今月の執筆者

菅 原 一代

木版画の制作

 木版画は、古い様式の版画の一つであり、そこに長い歴史があります。が、版画を好きになり、始めて日の浅い自分が何を想い迷い制作しているのか書いてリレーエッセイとしたいと思います。

 何の道も特別考えなくてもスラスラと作業できる様になるには、時間と労力を要すると思います。特別な才能があるわけでもなくやってみたいという情熱で、次は…それでと問いかけて作業しております。

 木版画には、板目版画と木口版画の二つがあります。板目版画は、木を縦に切った板目の部分を使うものです。木口版画は、木を横に切った年輪部分を使い堅く緻密な材質を選んで使い、細かい表現が特長です。初めて木口版画の制作現場を観た時、逃げ出したくなるような細かい作業に恐怖感を覚えました。

 「みささ版画の会」の会員は、全員が板目版画を手掛けております。

 制作の始めは、デッサンです。写真を撮りためておいたり、スケッチブックに機会あらば、描いて貯めておきます。何をテーマにするのか、自分のテーマを持ちなさいと先輩から教えてもらいました。版画制作を初めて、何をテーマにしたいのか、自分に問うてみました。なかなか定まりません。ぼんやりと、植物、自然、光、…自然との融合…かな、と思いつつ、スケッチしております。この原画を参考にして木版画になる下絵を描きます。

 下絵は制作する版画の大きさに描きます。私は、ここでいつも、つまずきます。形の単純化や、線の太さは?勢いが消されていないか?そもそも原画の要素は何なのか…と、何枚か下絵を作って、自分の納得いく下絵にならないもどかしさを感じております。

 この次に下絵をトレーシングペーパーなどに線描で書き写します。別の方法で和紙に墨などで画を描きそのまま反転して版木に糊で貼りつけて彫る方法もあります。

 彫り・刷りの作業は、奥が深くて修業の足りない私では、ただ次は、次は、のくり返しです。

 材料・道具、技法、どれをとっても味のあるものです。和紙、墨、バレン等、ひとつひとつが実践と工夫の上に作られております。職人修業が足りないのに冒険して版木と和紙の前で、寂寥感の中で、やっぱり…と反省し、今度こそは?と念じて木版画制作に浸っております。

(みささ版画の会)