ニューヨークの風
第54回
アトランティック・シティー
〜海が美しいカジノ・リゾート〜
カジノと言えば、ネバダ州のラスベガスが有名だが、東海岸にはニュージャージー州にアトランティック・シティーがある。ニューヨークからは車で2時間半、フィラデルフィアからは1時間程度。大西洋の広大な海岸が延々と続くジャージー・ショアの一角にある。ラスベガスのカジノは1931年にネバダ州でギャンブルが合法化されたときにできたが、アトランティック・シティーにカジノができたのは1976年。ラスベガスより小規模だが大都会が近いため、年間3800万人が訪れるそうだ。
ラスベガスはニューヨークから遠い。飛行機に乗っているだけで5時間かかる。時差は3時間。日本で考えると外国旅行するようなものだ。その点、アトランティック・シティーは近場で週末旅行にぴったり。日帰りドライブも可能で気軽に行くことができるのが良い。
実際、ニューヨークからアトランティック・シティー往復のバスツアーがいくつも出ていて、食事やスロット・マシンで使えるクーポン券が20ドル分付いて、往復料金が50ドル程度でお得。マンハッタン在住のニューヨーカーは東京在住者と似ていて、車を持っていない人が多いので、特にそういう人たちや、遠距離の運転をしなくなった高齢者をカジノに迎えるのに便利な足になっている。
ラスベガスもそうだが、アトランティック・シティーもカジノに人を呼び込むために、立派なホテルでも宿泊料金はかなり安い。たとえばマンハッタンでは一泊一室300ドルくらいする部屋がアトランティック・シティーのホテルでは80ドル程度だったりする。
特定のホテルのカジノに時々来る人はそのホテルのカジノのメンバーシップ・カードを作っている(料金無料)。そしてカジノでカードゲームやスロットなどをしてお金を使うたびにそのカードにポイントが記録される。そのポイントで客としてのステイタスが決まり、時々来てけっこうお金を使ってくれる客ならホテル宿泊無料のサービスがつき、上客にはさらにホテルでの食事無料のサービスもつく。
私と夫が時々行くのは、不動産王ドナルド・トランプ氏が経営するトランプ・タージマハール・ホテルだ。海岸のボードウォークに面していて、ビーチの景色が素晴らしい。このホテルはスイート・ルームが特にお買い得。週末や夏のハイシーズンをはずせば、とても広いスイート・ルームが税金を含めても1泊一室160ドル程度。さらにゴージャスな1400スクエア・フィート(130平方メートル)のスイート・ルームでも380ドル程度。普通の部屋は100ドル以下で泊まれる。ただし週末やハイシーズンは2倍くらい料金が高い。
先日、どうせなら一度あのゴージャスなスイート・ルーム(写真参考)に泊まってみようと一泊した。130平方メートルというと、私たちが住んでいるマンハッタンのアパートより広い。リビングルームがひろびろで無駄に空間がある気さえした。ベッドルームには大きなジャクージ(日本でいうジャグジー)があり、リビングルームと、ベッドルームそれぞれバスルームがある。あちこちが鏡張りになっているので、さらに広く見える。
車でマンハッタンから午後2時半頃ホテルに到着して、少ししてから、にぎやかなボードウォークを夫と一緒に歩いて、それから夫はホテルに戻りカジノへ。私はすぐ近くのアウトレット・モールに寄ってお買いもの。私のお気に入りはブルックス・ブラザーズの店。今回はとても質の良い紺色のジャケットが70%割引、さらにアウトレット・モールの20%割引のクーポン券が使えて超ラッキー。
夕食はホテルのバフェ(食べ放題のバイキング形式)。海老、ハマグリ、蟹などのシーフードを中心に食べた。普通は取らない牛肉のステーキも夫と半分ずつなら食べられるかなと思って一枚もらった。バフェで出てくるステーキは普通はたいしたことないものだが、これが意外にもおいしくてびっくり。こんなおいしい牛肉のステーキが食べ放題なら、日本だったら行列できるよねと思った。デザートも目移りがするくらい種類が多くて、プチ・ケーキやアイスクリームを食べて大満足。
夜の8時頃からカジノへ。夫はブラック・ジャックのテーブルへ。私はスロット・マシンへ。スロット・マシンと一口に言っても、クラシックなタイプのスロットから、モダンなゲーム的なスロットまでおびただしい種類がある。1回の賭け金も1セントから50ドルくらいまでいろいろ選択できる。
私はあまりお金を儲けようという気はなく、楽しく時間を過ごせればよいかと思って、1回の賭け金は5セントから25セントの範囲で、ペニー・マシンと呼ばれる1セントから賭けられるお手頃なマシンで楽しむ。私は使うお金は1日50ドル程度と決めている。賞金が積み重なるタイプの大当たり狙おう思ったら、その権利付きの賭け金の高い設定を選択しないと当たることはないので、私のようなケチな賭け方では一生スロットで大当たりすることはない。いつもはお金をいくらか失うのだが、この日はめずらしくラッキーで、20ドル儲けた。
午後10時ごろホテルの部屋に戻ってゆっくりジャクージ(日本で言うジャグジー)につかる。普通の洋式風呂として使う場合はバブル・バス(液体せっけん)を入れて湯船に白い泡を浮かべるのはいいが、ジェット水流を稼働するときは泡が多くなりすぎるのでバブル・バスを入れるべきではない。しかし、まあいいかとバブル・バスを入れてしまった。ジェット水流を稼働させないうちはのんびり湯船につかっていたのだけれど、せっかくジャクージなのだからとジェット主流を稼働させると、浴槽にあまりにも細かい泡がたくさんできて湯船がソフトクリーム状態になってしまって収集がつかなくなった。湯船を抜くしかなく、あとはシャワールーム行きとなった。
午後11時ごろ夫が部屋に戻ってきた。夫も無駄使いはあまりしないタイプ。限度額を数百ドルまでと自分で決めているのでそんなに大きなお金をなくすことはない。夫もめずらしくラッキーで、200ドルくらい儲かったそうだ。二人でご機嫌。カジノ・リゾートは自己管理ができさえすれば、カジュアルに楽しめてよい所と思う。