【曽田千鶴ヴァイオリン・コンサート】
Piano 古川浩美
5月13日(木)19:30 倉吉交流プラザ 700円
第1部
@アザレア賛歌(山本喜三作曲)
Aロマンス Op.28(G. フォーレ作曲)
Bヴァイオリン・ソナタ Op.21(E. ドホナーニ作曲)
このソナタ嬰ハ短調は1912年(35歳)に作曲している。ドホナーニの創作姿勢は、ヨーロッパのクラシック音楽の強力な伝統に、より深く根ざしており、とりわけブラームスの痕跡が歴然としているといわれる。ドホナーニは晩年アメリカで過ごしたが第二次大戦時は、ハンガリー王国に留まり続け、非政治的姿勢を貫き通しながらも、ユダヤ系の音楽家を庇い続けた経歴がある。アメリカでは、作曲活動は続け、その間、フロリダ州立大学タラハシー校で10年に渡って教鞭を執ったりしている。
CMuch Ado About Nothing「空騒ぎ」Op.11(E.W. コルンゴルト作曲)
この組曲《空騒ぎ》は、同名のシェイクスピアの戯曲から引用したもの。コルンゴルトの若かりし頃の佳品。シェイクスピアを題材にしておもしろく仕上げている。彼は、映画音楽を沢山作曲しており、随所に映画音楽の香りを漂わせている。
第2部
@ヴァイオリン・ソナタ 第2番 ニ短調 Op.121(シューマン作曲)
第1楽章 かなりゆっくりと、短くかつエネルギッシュに-生き生きと
第2楽章 きわめて生き生きと
第3楽章 静かに、素朴に
第4楽章 活発に、動きをもって
この曲は、演奏される機会が多い作品である。シューマンは第1番の出来にあまり満足できなかったらしく、第2番を作曲するにあたって、前作の反省点を踏まえて、2つの楽器のバランスを配慮しながら構成や統一性にも最善の注意を払って作曲したといわれる。全4楽章で構成され、演奏時間は約30分。
第1楽章 ニ短調、3分の4拍子。序奏は「エネルギッシュ」な和音の連打で開始される。最初の2小節にわたる4和音の最上声部の音(ニ-イ-ヘ-ニ)は、ダーフィト(DAFD/レ・ラ・ファ・レ)の名に基づく音型である。主部は4分の4拍子、ソナタ形式。
第2楽章 ロ短調、8分の6拍子、ロンド形式。いわゆるスケルツォの楽章で、ピアノで始まるリズムの主部に、柔らかな歌によるトリオが2つ挿まれる。
第3楽章 ト長調、8分の3拍子、変奏曲形式。ここではコラール『深き淵より』に基づく主題がピッチカートのソロで奏される4つの変奏が続く。主題のコラールは『讃美を受けたまえ、主イエス・キリストよ』とも言われている。
第4楽章 ニ短調、4分の4拍子、ソナタ形式。第1主題はスピード感と細かな動きが特徴のある楽章で、ヴァイオリンとピアノの掛け合いが多い。途中から、落ち着いた第2主題が扱われ、再び第1主題が戻る。そして展開部、再現部と続き、コーダ(ニ長調)へと至って曲を終える。
プロフィール
曽田千鶴Violin
島根大学教育学部特音課程卒業、同教育専攻科修了。ヴァイオリンを坂本博之、知念辰朗、漆原朝子各氏に師事。境港にてデュオ・コンサート、倉吉アザレアのまち音楽祭にてソロ・コンサートを開催。広島交響楽団など中国地方各地のオーケストラの客演、トリオ、弦楽四重奏、室内楽グループ「ミュージック・ファクトリー」などを中心に演奏活動を行なうかたわら、島根大学教育学部非常勤講師をつとめる。
最近では、ニューヨーク州立大学交響楽団副コンサートマスターを委嘱されるほか、ヨーロッパを代表する現代音楽グループ、アンサンブル・サープラスの指揮者・ピアニストとして著名な故ジェームス・アヴェリーとの共演を初め、現代音楽の初演・再演に数多く参加。アラン・ファインバーグ、ミミ・ホァン、ジョナサン・ゴロヴより室内楽のレッスンを受け、フルートトリオ、カルテット、ピアノトリオ、室内オーケストラ、フォークロア・アンサンブルなど、在住中である米国において幅広い分野の室内楽コンサートに出演、好評を博する。一方、ミンクス(アザレア)室内オーケストラ、瀬戸フィルハーモニー交響楽団等、日本での活動も継続的に行っている。
古川浩美Piano
島根大学教育学部特音課程卒業。土屋照子、長岡敏夫、島畑斉、蓼沼恵美子の各氏に師事。ピアノデュオを児玉邦夫、児玉幸子の両氏に師事。島根大学教育学部特任准教授。出雲北陵高等学校音楽コース非常勤講師。日本ピアノ教育連盟会員。国際ピアノデュオ協会会員。
第3回摂津音楽祭(リトルカメリアコンクール)で第1位金賞受賞。第1回国際ピアノ
デュオコンクール連弾部門第1位入賞。1992年ヨーロッパピアノ教育連盟研究大会(ロンドン)、1995年第4回ヨーロッパ・ウラル・アジアピアノフェスティバル(ロシア・エカテリンブルグ)でピアノ連弾を演奏。同フェスティバルで行われた「児玉邦夫メモリアルコンサート」でも演奏する。1997年第3回エネルギア音楽賞を受賞。第8回ピアノデュオフェスティバル「シューベルト生誕200年記念」に出演。1998年、1999年ブルガリアにてピアノ連弾を演奏。2001年音楽の友ホールにおいてピアノデュオリサイタルを開催。ドイツ・ヴォルムス、ダルムシュッタットにてピアノ連弾を演奏。2002年「2002International Piano Duo Festival In Japan」に出演。2006年プラバふれあいコンサートにてピアノデュオリサイタルを開催。その他各地でピアノデュオフェスティバル、コンサート等に出演。
ディレクターのコンサート案内
曽田さんは、アザレアのまち音楽祭の黎明期からずっと、ご出演いただいている優れたヴァイオリニストです。これまでアザレア室内オーケストラの一員としてだけでなく、かつてはアザレア弦楽四重奏団やアザレア・ミュージックファクトリーの団員として参加し、更にサロン・コンサートにソリストとして登場したりしていました。数年前から、ご主人の海外留学に同伴され、現在はニューヨークに在住されています。それにもかかわらず、アザレアのまち音楽祭の季節になると里帰りを口実に、アザレア室内オーケストラに参加して下さっていました。そこで今回、折角帰国されてのオーケストラ参加だけではもったいないとの思いから、ソロコンサートをお願いしたわけです。
曽田さんのヴァイオリンは、誠実な人柄を反映したように、端正で虚飾を廃した演奏がその魅力です。これまで、ベートーヴェンの5番のソナタ、シューマンの一番のソナタ、そしてブラームスの2番のソナタなど、じっくりと聴かせていただいた記憶があります。今回は、5年ぶりのサロンであり、曽田ファン待望のコンサートになります。演奏される曲は、とても珍しいアメリカの作曲家(ドホナーニやコルンゴルト)を取り上げた前半と、後半はシューマンの2番のソナタが登場します。曽田さんのシューマンには、何ともいえない深い味わいがあり、特に2番の3楽章が楽しみです。