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米国の銀行口座とATM

米国で生活していると必ず必要になるは、米国の銀行口座だ。特徴的なのは、米国は小切手社会なので、小切手が切れる当座預金口座を普通の大人は保有していることだ。日本では普通預金口座と定期預金口座だけで、法人が当座預金口座を持つことはあるが、個人で当座預金口座を持っている人はめったにいない。ちなみに米国では、当座預金口座はChecking Account、利子がつく普通預金口座はSavings Account、定期預金口座は CD Account (CDCertificate of Depositの略)と言われる。

米国の銀行では、日本のような預金通帳というものがない。毎月Bank Statement と呼ばれる「取引明細及び残高報告書」が郵便で送られてくるだけだ。そのやり方は日本のシティバンク銀行でも同じだ。もっとも、米国では70年代初め頃まではパスブックと呼ばれる預金通帳に似たものがあったそうだ。米国人の夫が、日本の銀行の預金通帳を見て、「えー!日本にはこんなものがあるの?パスブック(通帳)なんて見るの、何年ぶりだろう、なつかしいね。」と言っていた。

米国では小切手は家賃や公共料金などを支払う時によく使われる。個人は小切手帳を持っていて、小切手に金額、宛先、日付をペンで書いてサインをして、それを請求書のバウチャーとともに封筒に入れて支払い先に普通郵便で送る。宛先人しか現金化できないので安全で、郵便料金だけで済むので安上がりな送金方法だ。受け取った方も小切手の入金は手数料無料。小切手はお金と同じように使えるので、いろんな場面で使うことができる。たとえば友達とレストランに行って小さいお金に持ち合わせがなく、友達に借りたお金を返す時も、小切手を切って友達の家に郵便で送ればよいので便利だ。もちろん手渡しでもよい。

近年は、公共料金はインターネットで銀行口座から手数料無料で支払えるし、クレジットカードでも支払えるので小切手を使う回数は以前よりかなり減った。現在はスーパーマーケットではクレジットカードで支払うのが主流になったので、レジで、小切手で支払う人はめっきり減った。しかし店によってはクレジットカードの手数料を避ける為に、客は小切手か現金での支払いを求められることもたまにある。

小切手帳は銀行を通して作ることもできるが、自分で業者に注文して小切手帳を作ることもできる。業者の作るものは、シンプルなデザインのものもあるが、かわいいデザインや凝ったデザインのものもあって楽しい。自分の住所・氏名、取引銀行の名称・住所、当座預金口座番号など必要な情報を書いて、どのデザインにするか選んで注文を出せば10日間くらいで小切手帳が郵便で送られてくる。同じ絵ばかり出てくるシングル・デザイン・タイプもあるが、私は5パターンくらいの絵が繰り返し出てくるマルティプル・デザイン・タイプのものが好きで、今までに選んだ小切手は花柄シリーズや雄大な自然シリーズのデザイン。現在使っているのは「風と共に去りぬ」のデザインでとても気に入っている。

米国のATMはここ2年くらいでとても進化した。それまでは日本と比べると恐ろしくローテクだった。お金を引き出すやり方はまあ日本と同じだが、米国のATMでは銀行振り込みをすることはできない。そもそも米国では小切手で送金するのが普通なので銀行振り込みはめったにすることがない。そのため、普通ではないことを特別にすることになるので銀行振り込みは窓口で高い料金を取られる。

特にびっくりするのはATMで現金入金をすることはめったになく、小切手を入金することだ。私が米国に住み始めて初めて米国のATMで現金を入金しようとした時のこと。まず入金したい現金の数字を入力し、いざ現金を入れようとしたらなんだか細長い穴があいているだけでとても現金を読みとるような感じではなく、どうもここに現金を入れるのではなさそうだなあと思い、どうするのかわからず結局お金を入れずに終わりにした。あとで銀行から、入金のお金は受け取っていないので入金の数字はゼロにしますと通知が来た。

米国のATMでの入金方法は、入金票を自分で書いて、現金か小切手とともに備え付けの封筒に入れて、あの細長い穴に入れるのだった。それは後で回収されて銀行の入金係りが一つ一つ封を開けて手作業で入金されるのだった。現金を入金すると銀行の入金係りにお金を盗まれかねないので、多くの人は小切手をATMで入金することはあっても現金を入金することはめったにない。現金を入金する時は窓口で入金する。

そんな感じだから、日本帰省したとき日本の銀行のATMに現金を入れて、機械がダダダっと数えるのをみると「おお、すごいなあ日本のATMは」と一瞬感動する。日本に住んでいた頃はそれが当たり前だったのに。米国のATMに慣れていない日本人は入金で失敗する人もいる。当然のように現金をむき出しでATMの細長い穴に入れてしまって、誰のお金か証明のしようもなく、お金を失ってしまった気の毒な人の話を聞いたことがある。

近年まではそんなふうだった米国のATMだが、それがここ1〜2年で急速に進歩して、たとえばうちの近所のCitibankのATMは現金も小切手もスキャンして読みとることができるようになった。ある日突然ATMに備え付けの入金伝票と入金用の封筒がなくなり、「あれ?どうするのかな?」と思ってとにかくスクリーン画面をよく見て、入金操作を進めた。日本ならこういう大きな変更の時はあらかじめ大きな広告を出したり、詳しい説明の手紙が来たり、当分の間ATMにヘルプ係りを置くのだろうと思うが、NYのCitibankはそういうことには一切経費を使わないようだった。

ATMで小切手をスキャンする所に入れるとスルスルと小切手が吸い込まれて、読み取られて画面に金額が出てくる。それでOKなら次の操作に進んで、スキャンした小切手を縮小コピーした画像付きの領収書がATMから出てきて終了。この読み取り機はとても良くできていて、小切手は活字の場合はともかく、手書きのものもあるので、読み取りが難しい時もあるだろうに、かなり正確に読み取る。悪筆で読みとれない小切手は機械がはねつけて、取り扱いできませんと表示される。そういう場合は窓口で入金することになる。

現金はまだATMで入金したことはないが、小切手をこんなにうまく読みとるのだから、現金の読み取りは問題ないだろう。ただ、日本のATMのように一挙にたくさん入れることは難しそうだ。一応、現金も小切手も10枚まで一度に入れることができると書いてあるが、小切手を6枚一緒に重ねて入れた時、うまく紙が滑らなかったのか、6枚のうち3枚しか読み取られず、あとの3枚はのみこまれたままになったらどうしようと一瞬あせったが、ちゃんと吐き出されてきた。それで、やはり1枚ずつ入れる方が無難だなと思った。

米国のATMが小切手をスキャンして読みとるという話を日本在住の日本人に話したら、「それはとてもすばらしい、便利だ。日本にもそういうATMがほしい。」と言われたことがある。「日本で小切手なんて普通の人は使わないからそんなもの必要ないでしょう。」と言ったら、どうやらその人は会社で受取る小切手の処理が面倒らしい。銀行の窓口に並ぶのに時間がかかるし、銀行の人に取りに来てもらうとしても時間がかかるのだそうだ。しかしまあそんなマイナーなことで日本のATMが小切手を読みとるようになることはないだろう。

 米国のATMで便利だと思うのは、どこの銀行もたいてい週7日24時間オープンしていることだ。地域によってはそうでない所もあるかもしれないが少なくともニューヨークではそうだ。ATMは支店の建物内のATMコーナーに数台あるのが普通で、店舗が閉まる夕方以降や休日は鍵がかかるが、ATMカード保有者は読み取り機でドアを開けることができる。その他に銀行の建物の外側の壁に埋め込んで設置されているタイプのATMもある。ほかに郊外にはドライブスルータイプのATMもある。

米国のATMには日本の銀行のように係員も防犯係りもおらず、物騒に感じるかもしれない。しかし防犯カメラの設置の為か意外とATMのそばでは問題はあまり起こっていないようで、襲われるとしたら、ATMから出て少し離れた所のことが多いそうだ。それなら銀行の問題ではなく個人の問題だ。米国でできているのだから、日本でもやり方次第で週7日24時間のATMは可能と思う。