今月の執筆者

    倉林満喜子

「気功入門」のすすめ

 気功と聞くと、例のポーズでパワーを出すものと思う人がたくさんいる中で、「気功入門」教室を始めさせてもらった。体験した人には、気持ちが良いと言ってもらえる。あのポーズがないとも言われる。そうなのだ。例のポーズは半分当たっていて半分違う。気はエネルギーであり流れているという意味では、あの通りだし、姿勢や形があればかりでないという点では違っている。それより何より気功は、人を攻撃するためには学ばないという点で大きく違う。気功は自分を養生するための身体技法であり文化なのだ。

 文化は勿論中国文化である。気功の始まりは、中国の原野がまだ湿原だった頃に遡り、湿気に痛みがちな体の節々を、伸ばしたり、動物の真似をした人々の動きに求める。道教とも中医学とも深く関わりながら継承されていて、長い歴史や文化の背景を持っている。

 気功入門教室では健身気功の八段錦・易筋教・五禽戯・六字訣を練功している。この四つの攻法を簡単に説明すると、「八段錦」は気のストレッチと考えてもらうといい。体の中の流れる気を、広げたり伸ばしたりする動作が、体を健康にしていく。「易筋経」は、筋肉骨格を調え髄を洗う功法で、曲げたり捻ったりがある。続けている内に身体能力は確実に向上する。「五禽戯」は、虎・鹿・熊・猿・鶴の五種の動物の真似をして動く。なったことのない自分と対面するのは楽しい。これは生き直しの気功。「六字訣」はとてもユニークで息や声を出す。六つの音が臓腑の一つ一つに対応していて、単調な音と動作が体に響を与える。

 この四つの功法に共通しているのは、動作がゆったりしていて分かり易い点であり、中高年の健康管理のために伝統気功を編成し直した中国国家体育総局の心意気が窺える。見えない気を扱う気功は神秘界に紛れ込むイメージがあるが そういう妖しさはここには無い。運動生理学的にみても動作がよく研究されていて順序方向・角度・強度のどれをとっても申し分がない。よくこれ程に体を知り尽くしたものである。宇宙を思い、自分を思う。或いは身体と呼吸と、心の調和を目指す。どちらも気功全般に共通しており、それを「天人合一」「三調合一」というのも知って欲しい。

 体は変わる。動かさなくても動かしても変わる。ならば、動かして変わりたい。年を重ねながら、体と関わるなら気功は真に塩梅が良い。おすすめである。(NPO日本健身気功協会)