ハンガリーでの結婚式で

藤井安重

 

娘が留学した先で知り合った男性と結婚したのは7〜8年前のことです。

この国では何もかも手作りの結婚式でした。パーティの会場設定から、ご馳走も花婿の友達が前日から集まってハンガリー料理を盛り沢山に作っています。花嫁も友達に手伝ってもらいながら自分で着付けしています。私も花を頼まれ、忙しい中暇を見つけて娘と電車に乗り花屋さんを訪ねます。日本の花屋さんと違い、花が高く無造作に積み上げられた状態です。それも手にとって合わせて見ることもできません。一度手にとれば買ったと見なされ元に返すことが出来ないからです。言葉も通訳はいるものの中々思うことが通じません。何年もお花をやっているのにと頭が真白になりました。おまけにそこには針金もテープもオアシスもなく、鼻をへし折られたようでした。仕方なく花瓶に花を挿しただけ。これが生け花の先生?穴があったら入りたいくらいでした。

国が違えば形も考え方も随分違うものです。ヨーロッパのアレンジはグロテスクで見たことがなかったのです。

それからは時々雑誌やテレビなどで目にするようになりました。ある時テレビで、イギリスの年配の女性が自分の家の庭で摘んだ花を使い、アレンジを作っておられるのを見ました。その中の言葉に、「天、地、人」を考えていけているとおっしゃっていました。

池坊の中にも「天、地、人」人の生き様を、花を通して表現していくいけ方があります。どの花にも生命力を感じるようにいけて行きます。人と花、人と人との心をつなぐ文化が日本にはありますが、ヨーロッパでもそのことを考えて、どんな形であろうと「天、地、人」を意識しながら、花に心を通わせながら活けることを知りました。

ホッとしました。 (文化教室池坊)