倉文協リレーエッセイ

今月の執筆者

田中 健之

音楽不器用少年の今

「田中君、もうちょっと静かに電話してくれんか?」と、職場の上司からしばしば声量について注意を受けます。そんな大声を出している気はないのに…。上司だけでなく、友人からも声が大きいと注意を受ける私は、生まれも育ちも八頭町です。

八頭町民の私が、なぜ倉文協のリレーエッセイを書けるのか?それは、色々と縁あって北栄町で活動している「合唱団こさじ」に歌い手として所属しているからです。

もともと、私は音楽があまり得意でありませんでした。小・中学校での音楽のテストは平均点以下、高校も朝から晩まで卓球に打ち込む日々で音楽とは無縁。20歳になるまでクレッシェンド・デクレッシェンドの意味すら理解していませんでした。

しかし、大学に入学して某男声合唱団の勧誘に引っ掛かり、軽い気持ちでデモ演奏を聴いたところ、衝撃を受けました。男だけの合唱がこんなにも格好良いのか?!合唱とはこんなにも人を感動させるものなのか?!それが、私と合唱、ひいては音楽との出会いでした。

それ以来、楽しいはずの大学4年間を男声合唱に身を捧げ、酸いも甘いも男と共有する毎日。やれ合コンだ、やれ彼女と海外旅行だなど、一般的な大学生が過ごす甘い日々をほとんど経験することなく、男にまみれて卒業しました。

そんな(男声)合唱との蜜月関係も大学院進学と同時に終わり、国家資格取得のためにひたすら勉強する生活が始まりました。しかし、夢破れ、志を果たさずに八頭町に帰省した2年前。大学時代の恩師がきっかけとなり、「合唱団こさじ」から入団のお誘いがありました。

「八頭から片道1時間以上もかかる所で合唱なんかできるかい!!」…と思いつつ練習に行ったところ、@まさかの入団、Aまさかの役員就任、Bまさかの団内結婚、という3つの「まさか」を経験することになりました。

こうして鳥取で合唱をしているのも、大学時代を男だらけで過ごしたことや、高校時代の卓球部で大声を出していたことのおかげだと思います。「サーッ!!」と声を出していた少年は、今や「マーッ!!」と発声する青年となっていることからしても、本当に音楽は人生を変えるものですね。

(合唱団こさじ)