海外こぼれ話 162          

 

デュッセルドルフで 

ポルトガル料理

 デュッセルドルフ市は人口が60万人の都市であり、日本人だけではなく韓国、中国、トルコ、イタリア、ギリシャなど多国籍の人種がいるドイツでも国際的な都市の一つである。アパートのある駅前通りを300mも歩けば、数か国語の言語が聞け、中華、イタリアン、和食、タイの店もある。市内で韓国料理店を10軒探して、7軒に同じメニューの石焼ビビンバを頼み、食べ比べもしてみた。

値段も8から14ユーロまで幅があり、店によって特に唐辛子の味噌のコチジャンの味と付け出してくれる量も違いもある。さらにキムチなどのおかずの小皿の内容も様々であった。好みの店もこのように食べ比べしてみると、自分の好みも明らかになっていく。また店の雰囲気やサービスの対応も見えて来る。

この他にもドイツ国内では、良くイタリア料理を好んで戴く楽しみがある。私自身がラテン系の血が流れているのかどうか分からないが、肉ではなく海鮮が出ることとシンプルな素材でも美味しい料理が私の胃袋を掴んでやまない。フランス料理も何度も食べる機会もあるが、濃いソースのせいか少し味が重く感じられる。ギリシャ料理も良い店に巡り合ったことは、ドイツではなかった。その時に色々な店で食べたが、いずれもオリーブオイルの中に素材が漂っていて、塩辛いだけの料理のイメージしかなかった。

スペイン料理もドイツ国内に何軒かあり、タパス料理(小皿料理)で少しずつ色々な料理を楽しめ、そしてスペインの赤ワインの虜にもなってしまったほどだ。その隣のポルトガル料理は、欧州に何度も通っているがお目に掛かることも接待でも食べる機会がなかった。ドイツの会社のホームページに、私が、イタリア料理が好きだと明記してあり、顧客もそのようにレストランを設定していたようだ。そのようなこともありドイツでも日本でもポルトガル料理には縁がなかった。ただし有名なポートワインは、かなり以前から知って嗜むこともあった。あとはお菓子の金平糖、カステラだ。そして、アザレアのまち音楽祭で歌ってもらった、月岡秀子さんのファド(ポルトガル民族歌謡)もあったなあ。

鳥取県人会の西本さんの姉妹は、ポルトガルに数回旅行に行ったことがあり、デュッセルドルフ市内にも美味しいポルトガル料理の店を知っているというので、この前のバーベキューのメンバーと一緒に連れて行ってもらうことにした。すぐ近くのUバーン(地下鉄のこと)で2駅先なので、アパートから200mの先にあるOst()駅で待ち合わせすることした。でも入り口が4つもあり、何度も出入りして探した。ようやく皆さんに会うことができたが、八橋駅のように何もなければ探す必要もないが、本当に都会は大変だ。

初めてのポルトガル料理に

舌鼓を打つ

Uバーンのチケットは鉄道と一緒で切符を買って、入り口の時間を切符に印刷する機械に差し込み印字を確認する。キセル乗車や切符なしで見つかると相当な罰金を払うことになるので、正直に皆さんが切符を買っている。この辺がドイツ人の国民性である。日曜日だとパス券を持っている人には、もう一人の人がただになる制度があり、私はその有難い制度を使わせてもらった。2つ目の駅を降りて、数百mも歩くと目指すポルトガル料理店に着いた。他のメンバーはこの前も訪れたようで、早速店のウエイトレスとハグまでしていた。

天気も良かったので、庭のテーブルで食べることにした。オーダーはドイツ語で頼み、料理もドイツに来て5年になるSさんがすべて頼んでくれた。海老やイカ、タコの海鮮がドンドン出て来るので、小躍りしたくなるほど嬉しくなる。いつもアパートで一人料理をして食べるので会話がないが、20代の若い人たちとの会話は箸が転んでも可笑しいというように、食べるよりも笑う方が多くなってしまう。しかも通訳なしで日本語なので、ビールやワインを燃料にして、気楽なお喋りやオヤジギャクが泉のように出てくる。

ポルトガル料理は、カタプラーナという海鮮の具材をオリーブオイルとニンニクに海老の脳味噌が基本になった料理だ。いわゆる地中海の料理であり、シンプルであるが素材の旨味が嬉しい料理である。この後にイカやタコの料理がまるで、竜宮城に行った気分になるほど出てきた。ビールのあとは、白ワインを楽しんだ。6人で133ユーロと格安で、お値段以上に感じた。また来よう!

パーティー用の買い出し

皆さんが非常に愉快で楽しかったので、今度は私のアパートで一品持ち寄りのパーティーをしようとすぐに話がまとまった。TさんとYさんは、再来週に日本に帰国して、次の仕事先のカナダに行くことが決まり、その送別会も兼ねて行うことになった。いつもの筑前煮に加えて、今度はラタトゥイユ(フランスの軍隊のごった煮)用の香辛料(エルフ・ド・プロバンスといい、バジル、オレガノ、ローレルなどを混ぜたもの)を通販で購入し準備に備え、活躍の場が整った。俄然香りが引き立つ代物だ。家内も既に自宅で作って実証済みだ。

本格的にトマトの水煮、白ワインなどもすべての素材を取り揃えたが、その間デュッセルドルフ市内のスーパーなど9店舗を探したが、良い運動にもなった。気づいたのは、同じ素材例えばズッキーニは、0.7ユーロから2.6ユーロまで同じ1本でもこんなに値段が違うことだ。セロリは、小分けではなく10本くらい束になったものが、格安店では0.8ユーロであるが高い店だと、2.5ユーロもする。玉ねぎは、普通の1sものが0.6ユーロで、BIOと言われるバイオ仕様のものが、1.3ユーロと高くなるが、5s入りの普通のものはなんと、1.44ユーロになっていた。短期間に色々な店で材料を探すことになったが、いつもは狙い撃ちでその材料を目当てに買いに行く。しかし今回は探し求めていたので、色々な材料に眼を向くことができた。

ドイツで以外に不味かったのが、今回の牛肉であった。いつもは海鮮カレーにしているが、ここ最近は200g仕様の小さな袋がなくなり、1s単位になってしまった。どの店も申し合わせたように大きなサイズになってしまい、珍しく牛肉を買うことになった。普段は、鶏肉、時に豚のバラ肉で済ましている。試しに肉だけを焼いてみたが、これがゴムのようにしわい。相当手ごわいので、小さく切りさらに隠し包丁を丹念に入れて誤魔化すことにした。あとはカレーのスパイスを利かせ、煮込む時間も長くすることで対応する。

ドイツの肉は、豚肉、鶏肉、そして鹿などのジビエがあるが、牛肉は美味しいものはアルゼンチン産がどこでもレストランで出てくる。最近は米国のビーフもスーパーに並びだした。話が飛ぶが、日本ではTPPが米国の圧力で導入される運びになっているが、欧州版TPP(TTIP)は、ドイツが中心になって猛反対を仕掛けている。メルケル首相への盗聴問題など、さらに遺伝子組換え製品の怖さなどを懸念して、米国に堂々と反対している。この協定は成立しないことが想定されるそうだ。

一品持ち寄りのパーティー

八橋の自宅では家内の仲間で一品持ち寄りパーティーと称して、お互いの得意料理の一品を持ち寄り、その家庭の味や奥様の味付けや料理方法などお互いに情報交換する場でもあるようだ。そんな機会がデュッセルドルフのアパートでも実現した。日刊工業新聞社様の月刊誌で料理のコラムを4年半も持つことができ、半強制的に料理をすることになったが、非常に良い機会を得た。最近の得意料理が、筑前煮である。今回はそれに加えて、ラタトゥイユも加えることにした。この料理は電子レンジを使い始めて、残った野菜を切り刻んでチンして、あとはオリーブオイルや香辛料を混ぜれば出来上がりで、冷蔵庫の掃除にも役立つ。でも今回は、手の込んだ料理に仕上げた。ベランダにテーブルを持ち出して、茜雲のグラディエーションを眺めながらの乾杯は実に美味しい。

Yさんは、ボール一杯のポテトサラダを作ってくれた。中身は玉ねぎが入っているが、他の人は余り入れないともいうので、それぞれに細かいレシピが違うのを知った。これがまた料理の幅を広げてくれる。Sさんのサラダは、パレット一杯のレタス、ニンジンを中心にしたもので、なんとドレッシングは自分で調合したものだった。さらに知人の肉屋さんから入手した牛タンのスライスがあった。生のままでも美味しく、これにワサビ醤油、胡麻油に塩のタレを付けて味わう。さらにフライパンで、胡麻油で軽くソテーして、ネギを刻んだモノを振り掛ける。その刻んだネギを冷蔵庫に仕舞ってあった場所を知っていて、Yさんは即座にSさんに指示して持ってこさせる。ビールを冷やす時に冷蔵庫の中身をちゃんと調べていたのだ。Aさんが1時間遅れてきたが、しめ鯖の骨抜きに時間を要したという。それがまた本格的な味だった。Aさんの日本料理店でサバの味噌煮や塩焼きがメニューにあり、新鮮な鯖が手に入るメリットを生かした粋な代物だった。

カレーライスの相棒は、なんといってもご飯である。鳥取県産の特A取得の「きぬむすめ」は非常にふっくらと仕上がった。普段ご飯を炊くのは一合までなので、電子レンジではなかなか上手く仕上がらないが、今日は三合も炊いたので非常に美味しくできた。水加減はいつも計量計で測るが、今回は目分量ではあった良い加減だった。香辛料が効いているので、牛肉の不味さも消えたようだ。隠し包丁の効果もあった。皆さんが美味しいと言ってくれる。

突然Yさんが誕生日であったことが分かり(私は忘れていた)、KさんとSさんからヘンケル社製の包丁がプレゼントされた。みんなで一緒に「ハッピーバースデー」を歌ってお祝いをした。準備をしていなかったので、企業家精神のお誕生日編のコメントをプレゼントとして差し上げた。後片付けは一気に皆さんでやるので、すぐに出来てしまった。皆さんのお蔭で、今宵も楽しく過ごすことができたことに感謝して床に入る。

改善に加速度がついてきた

スイスの工場は、もう6年通っている。当初はこの工場は、大企業の中で400工場もある中で納期遵守が最も悪い成績だった。昨年からナンバー1になって、今年も既にさらに良い成績を上げていると報告を受けた。本社やその他の工場からの見学や視察が多くあり、少し胸を張ることができて嬉しいと感謝の言葉を戴く。今回もビックリするような改善を彼らはやってしまった。

複雑な組立があり、1個完成するのに70分も掛かっていた。しかし大胆なレイアウト変更と工程間の距離を短くし、突貫工事で非常にコンパクトなU字ラインを作った。改善後には何と26分という約3分の1まで時間短縮でき、さらに面積も半分にしてしまった。今までもできなかった工数短縮が一気にできた。最近の改善は、二次曲線的な変化をするようになったという。最初はなかなか進まなかったが、あるところで一気に改善が進みだしたという。多くの企業が途中で諦めてしまうので、このような成功体験ができない。この工場はその体験を自らやってしまった。これからが楽しみである。

ワイングラスでビールを飲む

スイスの工場は、バーゼルから20km離れた街にある。いつも泊まるホテルは、街中から3kmも山の中に入った一軒家である。レンタカーでホテルの駐車場に行くと、見たこともないような古い車が一番目立つ場所に駐車していた。それはオープンカーで、ヘッドライトは両側の端っこではなく、ほぼ中央に2つ配置されており、非常に小型でまるで日本の軽のような大きさであった。車種のマークを観ても、今まで見たこともないものだった。通訳にもサッパリわからないという。あとからインターネットで色々と検索したが、とうとう発見できなかったが、逆にそれほど貴重なものを観させてもらった。

このホテルは4つ星であるが、レストランはかなり評判の良い店であり、いつも正装した人たちが食事に来ている。今回はフルコースを頼むことにした。前回は若い青年が給仕をしてくれたが、勘定の時にミスをしたのでいつものオジサン(私より少し若い)にサービスをしてもらった。彼は私の好みをほぼ心得ているので、的確なワインを提供してくれる。今回は魚料理をメインに組立ててもらった。席がテラスだったので、まずビールを頼んだ。

そうすると赤ワイン用のグラスであるが、チューリップのカップの形はまるでブランディーグラスのように真ん丸であった。ウエイター曰く、「ビールをストレートなグラスに注くのは、私には謎です。」という。言われ見ると、ビールを注ぐ時にそこが丸くなっているので、良く撹拌するので香りが出やすく泡も出やすい。小皿の料理が次々とテーブルを飾っていく。白ワインと赤ワインをそれぞれ嗜みながら、最後まで美味しく完食することができた。値段もかなりいい値段だったが、納得の金額だ。

ビールグラスは、固定観念をまた一つとることができ、早速デュッセルドルフに帰って同じようなグラスを探して、ビールを飲んでみた。いつもよりまろやかなのは、気のせいか?でも美味しく感じた。色々なこともまだ挑戦できることを、このオジサンに教わった。

シリーズにしたい、

「ドイツへようこそ」

ドイツに来るとなんでそうなるの!という日本に居ては分からないことや文化の違いに遭遇することが多々ある。どちらかというと頭に来て湯気が出ることの方が多いが、海外こぼれ話のネタになっている。書き始めたきっかけの一つにもなっている。15年もいると随分と受け入れることができるようになったが、根っからの短気な性格なので、すぐに火が付きしかもなかなか覚めないこともある。これを瞬間湯沸かし器のようにカッとなりやすく、しかも魔法瓶のように冷めにくいと表現すればよくわかる。それをショートコラム「ドイツへようこそ」に記述して、鬱憤を晴らすことになるがお付き合い願いたい。

アパートの壁にこの2年前からカビが発生して段々と広がってきた。台所回りだったので、暖房のスチームをこの11年間まったく使っていなく、そのために配管が腐ってしまい、水漏れしたと思っていた。現象としては健康に不味いので、通訳経由で大家さんに連絡して壁紙の張り替えを頼んだ。すぐに工事の作業をして、カビの発生した壁を撤去してくれた。

しかしその後の補修は、2か月経っても、何度も大家さんに連絡をしても、まったくなしのツブテだ。つまり壁紙を剥して、腐食した個所を削除しただけで、その穴を埋める、そして壁紙を貼り直すことができていないのである。工事の人は、壁紙を剥す人と削り取った跡を埋める人、壁紙を貼る人はそれぞれ別な人が担当しているようだ。しかもドイツ人ではなく、ドイツ語も分からない人が多く作業をしているので、文句も言いようがなくお手上げ状態である。しかも剥したレンガや板はそのまま放置されている。壁紙が剥がれているので、壁に塗った漆喰はマンダラのような模様が見える。ヨットの大きな模型の背景になって、雲に例えればそのように見えてしまうので、これ以上修理はしないようにしようかこれまた思案中である。このため2か月間は、家賃をそのまま払わずに抵抗を示しているが、大家さんは相変わらず頑固だ。

左隣のアパートが全面的に改装中であり、もう3カ月以上も続いている。時に削岩機の音が続き、棟になっているので脳に直接に響く。部屋がスピーカーになるので、飛行機のエンジン音にも負けない音になる。今回は天井から破片が落ちて来るほど酷いものになった。ベランダにはコンクリートの破片が放置されたままになっており、一向に片付ける気配がない。注意をしても、俺は担当ではないと言って知らん顔している。工事の人の顔を見るといつも違った人が来ているようだ。明らかにドイツ人でない顔もいるので、彼らも言われたことしかしないのでどうしようもない。日本の労災も最近急に増えてきたが、人材不足で経験のない人が死傷している。ドイツも非常に景気がよいので、経験の少ない外国人が作業をしていることが伺い取れる。

今回は工事用の板まで投げ出していた。私の部屋のベランダを、まるでゴミ箱のように使っているのも非常に腹が立つ!工事の連絡も期間も挨拶もまったくない。日本では考えられないことだ。市内は最近もの凄くアパートの改装や道路工事が多く、工事の人材不足で納期通りの作業ができないと思われる。腹は立つが、でも幸いに血圧は正常値なのは、減量したお蔭かもしれない。