今月の執筆者

中村健一

芸術は長く人生は短し…

私は写真に関心を持つ、写真愛好家である。

文化活動センターとの出会いは、平成二十四年八月に開催された、新勝人写真展「フィジカル」を鑑賞するため、リフレギャラリーに行ったことである。

力作に見入っていたところ、

「説明しましょうか?」と声を掛けたのが中村絹子さんだった。

私は中村さんが説明されるものと思っていたが、現れたのは館長だった。  

館長は作品の主題・表現・加工等の説明をされたが、言葉の端々に写真家の名前と作風はもとより、絵画における専門用語や画家の名前がポンポンと出た。

館長はてっきり美術が専門だろうと思っていた。(後で知ったが音楽教師をされていたとのこと)

うまいコーヒーと館長の滑らかな話術に酔ってしまい、気が付いたら写真セミナーに通うようになっていた。

写真セミナーでは映像(作品)を見ながら解説を聞き、理解半分、不理解半分であった。

それでも、話しを聞いていると、写真の構図と絵画の構図、あるいは何を主題にするか等の共通点があることから、絵画にも関心を持つようになった。

セミナールームに掲示されている版画の配色にも関心を持つようになり、私の気分はまるで芸術家のようだった。

わずか五回程度しか参加できなかったが、中身の濃いセミナーだった。

その後、NHKの「日曜美術館」を視聴することによって、美に対する目を養うようにするとともに、作者の訴えたいこと、表現したいことを理解しようと心掛けるようになった。

写真を撮るにも、カメラを意のままに操作出来ない私が、他分野の筆使い・色彩等について安直に理解できるわけがないのだが。

美術品は何百年いや何千年経過してもその美を失わないが、その美に吸い込まれるとき、私の心は安らぎを覚える。

それは、私を美の世界に誘っているのだろうか。ガサツな私が、美を意識しながら撮る写真は、今後どのように変化するのだろうか。

それを想像することも楽しみだし、美に対する造詣の深い館長との会話も楽しみである。

嗚呼。芸術は長く、人生は何と短いことか。と切に思う。