。2003〜2004年、神戸国際学生音楽コンクール打楽器部門第一次予選通過、本選大会出場。2007年、鳥取県管弦打楽器オーディション「優秀賞」。3才よりピアノ、8才よりマリンバを始め、これまでに、山内利一・種谷睦子・有賀誠・神谷百子の各氏に師事。
【オーケストラ・プロフィール】
アザレア室内オーケストラ
泊村在住の医師「吉田明雄氏」が主宰するプロ・アマ混成の極めてハイレベルな室内オーケストラです。設立当時から指揮を担当するプロの指揮者「松岡究氏」の薫陶を求め、各地のオーケストラから参集したメンバーによって編成されています。よりレベルの高い音楽の追究をしたいと、音楽家としての自立を求めるアマチュア奏者にプロ奏者がゲスト参加して、素晴らしい音楽を紡ぎ出す限りなくプロに近い演奏集団です。
【メンバー】
1st,Vn:吉田明雄、平井誠、曽田千鶴、佐倉伸一、野村知則、 井上志保
2nd,Vn:永江佳代、益尾恵美、荒井ゆうき、矢尾真希子、北山三枝子
Va: 足立淳、松永佳子、長田直樹、山梨豪彦
Vc: 原田友一郎、須々木竜紀、中野俊也、川元明子、 井上拓也
DB: 生田祥子、渡辺琢也、大津敬一
Ob:古川雅彦、上代美樹
Fl:稲田真司、古瀬由美子
Cl:杉山清香、山田祐司
Fg:木村恵理、橋本美紀子
Hr:小椋智恵子、石和田淳
Tp:大場明夫、玉崎勝守
Timp: 村井克弘
〜ご 案 内〜
【アザレア室内オーケストラ】
近年、アザレア室内オーケストラの評価は高いものがあります。昨年の音楽祭での演奏を聴いて、「アマとして、ずば抜けたものがある」とブログにお書きの方がありましたが、まさに、的を射た感想だと思います。そもそも、アザレア室内オーケストラは、アマとかプロという範疇を越えたものであり、第三のオーケストラだと自負しています。プロとは、音楽の才能に恵まれている以上に長くて厳しい修練を積んでいる方々であり、聴衆の芸術欲を満たす事が出来なくてはなりません。アマというのは、自分でその想いを表現できる技術に至っていない、ましてやそれを研き続ける訓練もしていない。ですから、アマとプロの間には、越えがたい乖離があると言われています。
しかし、現代のアマオケは、そんなにレベルが低いわけではありません。なぜなら、音楽大学で専門に学び、訓練をとことんやった方々が、地元に帰りアマオケの中で活動しているのです。毎年、音楽系大学を卒業する音楽家の卵たちは一万人以上いるといわれます。競争社会の中で、プロとして残っていけるのは1%未満だと言われるほど激烈な世界なのです。ほとんどの音楽家は、生活のための職業を持たなくては、音楽活動が出来ない現実があります。また、音楽を生業にしないが、音楽をライフワークにしている方々も、アマと言う範疇の中に沢山おられます。専門教育を受けたわけではなくとも、アマとプロが一緒に演奏するための努力を積んでいる方もいます。アザレア室内オーケストラは、プロとアマの垣根を取っ払った、まったく新しい地域社会でのオーケストラのあり方を具現しているのです。プロと一緒に演奏するためには、プロの技術に限りなく近づこうとしなければなりません。自己流をやっていたのではまったくだめです。アザレア室内オーケストラのメンバー達は、メソードに従って正しくレッスンを受けるため、最大の努力をしています。アマの嗜みではないのです。ですから、アザレア室内オーケストラには、「自己満足」という概念は存在しません。そもそも、音楽芸術を求めるには、高い技術の習得は当然であり、表現意欲を高い次元で満たせなければ、何も無いと同じなのですから。
ところで今年のステージは、マリンバの門脇志保さんが登場します。門脇さんは、私が最も期待する演奏家の卵です。お兄さんのチェリスト「門脇大樹」さんも凄いのですが、志保さんのアーティキュレーションは正に天才的です。マリンバと言う打楽器を、弓奏楽器のようなニュアンスで訴えさせるメロディ線で、聴くものの心を虜にするテクニックがたまらないのです。今回、ヴァイオリン協奏曲の、名曲中の名曲をマリンバで聴けることに大きな期待をしています。
今年のメインは、ベートーヴェンの第7番です。古典派音楽の最高傑作だといわれる7番は、アザレア室内オーケストラにとっては、新しい次元に向かって道を拓く試金石となるでしょう。聴衆の皆様にも、ご自分の感性を研ぎ澄まし、厳しい審美眼でお聞きいただければこの上ない幸いです。
【曲目解説】
1)メンデルスゾーン作曲/序曲「フィンガルの洞窟」 Op.26
メンデルスゾーンは1829年8月、初めてのイギリス演奏旅行の足を伸ばし、スコットランド西部ヘブリディス諸島の一つ、スタッファ島のフィンガルの洞窟を訪れました。海蝕によって作られた巨大な岩窟に強い感銘を受けたメンデルスゾーンは、たちまち楽想が湧き、家への手紙にこの序曲の最初の主題を書いて送りました。自宅に帰ってからこの洞窟の印象を尋ねられた時、「口では巧く言えませんが、音楽にするとこのような感じです」と言ってピアノに向かい、未完成の曲を弾いたといいます。
2)メンデルスゾーン作曲/マリンバ協奏曲 ホ短調 作品64 ソリスト/門脇志保
独奏マリンバ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、
トランペット2、ティンパニ、弦楽五部
この曲は本来ヴァイオリンのための協奏曲です。今回は、このヴァイオリンの名曲を、マリンバに様式変換して演奏されます。
メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64は、1844年に作曲されたヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲です。穏やかな情緒とバランスのとれた形式、そして何より美しい旋律で、メンデルスゾーンのみならずドイツ・ロマン派音楽を代表する名作であり、ベートーヴェン、ブラームスのヴァイオリン協奏曲と並んで『3大ヴァイオリン協奏曲』と称される名曲なのです。
メンデルスゾーンはこの作品の他にもう1曲ニ短調のヴァイオリン協奏曲を作曲していますが、こちらの作品は長い間紛失しており、1951年にヴァイオリニスト、ユーディ・メニューインによって発見されるまで忘れられていた作品であり、その知名度はホ短調の作品とは比較するべくもないでしょう。さらにピアノ協奏曲や2台のピアノのための協奏曲、ピアノとヴァイオリンのための協奏曲など、メンデルスゾーンが作曲した協奏曲諸作をも知名度においてはるかに凌駕しており、単に「メンデスゾーンのコンチェルト(協奏曲)」と呼んで、他の協奏曲を指すことはほとんどないため、音楽愛好家はこれを短縮した、『メン・コン』の愛称で本作品を呼び習わしています。
第1楽章 アレグロ・モルト・アパッシオナート ホ短調
第2楽章 アンダンテ ハ長調
第3楽章 アレグレット・ノン・トロッポ ? アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ ホ短調?ホ長調
3)ベートーヴェン作曲/交響曲第7番 イ長調 作品92
Fl,2 Ob,2 Cl,2 Fg,2 Hr,2 Tp,2 Timp,1 St,5
ベートーヴェンの人気曲といえば、ニックネームのついた「英雄」「運命」「田園」「合唱」と言うのが相場ですが、近頃、「のだめカンタービレ」の大ヒットで、これまで地味といわれていた7番がCDのベストバイになっていたりします。テレビで大ヒットしたドラマの主題曲がこの7番だったからです。全曲を一貫して貫く6/8拍子のリズムに乗って、第一主題の何の屈託もない流動的なメロディ、木管群からヴァイオリンに引き継がれフォルテシモになって狂喜乱舞するさまは、まさに躍動的でワクワクさせるものがあります。それがこの曲の魅力ではないでしょうか。
音楽は、メロディー、リズム、そしてハーモニー。音楽はこの3つのブレンドです。そして、そのうちのどれに光を当てるかによって、音楽の性格がガラッと変わります。例えばモーツァルトの「ジュピター」終楽章は、ド-レ-ファ-ミという旋律が何度も繰り返されるメロディー主導型です。また、ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」は、行き着くあてもなくさまよい続けているようなハーモニー主導型。そしてこの曲は全楽章を強烈なリズムで貫いた、いわば音楽史上初の?リズム主導型交響曲だと言えるでしょう。この曲について リストは、「リズムの神化」と言っていますし、ワグナーは「舞踏の神化」とまで言っています。面白いのは当時15歳年下だった指揮者のヴィーク(クララ・シューマンの父)が、「これはベートーヴェンが酔っ払った時に作曲したのではないか、特に1楽章と4楽章は…」と言ったといわれています。
しかし、リズム主導と言っても打楽器群はティンパニが1セット。「運命」「田園」で活躍したトロンボーンもピッコロもコントラファゴットもない、彼の初期の交響曲やハイドン・モーツァルトの時代に後退したような、いたって質素な楽器編成です。しかし、そこから出てくるパワフルな響きが従来のそれとは明らかに違うのです。
そもそもベートーヴェンがこの曲を作曲したのは1812年、彼は42歳。まさに脂の乗り切った時期そのもので、この頃はピアノ協奏曲「皇帝」やピアノ三重奏曲「大公」など傑作を次々と生み出していました。また、当時はナポレオン軍があちこちに侵攻して暴れまわっていた折、ナポレオン軍敗退をテーマにした曲を依頼され、戦争交響曲「ウェリントンの勝利」を手がけるなど、ゆっくり寝る暇もないくらい多忙な毎日だったようです。そして前作「田園」の発表から5年間の沈黙の後、ベートーヴェンは自信を持って「交響曲第7番」の筆を取ったのです。そしてアイルランド民謡やオーストリー・ハンガリーなどの古い民族舞曲からの引用を随所に盛り込み、全曲を通してベートーヴェン特有の重さ・暗さは抑えて、明るく快活なサウンドと強烈なリズムを前面に出した、当時としては非常に斬新な交響曲が出来上がったのです。彼はこの曲で、最小限のオーケストラから実に多彩でリズミックでごきげんなサウンドを最大限に引き出すことに成功したのです。
初演は1813年12月に作曲者自身の指揮で行われ、第2楽章はアンコールされました。もっとも当時は、大砲や小銃、軍楽隊が派手に鳴り響く「ウェリントンの勝利」が同時に初演され、それを目当てに聴きに来た聴衆がほとんどで、交響曲の方はあとからじわりじわりと人気が出てきたとのことです。
第1楽章 ポコ・ソステヌート(やや音を保って)〜ヴィヴァーチェ(躍動的に)
第2楽章 アレグレット(やや速く)
第3楽章 プレスト(急速に)
第4楽章 アレグロ・コン・ブリオ(快速に、元気に)