【吉田明雄ヴァイオリン・コンサート】
Piano 蓼沼恵美子
2011年5月27日(金)19:30 倉吉交流プラザ 700円
第1部
モーツアルト ヴァイオリン・ソナタ 第28番 ホ短調 K.304(300c)
1778年頃の作品。母アンナがパリで客死した時期のもので、明るい曲想の多い作曲者の作品の中では、数少ない短調の劇的なもの。
マスネ タイスの瞑想曲
ジュール・マスネが作曲した歌劇「タイス」(1894年初演)の第2幕第1場と第2場の間の間奏曲。その甘美なメロディーによって広く知られている。本来はオーケストラと独奏楽器の形であるが、室内楽編曲も多い。
クライスラー ロンドンデリーの歌
世界でも広く知られるアイルランドの民謡を、フリッツ・クライスラーが編曲した曲。
チャイコフスキー 懐かしい土地の思い出より メロディー
チャイコフスキーにとって唯一の、ピアノとヴァイオリンのための作品。
全3曲から構成され、第3曲「メロディー」は演奏会のアンコールでもよく取り上げられるなど、その中でも最も有名である。ロマン主義影響の見られる、郷愁感に心ゆくまで浸れるような優しい旋律が魅力。
チャイコフスキー カンツオネッタ
1878年に作曲された、ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品35の第2楽章。物悲しげな旋律を奏でる。
第2部
モーツアルト ヴァイオリン・ソナタ 第40番 変ロ長調 K.454
1784年、イタリアの女性ヴァイオリニスト、レジーナ・ストリナザッキが、自身の演奏会を開くに当たってモーツァルトに共演を依頼し、これを受けて作曲されたヴァイオリンソナタ。全3楽章の構成で、演奏時間は約21分。
第1楽章 ラルゴ−アレグロ
ラルゴの序奏と、生き生きとしたアレグロの主部(主部はソナタ形式)で構成される。
第2楽章 アンダンテ
自由なソナタ形式による緩徐楽章である。陰翳に富んだ情緒が美しく醸し出されている。
第3楽章 アレグレット
大規模なロンド形式によるフィナーレ楽章である。
プロフィール
吉田明雄(よしだ あきお)Violin
鳥取大学医学部卒業。鳥取大学医学部第一内科助教授退職後、湯梨浜町泊にて吉田医院開業。その後の業績を認められ、鳥取大学大学院再生医療分野特任教授、自治医科大学非常勤講師就任。開業医として地域医療を行い同時に特任教授として研究教育活動を行なう。
音楽分野においては、ミンクス室内オーケストラ代表、鳥取県オペラ協会副会長としての活動に対し県教育長賞を受賞。
倉吉ストリングオーケストラ、鳥取大学フィルハーモニー管弦楽団、米子管弦楽団、県民による第九オーケストラなどのコンサートマスターを歴任。ミンクス、アザレア室内オーケストラ、コンサートマスター。鳥取県の音楽家たち出演。西日本医科オーケストラとブルッフの、ミンクス室内オーケストラとメンデルスゾーンの、鳥取大学室内管弦楽団とチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲を共演。
これまでにヴァイオリンを山本喜三、山本弓子、山田衛生、七澤清貴、平井誠、釈伸司、澤和樹、各氏に師事。
蓼沼恵美子(たでぬま えみこ)Piano
堀江孝子、林美奈子、田村宏各氏に師事。東京芸術大学附属音楽高等学校を経て、東京芸術大学卒業。「安宅賞」受賞。同大学院修了後、ロンドンに留学し、マリア・クルチョ女史に師事。
1983年、ミュンヘン国際コンクール、ヴィオリン・ピアノ二重奏部門で第3位入賞。'96年には、ヴァイオリンの澤和樹とのデュオ結成20周年を記念する連続リサイタルを開催し、好評を得る。
現在、吉祥女子高等学校芸術コース、桐朋学園芸術短期大学講師。
ディレクターのコンサート案内
かつて「吉田明雄氏」を、「医者にしておくのはもったいないヴァイオリニスト」だと新聞にコラムに書き、ご母堂さまよりひどく叱られたことがあります。ヴァイオリンの巧い東大生を「君は凄い!」と会うごとに褒めていた学生が、親の思惑を外してフランスのオーケストラに就職してしまった時も、「寄って集って褒めるものだから道を誤ってしまった。」とお父様からこっぴどく叱られた。まだまだ、芸術家の社会的スタンスと経済的な支えの弱い日本では、音楽家になることはマイナーなのかもしれません。吉田氏の場合は、江戸時代から面々と続く開業医の長男であり、音楽のプロとしての道を歩む選択肢はなかったのでしょう。医師を食うための職業とした訳でもなく、と言って音楽を趣味の段階に留めたわけでもなかったのです。いずれも職人としての技術的な体系を物する努力をし、いずれもが医師として、芸術家として必要なプラスアルファをつかんできています。二兎を追うもの一兎をも得ずといわれるが、吉田氏の凄さは、いずれもが一流であったということなのです。そんな意味で、「医者にしておくのはもったいないヴァイオリニスト」との言動は、ご母堂のおっしゃる通り間違っていたと後悔しています。人間として生きる方法、道筋を固定的に考えることなく、柔軟に、優柔不断にライフワークを模索するのも悪くないなと、吉田氏のヴァイオリンを聴きながら感じています。昨年のリサイタル・シリーズは予告編であり、今年は一晩のコンサートで、じっくりとお聴きし、楽しませていただけると期待しています。