海外こぼれ話 136                   2012.9

 

日本は暑かったがドイツも暑い

 8月下旬にデュッセルドルフに着いたが、日曜日の朝から異常に暑さを感じた。窓の近くの温度計は40度を振り切っていた。身支度をしてデュッセルドルフ中央駅まで歩くが、余りの暑さに脳みそがとろける感じだった。しかも吹いてくる風は、そよ風なら大歓迎だか、何と真っ赤に燃えた熱風のようであった。駅までの500mが今日はなんとも長く感じた。ヘロヘロになって、1527分発の特急電車ICE61116番ホームに辿り着いた。すぐに待ち合わせしていた通訳のMさんもやってきた。「今日は29号車なので、ちょうどここのDポイントにいればいい」と彼に告げた。ドイツは1番、2番などの表示ではなく、先頭からA、B、C、の順番に約30m毎に表示されている。その表示どおりに電車が到着することはまずありえないのが、ドイツの鉄道である。

 しばらくすると珍しく時間通りに電車が入ってきた。Dのところで待っていたら、列車の番号が21号車になっていたので、今日も逆方向に接続を間違えたかと思って移動しかけたが、多くの人でしかも時間がなく、そのまま21号車に飛び乗った。ちょうど車掌がいたので、「今日も接続を間違えたのか?」と問い合わせたら涼しい顔で「いつもこの場所だ」と答える。可笑しいなと思いながら、トランクを引き吊りながら満席の電車の中を一番後端の29号車まで移動した。その車両は十分に空き席があったので、通訳と別々に座って汗を拭き取って本を読むことにした。2時間乗っていたらいつものマンハイム駅に着くはずが、見慣れない駅に到着した。よく見るとフランクフルト中央駅だった。

慌てて電車に備え付けの時刻表をみると、このICE611ではなく、ICE722であった。いつもは、隣の15番線から出発し、出発時間もほぼ同じなので間違えやすい。しかも行き先は同じミュンヘンであるが、経由先がフランクフルト空港駅からガラリと変わる。通訳は一生懸命にパソコンに向かっていて、状況をまったく把握していなかったが、すぐに一緒に飛び降りた。危うくフランケン地方に行くところだった。

何と史上最高気温を記録

中央駅のホームに降りて、反対側のホームの電車を見ると目指すStuttgart中央駅行きだとわかって慌てて飛び乗った。乗った途端に冷や汗と脂汗が一気に噴出した。考えてみると、デュッセルドルフ駅で16番線からいつも出発するのであったが、その日はたまた15番線から出発したようだ。そのアナウンスはあったかもしれないが、暑さのため通訳も聞き漏らしたかも知れない。だからデュッセルドルフ駅で飛び乗った時に、29号車が21号車になっていたのだ。ニュースで知るところになったが、その日はデュッセルドルフで気温観測をし始めて200年以上になるが、37度になったのは今日のことであり、歴史的な日になった。このところの温暖化の異変だろうか。

Stuttgart中央駅に着いたら、何台かの電車の冷房装置が壊れて途中停車していて、多くの列車が遅れを発生しているアナウンスがあった。ドイツ鉄道の車体はほとんどがシーメンス製である。最近の20年間の気温を想定して、35度以上にはならないだろうという設計にしたらしい。目的はコストダウンであり、余裕を少なくすることにより、安くしようとする発注側と受注側の思惑であった。しかし近年の気温上昇で昨年も車内が50度以上になった例も発生したが、今年もオーバーヒートしてしまったようだ。幸いその電車に乗らなかったので助かった。

風呂上りのビール

 仕事先の南ドイツのHausenも暑い日が続いた。夕方になって温度計を見たら36度になっていたので、日中はそれ以上だったはずだ。ドイツの工場の中の暖房設備はしっかりしているが、冷房の設備はオフィスくらいしかないことがほとんどだ。精密加工する場所は空調が整備されているが、20年以上も前の工場は冷房がないのが普通であり、このような30度以上が続くと工場全体がオーブンのようになってしまう。思考能力がなくなるのは当然かもしれないので、至るところに扇風機が設置してあり、ブンブンと唸りながら回っている。

中にはスポット冷房の装置もあるが、これも送風の音がうるさい。ドイツ人は機械が動いている時は、音を伴わないとダメらしい。インドなどもクーラーのガンガン掛かっていることを示すために、騒音防止ではなく逆に音を出す工夫をして販売しているとも聞いたことがあるが、文化の違いだ。天井が非常に高く冷房を入れるとなると相当の投資になってしまい、経営者も辛いだろう。

しかし別の良い面もあるが、それはこの一体がワインの産地なので、今年はよいワインが出来るのが楽しみになる。あっちが立てば、こっちが立たずのようだ。仕事が終わるとすぐにホテルの風呂に入って汗を流す。気持ちが良いので、ビールを頼み部屋でグビグビと飲むと一気に南国の海に飛び込んだような爽快さを得ることが出来る。何と一杯3ユーロで別世界にトリップできるので、酒飲みには夢のようだ。

両手を広げるくらいの大きな牛肉

 暑いと何かと調子も狂うようだ。いつもの食事の招待があり、午後7時半にいつものレストランで待ち合わせすることになった。いつもは予約をしていくのに、今日は予約なしであったようだ。店につくといつものシェフが出てきて、今日は満席で対応できないと恐縮していた。しばらくしていつものメンバーが三々五々やってきたが、たまたま予約しなかったことに後悔をしていた。そんなものだが仕方ない。気持ちを変えて、ホテルの隣のレストランに後戻りすることになった。ホテルのレストランとは道を挟んで、目の前にあるレストランだ。気さくな店で結構美味しくてボリュームがあり、そして値段が庶民的であり人気のある店だ。ホテルのレストランはこの町では高級なレストランで値段も普通の倍近く高いが、お洒落で特にワインの選定が非常に素晴らしい。天秤でどっちかといわれると迷ってしまう感じだ。屋根には目印の白く塗った自転車が取り付けられているが、そのセンスは実に面白くない。

 この店は1ヶ月間の特別メニューがあり、それは日替わりになっていた。値段も普通のメニューの3割くらい安くなっていた。迷ったが玉ネギを焼いてソースと一緒にステーキに掛けるメニューにしたが、12ユーロとかなり安い。しかもそのステーキは、両手を広げたくらいに大きかった。肉厚は8mm程度もありかなりのボリュームだった。でも話をしながら食べていたらすっかり平らげていた。玉ネギを焼いたのでその香りと旨味が出ているので、食も話も弾んでしまったようだ。しかし先ほどの風呂上りのビールが利いて来たようで、会話の途中に居眠りをしてしまった。幸い目の前にホテルがあったので、皆さんにお断りをしてそのままベッドに転がり込んだ。

社員同士の説得工作

 暑いからといって、当然のことだが仕事に手抜きは出来ない。今回は彼らも非常に意欲的になってきて、多くのテーマを取り上げてくれ た。新人も多くいたのでテーマごとにミニセミナーを開催して、テーマの本質は何か、どうやるのか、どんな手法を使えばよいかなどを説明することにした。議論ばかりのチームには現場に出て事実を掴みなさいとヒントを出し、行き詰っているチームには簡単なヒントを提供して動機付けを行い巡回していく。1日に2回、3回も工場内を巡回するが、結構いい運動にもなる。

その間この工場のコーディネーターは私に付きっ切りで巡回する。それはコンサルタントのものの見方、考え方、動機付けの仕方、次ぎのテーマのヒントの提供などを、体験を交えながらノウハウを具体的に細かく伝授していくためだ。コンサルがいない時には、そのコーディネーターが中心となって自主ワークショップを進めていくので、彼にノウハウを伝授していく。教えると仕事にならないかと心配されるかもしれないが、教えることは山ほどあるので心配無用である。このコーディネーターDさんの態度が、この半年間でまったく変わったには何かあるかと思っていた。

その変わった秘密を、先に一緒にビールを飲んだ仲間のSさんから聞き出すことができた。Sさんは最初から賛成派であったが、反対派のDさんを自分の家に呼んで色々と説得をしたそうだ。Dさんの考え方のボタンの掛け違いを指摘したら、途端に態度が変わったそうだ。なるほどそうであったか!と膝を叩いた。仲間同士の説得工作は素晴らしい効果があった。Sさんに感謝だ。そのSさんは改善担当になることが決まり、工場長から説得され、後任の人も任命されてSさんの腹が決まり、Dさんを説得したようだ。最初の1年間は猛烈な反対派であったのだから、人は変わるものである。このように反対派の人が自律型人間に変わることが、コンサルタントの成果になるが、このような嬉しい話を聞くと涙が出そうになる。

フォローをしっかりすると良い結果

 このDさんの立場は副工場長の立場もあり、自ら各現場の担当者と積極的にテーマ選定をしてくれたので、今回は今までに最も効果の大きい活動になった。7つのテーマで年間数1000万円以上の効果が検証でき、思っても見ない波及効果も見えてきて、初参加の人(実は多くの間接部門のエリートたち)も俄然やる気になってしまった。時間がないと抵抗していたが、丸々2日間みっちり改善したら、考え方が変わってしまった。これから自分たちで日程を決めて取組むことになった。やれば楽になり、仕事もスムースになることがようやく理解し、納得できてお互いの協力も出来る嬉しさを噛み締めていた。これはコンサル冥利になり、見ていても嬉しくなる。

 前回のテーマをこの会社では必ず報告するようにし始めてから、嘘の報告や逃げ出すこともできなくなり、観念し始めてから成果に結びつくようになった。最初からこのように素直にいうことを聞けばよいが、そう上手くはいかないので何度も説得工作を必要とした。何といってもトップの説得が一番大切だ。前回のテーマの狙う効果はすべてメモに取り(こういう時にメモ魔の効果が出る)、発表においてすべてチェックするようになり(人の欠点を探す特技が有効になる)、必ずテーマの結果を出すまでフォローもするようになった(動機付けを得意とする効果が出た)。

つまり管理のマネジメントサークルを確実に回すことで、彼らも自主性が生まれ、結果が出るようになると嬉しくなって、また改善を繰り返すようになる。これが最近は色々な会社で習慣化してきたので、随分と楽になってきた。何事も初めが肝心で、最も労力のいるところだ。過去の多くの会社の成功事例や失敗事例を踏まえて、この会社に最も良い方法は何かをいつも模索しながらの試行錯誤で取り組んでいる。人と同じで企業も十人十色という性格があり、同じレシピで料理が出来るかといえば嘘になるくらい様々である。同じであったら逆に商売にならないかもしれなく、面白味もないだろう。

ドイツでもアザレア?

今年のアザレアのまち音楽祭で、以前の会社で同僚だった中野隆さんの尺八のコンサートがあり、そのスポンサーをさせてもらった。伴奏の箏演奏家は倉敷市在住の「山路みほ」さんで、今回で3回目の共演だったがお会いするのは初めてであった。お話を聞いていると来年には文化庁からの「文化交流士」に任命されて、半年間モスクワ、ラトビアなどの地域を中心に演奏活動をされるという。ドイツでは演奏されないのかとお訊ねすると、今までその機会がなかったとのことで、何とかデュッセルドルフなどで演奏の機会が出来ないか考えてみることにした。

 デュッセルドルフにアパートを借りて生活をし始めたのが、2003年の4月からだった。10年ほど住んでいるが、心当たりを探すと某企業の現地マネジャーのXさんのことが頭に浮かんだ。何かヒントがもらえないかと相談を持ちかけたところ、快く相談に乗って頂き色々なアドバイスをもらうことが出来た。Xさんはドイツ在住25年だとお聞きし心強く思った。すると同じビル内にドイツ領事館があり、相談に乗ってもらうお膳立てをしてもらった。

 領事官のKさんに相談すると、これまた各団体への依頼まで即日で行って頂いた。その候補先の1つにデュッセルドルフのワイン川の向こうに日本人の方が非常に多く住んでいる地区があり、その中心に恵光クラブという日本文化センターの所長のAさんにも一緒に会いに同行してもらった。噂に聞いていたが、そのセンターは浄土真宗の京都西本願寺を本山とするお寺であって、一歩門を入るとそこはまさに日本庭園そのものの風景であった。立派な松もあり、枝ぶりがいいなあと訊ねたら、2年に一度日本の庭師が来て剪定するという。なるほど、見事に庭園を維持管理することは大変のようだ。

一通り説明させて頂き、各施設を見学させてもらった。本堂は100人が入るが、畳には座布団の代わりに椅子が並べられていたのは海外ならではの光景だった。本堂の中は非常に綺麗な豪華な造りになって、ホコリ一つなかった。さらに地下に行くと本道がそのままホールになっていて、広々としていた。200人は入るかと思ったら、消防法で100人までと制限されているが、絵画などの展示会や箏のお稽古事もできるようによく整備されていた。奥にはピアノも配備されていた。お寺といいながら立派な文化センターそのものであった。さらに施設内に幼稚園があり、その地下も演奏が可能になっていた。16mmフィルムの本格的な映写機が設置してあり定期的に映画会も開催しているという。この部屋も100人までの収容人員であり、消防法で制限されていた。

このお寺の名物?に除夜の鐘付きがあり、普通108つまでだが、特別に一人一回おまけで鐘を突ける整理券がもらえるという。従ってこのお寺の除夜の鐘は少し余分な煩悩が打ちつかれるようだ。説明を終えて外に出ると幼稚園児を迎えに来ている日本人の奥様たちが談笑していたが、まるで日本にいるかのような光景だった。領事官からケルンの文化会館にも投げかけてもらい、その午後から一人で訪問して、手ごたえのあるお話をさせて頂いた。特に副館長さんは話の聞き上手であり、長話をしてしまったほどだった。やはり事前の準備や根回しの重要なのは、仕事も何でも一緒のようだ。

ドイツ語の通訳は10人以上

ドイツに通い始めて13年になるが、その間に、たな卸しをしてみるとドイツ語だけでも男女半々で10人以上の通訳の人に、お世話になったと改めて驚いた。通訳がいるから安心してしまって、そのお蔭でまったくドイツ語が話せないという天罰が下ってしまった。同じ仲間にも、同様に話せない人もいるがまったく自慢話にはならない。逆に13年もドイツにいて、ドイツ語で話もできないし、読むことも出来ないで、よう一人で生活しているなあと感心されてしまうほどだが、言葉の変わりに顔の表情とジェスチャーで誤魔化しているのが本音だ。

コンサルタントも個性が様々であるが、様々というより変人奇人といった方が適切だろうが、反論する人もいないだろう。でも通訳も負けていないくらい、いや少し個性は弱いか?まあその程度であるが個性がある。日本語をドイツ語に訳すのは直訳ではなく意訳なのであるから、その通訳の理解のレベルで内容が変わってしまう。どう解釈するかで、確実に伝わるかまったく別な意味に捉えられるか違ってくるので本当に力量が問われる。

私自身がまったくドイツ語が理解できないので(40年前に3年間習ったが、綺麗さっぱり忘れることが出来たが、興味を持たせることが出来なかった教師のせいか?)、何とどう訳したかを検証する術がない。一応話した後に聞いている人たちの目を見て、理解したかどうかを判断する。下を向いたり、よそ見をしたりしていると、言葉足らずだったか説明が間違っていたかが心配になる。そこで例え話を入れたり、イラストを描きながら再度説明を加えたりして、アイコンタクトで確認するようにしている。結局はお互いの信頼関係だろう。