海外こぼれ話 146                 

 

講義内容のビデオ撮り

 ドイツの訪問先では、私が朝一番に60から90分の講義をするようにしている。いきなり現場に入って観察して問題を抽出する方法もあるが、やはり何のためにこのようなことをするのか、目的は何か、狙いは何か、注意すべきことは何かに加えて、その時のテーマに応じてヒントを提供するようにしている。彼らもインプットがあった方が、気づきが断然に多いことが既に分かっているので、14年もこのスタイルで通している。ただし、同じことはなるべく言わないようにしているので、その都度ネタ探しや表現方法を変えたり、事例集を編集し直したり、あの手この手を使って興味を引き、そこから気づきや動機付けになる仕掛けに挑戦している。

 12年も訪問している企業は、彼らからいつも新しいセミナーのリクエストがある。そのために改めて準備することが多く、いつも勉強をさせてもらっている。時にはA4の原稿が20枚以上になることもあり、何日も時間をかけて編集し直すことは労力であるが、知的快感もあり積極的に取り組んでいる。そのまとめた資料は、他の企業にも使うことができるので、その機会があるだけでも儲けものと思って取り組んでいる。

その他にも私の講義をビデオに収録して、セミナーに参加しなかった人にあとで見せる企業もあり使い方は色々である。またビデオから文章に書き落としをして自らの資料を作成したり、マニュアルにしたりしている。ある企業は今までのセミナーをすべて収録して、一覧表も作成しているといってその一覧表を見せてくれた。こういうお客様がいるので、念入りに調べていくことになるが、抜けや的外れも時にはある。でも彼らの熱心さにはいつも頭が下がり、そのたびにもっと良くわかりやすい資料や説明の作成に没頭する。

この年(11月で還暦を迎える)になって本当によく勉強するようになり、いつも「最近が最も勉強した時期だ!」と感じている。さらにこの「海外こぼれ話」の文章書きの効用は、毎回約7000文字の入力がもう12年以上も毎月継続していることだ。そのためにいつでも文書を書く準備ができるようになり、恐れがなくなってきたのも訓練のお蔭である。

ドイツの卵事情

 バイオ(VIOと書く)は有機農法で育てた野菜だけでなく、鶏や豚などの家畜の肉もその表示がされている。値段ははやり少し高いが、ピンキリの幅がある。いつものデパート(日本とは違い、デパートはスーパーのような廉価な商品を陳列している)の地下食料店でちょっと変わった包装箱の鶏卵を見つけた。それはクッション材になんと木綿を使っていた。中の卵が少し見えるように所々に穴があけてあったから、中身の木綿の端が見えたのだ。6個入りで3ユーロ(360円)なので、1個が60円もする私にとっては超高級食材であり、悩んでしばらく陳列棚から離れることができなかったが、これもお試しだと思って清水の舞台から飛び降りる気持ちで買い物カゴに入れた。

ドイツの卵の包装ケースは再生紙であり、彼らはこれがエコだと自慢している。10個入りが普通で、4個入りや6個入りもあるが、日本のように透明ケースは一切ない。この辺も考え方の違いがあるようで、日本の場合は透明なので中身がすぐに分かる。ドイツでは再生紙なので、中身が見えない。またスーパーによっては、自分でバラ積みの中から好きなだけ選んで再生紙の中に入れてレジで申告する。必要なものだけしか買わないという精神があるようだが、実際にはまとめ買いをする人が断然多い。でもお客様のことを思って手間が掛かってもバラ売りする考え方はよいと思う。

ドイツの鶏卵の黄身は、日本のように黄色は余りなく白っぽくちょっと頼りない感じがする。このバイオの卵は、やや黄色であったが日本のそれよりは薄い黄色であり、高い割には味も変わりなくがっくりした。包装箱にも記入されているが、卵一個ずつに賞味期限の日付が印刷してあり几帳面な点もある。欧州は鶏の病気であるニューカッスル病のことが頭にあり、決して生で卵を食べようとしない。卵かけご飯のように生卵を食べる習慣はない。こんなに美味しいのに、知らないことは損だと思う。日本の高級鶏卵のような味の濃いモノには程遠い卵であったので、次回からはもっと安いバイオの卵を買うことにした。

卵と玉子の違いは、卵とは料理をしていない状態を示し、玉子と表現すれば料理をした状態を示し、玉子丼、玉子とじのようになる。日本では目玉焼きが、ドイツでは鏡の玉子(真っ平だから)という。英語では、サニーサイドアップ(太陽、片面焼き)というが、ところ変わればいい方も違うことがわかる。

ドイツにも

百円均一の店があった

 日本でいえば「百均」の店が、以前はデュッセルドルフ市内にも1ユーロ均一としての商品がふんだんにある店があった。でもいつの間にかなくなっていた。しかし南ドイツの田舎町には、それがまだ残っていた。実はホテルの前にあったので、店内を探索してみた。倉吉市内の米田町にある百均の店の3割くらいの敷地だった。表書きは1ユーロとなっていたが、6割のものは確かに1ユーロであるが、他にも2、3、5、7、101520ユーロの商品もあった。掛布団が7ユーロで、一番高かったのがトランクの20ユーロであり、でも普通の店ではその数倍もする商品に価格破壊の値段が付けられていた。でも商品自体は安かろう、悪かろうのという商品のようで、品質は別問題であり話題性に特化しているように感じた。すぐに壊れそうなものがたくさんあった。

でも携帯電話のケースはお買い物であり、一番安いのは1ユーロであったが、少し奮発して2ユーロのカバーを買った。日本で買ったのは一番安いものを秋葉原で840円もした透明カバーだったが、落とした時にコーナー部が破損していまい、ちょうど購入のタイミングになった。今回買ったものは、弾力性のある樹脂なので破損する可能性はなく、青と白と黒の三色も色を使っている豪華?なものである。日本の携帯電話のカバーの値段が非常に高いと思うが、買う人がいるから高くなるのだろう。しかし原価計算をしてみても、業者は余りにも暴利を取っているようだ。値段表をよく見ると、ドイツとオランダは2ユーロであった。しかし、イタリア、フランス、ルクセンブルク、スロバキア、スロベニアの各国々は、2.25ユーロと12.5%上乗せの設定になっていた。これはすべての商品に当てはまっていたが、これらの国々の人口を合わせるとざっと3億人が対象になり、日本の人口の2倍以上にもなり商売が成り立つと思う。

その他に下着類、園芸用品、家庭用品全般、電池、お菓子、飲み物、家庭用品の小物類、手芸用品、化粧品など種々雑多な、いわばゴミゴミした感じであった。見た目も品質の観点からも日本の店の断然質や格が上だが、それは日本のバイヤー(買い手)の戦略の良さか購買力、あるいは提案力の差が一枚も二枚も欧州より上だということを感じた。やはり今までの取り組みの差だろう。

レンタカーは

新車だったが悪臭付きだった

 ドイツのレンタカーはほとんどが新車であり、新車独特の匂いがする。工場から生産したばかりなので、グリスか潤滑油などの油の匂いや内装の樹脂製品の匂いがする。今回ベンツの新型のAクラスだったので、どんな車か楽しみであった。リモコンのスイッチを押すと、ハザードランプが点滅して駐車場を教えてくれる。スタイルはBMWの1シリーズに良く似ているが、ドイツの車の雑誌では非常に好評だったらしい。

車に近づくと異様な臭いが、1m前から臭い始めた。なんだ!この異様な臭いは?トランクを開けると鼻に迫ってきた葉巻の臭いであった。ドアを開けるともっと激しい葉巻の臭いが胸に迫って咳き込んだ。タバコと違って強烈な息苦しい臭いである。常識としてレンタカーに乗る時は、禁煙が原則になっている。前の使用者がそれを無視して葉巻を吸っていたのだ。レンタカー会社は吸殻を片付けていたが、清掃は全くしていなく、臭い消しも全くしていなかった。A180という車種であり、1800ccのガソリン車の6速のマニュアルシフトだが、エンジンは気の抜けたビールのように馬力がなかった。いわば空かし屁のような力のないエンジンだったので、がっくりした。

このレンタカー会社は、「SIXT」社であるが、以前にもガソリンを満タンにしていないことを確認せずに、われわれに貸し出していた。これは教育の不充分さと従業員の質の悪さである。特にドイツではサービスという言葉が死語になっているので、懇切丁寧なもてなしはあればラッキーとしか言いようがなく、ないのが当たり前である。3日経っても臭いは消えなかったが、この先に借りた人を追及して、罰金代わりにもうこの会社から借りられない方法を取れないかと提案したくなるほどだ。

これは未だに犬の散歩で、フンを始末もしないでいる人たちを同じである。ドイツや欧州の道は、いわばトイレの感覚である。ペストが大流行したのもの、自分さえよければという感覚によるものである。タバコの吸い殻も同様であり、壊れたガラス瓶も投げっぱなしがまだまだあるので、いまだに日曜日の朝の散歩は下を見ながら歩くことになる。

10年ぶりに

アイロンを買った

 デュッセルドルフのアパートに住みだしてもう10年以上になるが、当時最初に購入したのが生活必需品のアイロンであった。スチームの機能がついていたが、ドイツの水道水のカルキの多さにいつの間にかカルキが詰まったり、焦げてしまったり、最近はその小さな破片がアイロンの面から衣類に付着するようになってきた。これではだめだと思い、アイロンの買い替えのために電気屋に行った。街中の電気屋は、洗濯機、掃除機、テレビなど個別の販売をしているが、日本の何でも揃う大型店は、ほんの2、3社しかない。そのうち大手が「サターン(土星)」であり、全国展開をしている。小さな店でも経営していけるのは、その商品に特化して専門知識を身に着けていることと、お互いの領域を侵さない暗黙の了解があるようだ。

 アイロンの売り場が、どこにあるかわからなかった。自慢ではないがドイツに来て14年になるが、関心事にしかドイツ語が読めなくしかも喋れない。従って下から順番に現物を探していったが、この知らない方が新たな発見があって面白い。2階のコーヒーメーカーがあるところに家庭用品があったので、探してみるとトースター、扇風機(これがこの数年で売れ始めた電気製品、クーラーはまだない)、髭剃り、ドライヤーに交じってようやく見つけた。安いものは、10ユーロから高級品は80ユーロまであり、30ユーロが一般的な値段だった。スチーム機能は不要なので、それを探すと20品目のうち、たった機種しかなかった。仕方なく選択の余地はないので、それを購入したが、値段は30ユーロだった。ついでにアイロン台のカバーも10ユーロで買った。これは2年くらいの寿命になったが、アイロン時の滑りを滑らかにするスプレーをかけるのでその糊が固着してしまったことによる。そのカバーを洗濯しても良かったが、裏地にスポンジがあったので、それがはがれる恐れがあり止めておいた。

 コーヒーメーカーが数多く陳列されていたが、特にエキスプレッソができるものが売れ筋になっている。ざっと数えてみたら100台くらいあった。値段は100から5000ユーロの業務用まで実に多種多様であり、まるでメッセ(展示会、博覧会)のようだった。ドイツ人はビールを最も飲むようであるが、その飲料する量ではなんとコーヒーであった。

考えてみるとビールは朝から飲めないが、コーヒーは1日中いつでも飲む習慣があった。ドイツのコーヒーは日本にくらべとても濃いので、私には馴染めないのでわざわざ日本から持ち込んで込んでいる。もちろん紙のフィルターで、コーヒーメーカーは最も安い20ユーロものであり、今は2台目になるが調子はすこぶるいい。

90歳の誕生会に遭遇

 ドイツの印刷会社に訪問し始めて、会社の近郊に多くのホテルを転々としていた時に、中華料理店を見つけた。そのウエイトレスは中国人で、周辺に中華料理店もないこともあり、訪問するたび食べに出かけている。そこでいつも頼む飲み物はバイチェンビールで、顔を見ただけで持ってきてくれる。その小さな町には日本人のエンジニアが2人いて、毎週のように食べに来てくれるなどと気さくに話しかけてくたことで、よく訪れるようになった。また最後の仕上げの焼酎はいつも彼女のサービスである。

今回のメイン料理は店の名前が「上海」だったので、「シャンハイ・スペシャル」を初めて頼んだ。値段は14ユーロとその店のメニューとしては高額になる。普段は4人掛けのテーブルが5つも並べてあったが、しばらくすると次々と老人が店にやってきた。ウエイトレスに聞くと、近所のおじいちゃんの90歳の誕生会だという。顔が合ったので、そのおじいちゃんに挨拶をして握手までしたら、日本人に会ったこと喜んでいたようだ。さらに友人や親戚の人たちが来て、合計18人となり最後は孫と曾孫だった。席の配置からすべてを仕切ってしたのは、おじいちゃんの娘のようであったが、その采配は隣で見ていてもお奉行様のようであった。訪問者が持ってきたプレゼントは、ほとんどがワインであった。この地方はドイツでも有名なワインの産地で、ドイツにしては珍しく赤ワインが収穫できる。最近飲んでいるのが「アコロン」というブドウの品種のものである。しかも嬉しいことに非常に安い。

家庭用品で有難いものは?

欧州に来て誰もが感じることに、俗名「サランラップ」(米国のD社の登録商標)、正式名称「食品用ラップフィルム」のキレの悪さである。スパッと切れることが滅多になく、最後まで使えるものはなく、イライラの根源での存在しかないほどの不出来品である。欧州人は、よくもこの品質の悪さに我慢しているかと思う。使いやすさという発想が見られない顕著な商品が、この「食用品ラップフィルム」である。日本の製品は、A社とK社が使いやすさの特徴をテレビコマーシャルで展開しており、まるで両者が背比べをしているようである。それは消費者にとってもより使いやすさの追求であり、嬉しい競争である。

 最近はラップ自体が平面ではなく、ゴルフボールのように凸凹がついているものを見かけるようになった。これはお互いが付着しにくいように表面加工したもので、これも以前は途中で切れたものがくっ付いてしまい、どこからはがせばよいか探すのに、メガネをはずし、さらにはセロテープを持ってきて切れた端を見つけていたが、これも神経衰弱になってしまう要因になっていた。これらがすぐに克服されるのは日本の商品であり、欧州は伝統を重んじるのか、不便なままが良いのかわからないが変更は至ってのんびりしている。

 逆に伝統的なことを守り続けることで、ブランド化しているものも欧州にはたくさんある。その内の一つにブルーチーズがある。「三大ブルーチーズ」は、イタリアの「ゴルゴンゾーラ」、フランスの「ロックフォール」、そしてイギリスの「スティルトン」がある。イタリア料理店にはよく行くので、「ゴルゴンゾーラ」はお馴染みであったが、今回いつも行くデパートのチーズ売り場に「スティルトン」が置いてあった。今まではなかったが、担当者が心変わりをしたのかどうか知らないが、店頭にお出ましになった。このデパートの本社は、ドイツではなくイギリスだったので、当然といえば当然かもしれない。これらのチーズは厳格な決まりがあり、色々な基準を満たしたものだけしかこのブランドをつけて出荷することができない。このブランド戦略は、この3か国は非常に上手い。日本はもっと素直にこのブランド力を学ぶ必要もあり、上手く利用すれば産業の活性化もできる。

さてこの「スティルトン」の味は、非常に美味しい。エリザベス女王も毎朝これを食べているというほど好物のようであるが、本当に美味しい。スペインの赤ワインだけでなく、中国の紹興酒でも、日本の芋焼酎でも合うのだから、先入観で味わえない今回のミスマッチに嬉しさがこみあげてくる。試してみないことには新しい発見はないと、食べ物(チーズ)で改めて思うこととなった。