海外こぼれ話 156             

 

暖冬のために名産の

アイスワインが収穫できず

 レンギョウやモクレンやドイツ特有の木々の花が一気に咲き出して、若葉も後追って芽吹き始めた非常に嬉しい季節になってきた。レンギョウは蜜蜂が春になって蜂蜜を集める最初の花であり、蜜蜂が花を咲くのを待っている。アウトバーンや田舎道を走っても気持ちがいい。ぶどう畑は、綺麗に枝の選定も終わり、まるで散髪をしたように整備されている。

ドイツでも珍しい赤ワインも収穫できる南ドイツのネッカー川の沿線は、白ワインやアイスワインの名産地でもある。アイスワインは、貴腐ワインともいって冬になっても実を収穫しないで、ワザとカビをつけさせて水分を飛ばしてブドウを甘くして、それをワインにしたものだ。普通はそのカビは植物にとっては大敵であるが、ワインだけには有益なカビである。そのためにブドウが非常に甘くなり、蜂蜜のようにドロッとしたようになる。

その収穫は寒い冬の朝3時ごろから収穫をするのだが、適温はマイナス10度という極寒の中での作業で、しかも真っ暗な冬の大変な収穫作業して、ワインにするので非常に貴重なワインになる。普通のビンのサイズは四合相当の750ccであるが、このワインは非常に収穫する量も少ないこともあり、ハーフサイズが主流になっている。ワインに階級があるが、このワインが最高級になっている。最高峰の名前は、「トロッケン・ベーレンアウスレーゼ(乾燥粒選り)」というが舌を噛みそうである。今までに数回しか味わったことしかない、デザート用のワインである。過去に日本の某ワイン業者が、甘味を出すために自動車の冷凍防止の溶剤を入れて誤魔化した。そのワインをたまたま持っていたので、業者が自宅まで回収に来たことがあった。そのワインは後日、もったいないので死ぬ覚悟で友人と二人で飲んだが、非常に美味しくしかもまだお互いが生き残っている。しかも冬になっても血液が凍らないのは、このお蔭か?

 昨年もあまり気温が下がらず収穫もほとんどなかったというが、今年も暖冬のためにまったく収穫できなかったと地元の人は嘆いていた。しかし冗談の好きな訪問先の工場長は、「大丈夫、地下室には在庫がまだある。」と言って慰めてくれた。暖冬の影響は思わぬところで発生しているが、その余波で嬉しいのは、春が例年よりも1カ月早く訪れて、一気に花が咲き乱れていることだ。

改善に燃えた青年

 この南ドイツの訪問先にこの3カ月の間に、とんでもない改善をしている青年がいるので、是非紹介したいと改善コーディネーターが申し出てきた。珍しいことがあるものだと思って、その職場に出かけた。その職場のマイスターは、改善に熱心だとは以前から知っていた。このマイスターは指摘したことを素直に実践し続けているので、職場を訪問するたびにレベルアップしていることがすぐにわかるほどだ。

その改善対象の職場には、まだ10代の青年が熱心に改善に取り組んでいた。彼は昨年からこの職場に、派遣社員として勤めだしたという。単調な加工や機械の操作がつまらないといって、他に何か仕事はないかとマイスターに申し出たという。マイスターは、それなら半年前から着手している改善の手助けをしてくれないかと投げかけたら、その青年は熱心に取り組み始めたという。

この3ヵ月の間に彼はその改善に集中することができ、また自由な裁量も任せてもらえると、自らアイデアを出して工夫もしながら取り組んだという。その職場を観させてもらったが、今までにないアイデアが至るところに散りばめられていた。そのアイデアは自ら創作して、試行錯誤して作り上げたという。改善のプロが見ても感心する出来栄えであった。企業秘密もあるので詳細は紹介できないが、本人もこの改善が非常に楽しく、アイデアもどんどん出ると嬉々として仕事に励んでいた。彼の取り組み姿勢や笑顔は、最近お目に掛かったことがない素晴らしいものだった。久々にこのような取り組み姿勢に、感動まで覚えたほどだった。彼にはさらなる動機付けをインプットしておいた。

今の若者は無関心、無気力などと思っていたら、まだ彼のような青年がいたことに嬉しくなってしまった。彼と記念撮影をして、すぐに写真をマイスターに渡しておいた。マイスターは、彼のような素晴らしい青年に出会ったことがなく「彼は会社の財産だ!」といって、すぐに派遣社員から正社員にしないと他の企業に行ってしまうと心配をしていたほど惚れ込んでいた。

思わずビックリしたサラダ

 トレーラーの工場の訪問はもう13年目になるが、今までこの工場のために宿泊したホテルは思い出しただけでも7軒もあった。最近は、工場のすぐ近くのスポーツジム兼ホテルが便利なのと、いつも使っているホテルがメッセ(見本市)やセミナーで予約が取れなくなってしまったこともあり、新たにホテルを開拓するために探していた。

しかし、今回は晩ご飯で意外なことを発見した。北ドイツであるのに南ドイツの黒ビールがメニューに用意されていたが、これは珍しく嬉しいことである。今回宿泊した時は、普通は何十もメニューが載っているが、今日のメニューは5っだけしかできないという。宿泊能力は、9部屋なので人は少ないのはわかるが、選択の余地がないのは困ったものだ。そこで黒ビールをパン替わりにして、サラダを頼んだ。頼んでから出てくるまで、なんと20分も掛かった。客は他に3人が食事ではなくビールを飲んでいるだけなので、なんとも長い調理時間か、と思った。

ウエイトレス兼コックさんを一人(20歳くらいの金髪女性)でやっているので、対応がよろしくないというのは予想していたが、ここまでゆっくりしているので、野菜を畑に取りに行ったのか心配したほどだ。彼女は満面の笑顔で、しかもてんこ盛りのサラダを持ってきてくれた。その量は、今までに見たこともなかったほどの大盛りだった。もったいないので完食に挑戦をしてみたが、半分でもうお腹に入りきらないほど食べさせてもらった。これで9ユーロであり、日本人サイズの半分で良いほどだった。朝起きた時に馬に変身していないか心配になったほど食べた。

部屋は非常に広く、計算してみると40平米もありそうでダブルベッドも2つもある。ただしランプが暗く、仕事する時には困った。部屋は広いが、壁は逆に薄かった。隣の部屋からは、トイレの時に発生する爆音やシャワーの音が筒抜け状態であった。2日目のお隣さんは、朝3時過ぎに起床して、そのままシャワーを浴び、3時半過ぎに出発されたが、その間に、完全に目が覚めてしまった。

ホテルの部屋や良いサービス、そして食事も適正な価格も揃ったホテルを探すのは欧州だけでなく、日本でもなかなか難しい課題である。次回は元のホテル、さらにその次は別なホテルも含めて再度模索することにした。最近は上京した時のホテルは、品川一辺倒であった。昨年末からは、羽田空港に近い川崎や横浜のホテルを物色中であり、今年の探し物のリストに入れて置いた。その他に美味しいうどんと蕎麦の店も探すことにしている。変えるものと変えないものがあるが、ホテルやレストランは変えて見ながら、良いものを掘り出す楽しみにしたい。

リトアニアの工場を

ビデオで観察

 この企業は、ドイツ国内に4カ所の工場があり、さらにはリトアニア、スペインなどにも工場がある。今回はビデオながら、リトアニアの工場を紹介してもらった。同じような作業をしているが、良く見ると社員の顔つきがドイツ人とまったく違うことに気づいた。以前ポーランドを訪問したことがあったり、ロシア人にも会ったことがあるが、表現し辛いがそっちの方の顔つきであった。何度も行った人からは、女性は美人が多いとニコニコして話をしてくれた。出張が楽しみだとも言うが、仕事も動機付けは必要だ。

 最近工場を建てたので綺麗なこともあるが、中は整理整頓の5Sがしっかりできていた。賃金はドイツの15分の1と非常に安いという。以前の日本と中国のようだ。しかし彼らは熱心に、しかもキビキビと作業をしていた。周囲に工作を頼める企業がないために、何でも自分たちで工夫して作ってしまう賢さがあるという。治具や台車などをよく観察をすると、本社よりも良くできているものもあった。お金がないというのは、逆に頭を使い自ら工夫するという点では有利なことだ。困らないと知恵は出ないが、近年はなかなか出てこなくなってきつつあるので、もっと自分自身の勉強をしなければと感じた。

 以前、この工場に訪問して一緒にワークショップをやった市役所から、コンサルをして欲しいと打診が飛び込んできた。ドイツの公務員は数百万人もいるが、トヨタ方式を導入しているところはまったくないと聞いているので、この打診は冗談かと思った。でも随分前の訪問と参加だったので、忘れていたかと思ったが、公務員の仕事はカタツムリのようにゆっくりだ。この遅々としたのは日本も同じだろう。変わりたくない、替えたくない、そのままで何とか定年まで過そうする意識は、石のように固いだろうが、良く改善に興味を持ってくれたものだ。それだけでも嬉しい問い合わせの情報であった。

昼食は簡単なパンやピザ

 この工場は昨年から昼食に出されるロールパンに載る具材が一変して、豪華になってきたことは喜ばしいことである。以前はこぶしより少し大きいパンを半分に切り、バターを塗ってチーズかハムを、それぞれ1種類を載せただけのシンプルなパンだった。いつも嫌味でお前のコンサル料が高いので、安いパンしか出せないと言われてきたが、彼らもあまり美味くなかっただろう。ようやく改善がパンにも及んできた。

 ハムやチーズの枚数も3枚、4枚と数も増えたことに加えて、色々な種類も増えて選ぶことに苦労することになったほどだ。でもこれは2つまでにしておかないと、昼からお腹が膨れてしまい眠くなる。美味しいからと言って欲張ると大変なことになるので、美味しいものには注意が必要である。その分ガス入りの水かコーヒーをたっぷりと飲んで誤魔化す。写真でも紹介をするので、どんなものかご覧頂きたい。

 これだとみんなが一斉に同じ場所で、テーマについて一緒に雑談もできるメリットもある。後片付けも簡単にできるので、話に集中できる。今回のセミナーは、いつもと違いこちらから質問を投げ掛けて、1つ1つの質問について5分間を4人一組で討議してもらうことにした。そして順番に3つくらいの回答を出してもらいながら、書き出していく方法を取った。面白く良いヒントもたくさん出たが、90分の予定が140分も掛かってしまった。本格的な指導は初めての試みだったので、かなり時間が掛かってしまった。得るものは多くあったので、今後も取り入れていくことを先方も賛成してくれた。

 食堂のないところは1社だけがケイタリングで用意されるが、あとはこのロールパンかピザになることがある。ピザは焼きたてを持ってきてもらうが、時間に間に合わず20分も遅れることもドイツ的である。もしかしてピザなので、イタリア人が作っているかもしれないが、いつも担当者が電話で時間確認しているようなので、多分イタリア人が作っているだろう。

肝心の味はどこのピザも良い味なので、あまり文句も言えない。このピザは、日本だと8等分する記憶があるが、こちらは6等分にする。多く食べる人は、6枚食べてしまうことがあるが、彼らは本当にピザが大好きのようだ。私はこのピザも2枚だけにしておく。3枚だと載せてあるチーズで、胸焼けをしてしまうし眠くなる。女性も参加するが、いつの間にか人数分のピザがほとんどなくなることもある。やはり1人でまるまる1枚食べる勘定だ。時々切れ目がないピザもあるが、これはイタリア人の愛嬌か。

デュッセルドルフの

韓国料理店

散歩がてらデュッセルドルフの市内を散策して気づいたことがある。アパートの半径500mの中に10軒の韓国料理店があったことだ。普段はハングル文字の看板があるかなあという程度で見ていたが、意識して見ると何軒もの店が近くにあることが分かった。不思議にも旧市街にはほとんどなく、駅前の繁華街に集中していることもわかってきた。いつもは隣の韓国館で石焼ビビンバを食べていたが、他の店の味やサービス、値段なども一気に気になりだして、散歩の途中にどこに店があるかを簡単な地図に落とし込んでみた。私の住んでいる通りには、最盛期には4軒の韓国料理店があったが、今は3軒で、しかも2軒はまだ食べに行ったこともなかった。しかし狭い範囲に、こんなにも多くの店があるとは意外であった。

先入観を持たないように予備調査はしないで、順番に店に行って食べ比べすることにした。選択メニューは、いつも食べている自分自身の定番である石焼ビビンバ(混ぜご飯)に統一した。まずは一番良くフリーペーパーで宣伝している「アリラン」から調査を開始した。席は50席以上もあり、さらに奥には商談か宴会のための個室もあった。仕切りの障子風の格子には、かなりのホコリが溜まっていた。肝心の料理は、まずまずであった。

このようにして、店の内部の5Sや飾り付け、料理の味や見た目、ウエイトレスの対応や待ち時間、コチジャンとその出し方(鍋に入れたまま、別な容器に出すなど)そしてオカズ(韓国語で、パンチャン)は大変興味ある食材である。栄養のバランスを取るために、小皿に盛ったキムチ、ナムル、煮物、炒めものなどが多いところで8品も出てくる。少ないところでも6品もあり、メインのビビンバより楽しみがある。これはしかも無料であり、要求すれば追加で出してくれるのがまた嬉しい食習慣である。店によって内容も味も違うので、興味津々になっていく。日本の韓国料理店では、このオカズが少ないのが欠点。

足掛け3カ月に渡り、ミシュランならぬ味の探偵員が調査比較をした結果、栄えあるデュッセルドルフ市内のベスト韓国料理店は、オスト通りにある「Gin Seng」とした。しかも値段は最も安い8ユーロだった。小さい店で小奇麗にしてあり、ウエイターとウエイトレスの対応もキビキビしており、笑顔での対応が良い。他の店は高い店で14ユーロもしたが、約2倍の格差も発見した。平均で11ユーロだった。2位は、「Gu San」。隣の「韓国館」は、3位とした。30年以上の歴史があり、11年で3回オーナーが交代することもあったが、味を何とかまとめている点を評価した。まあ隣のよしみということも追加点にしておいた。あとで知人や友人に聞いてみると、韓国館の代わりに「アリラン」を推していた。好みもあるが、街の声や評判も聞いておいてから店に行く方が賢いと思った。

次は中華料理を試してみたい。中華料理店も数件見つけているが、入った店はまだ3軒ほどなので、期待は膨らむ。和食は日本で食べた方が値段も半額以下で、しかも素材も抜群に良いので、わざわざドイツまで来て和食の評価はお金がもったいないということで、評価対象から外すとする。

電子レンジが壊れた

デュッセルドルフのアパートに住むようになって11年になるが、このアパートは21の部屋があるが、11年も住んでいるのは私だけになっていた。この以前の住人が使っていた電子レンジ(日本のシャープ製)が、突然バチーンと鳴って壊れてしまった。寿命としては15年くらいで長持ちしたようだ。これを廃棄して電気店に行ったら、安いものは40ユーロでオーブン付きだった。 

結局一番シンプルなOK社のものを買ったが、50ユーロだった。隣には炊飯器があり、一番安いものは1合炊きでなんと16ユーロだった。洗濯機は100台くらい並べてあり、選ぶに大変だろうと感じた。さらに店を散策すると多く店を占領していたのが、コーヒーサーバーだった。200まで数えたがそれ以上の種類があり、コーヒー文化であることを感じた。実はドイツで一番飲まれているのは、ビールではなくコーヒーとは意外な事実であった。持ち帰るのに11kgも重量があったので、肩に担いでしかも1kmも歩いた。取出して取扱い説明書を見ると、なんと17カ国語で書かれていた。日本語はなく、漢字は中国語であった。スイッチを入れると確実に作動した。これで安心だ。