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「フロリダ旅行」

 

ニューヨークはこの冬は例年になく寒くて、イーストリバーが凍りつくほどだった。3月に入っても零下になる日が結構あって、ほんとに春は来るのだろうかという雰囲気だった。こういうときには南に行って夏の先取りに限る。

 

米国では春休みは、小学校から大学まで学校によって多少ずれるが、だいたい3月の中ごろから後半に1週間程度ある。この春休みの時期に夫とともにフロリダ旅行に行った。前半の4日間はオーランドで、後半の4日間はフロリダ南東部のリゾート地、ボカラトンで過ごした。

 

ニューヨークのJFK空港を出るときは真冬の格好をしていたが、オーランド空港に到着して飛行機を降りたとたんに空気が暑い。この時期は最高気温が摂氏30度ちょっとくらいで最低気温が20度程度。真冬からいっきに夏になったようだ。

 

オーランドでは、ディスニーワールドに2泊と、ユニバーサルスタジオに2泊した。ここに来たのは11年ぶりだ。現在、夫の娘がフロリダ在住で、その娘と一緒に3人でテーマパークとホテル滞在を楽しんだ。

 

ディズニーワールドはとても広い。マジックキングダム、エプコット、ハリウッドスタジオ、アニマルキングダムの4つのパークに分かれていて、一つ見るだけでも結構時間がかかる。ホテルからシャトルバスでハリウッドスタジオに行き、3Dの映画やライド(乗り物)に乗って楽しんだ。マジックキングダムではディズニーキャラクターたちの華やかなパレードを見た。

 

ユニバーサルスタジオでは何と言ってもハリーポッターのアトラクションに乗りたかった。ユニバーサルスタジオ内のホテルに宿泊すると一般開場の1時間前から入場できる特典があるので、早起きして朝8時前にゲートに行った。ハリーポッターの物語に出てくるホグワーツ城を目指して歩く。

 

「ハリーポッターと禁じられた旅」と名付けられたアトラクションが大人気だ。朝一でもすでにかなりの人が並んでいたが、待ち時間は30分くらいだった。大阪のユニバーサルスタジオではこれと同じものに数時間も並ぶそうだ。よろこんでアトラクションのライドに乗りこんだのはいいが、予想以上に画像とライドの動きが激しい。乗り物酔いしやすい私はすぐ気分が悪くなって吐きそうになり、途中からずっと目をつぶっていて、実はいまひとつ楽しめなかった。ホグワーツ鉄道はリラックスして楽しめた。窓がスクリーンになっていてハリーポッターの物語に出てくる風景が映し出されて夢があった。

 

旅の後半は、オーランドから車で3時間南下してボカラトンへ。ボカラトンはマイアミから北に70キロくらいの所にあり、フロリダ南東部のリゾート地帯を形成するフォートローダーデールとパームビーチの中間に位置する。このあたりは有名人や資産家が広大な敷地に別荘を保有する世界屈指のリゾートでもある。観光といってもホテル滞在が主体で、ゴルフ、テニス、ボート、プールサイドやビーチで過ごすのが一般的。

 

私たちが宿泊したのはボカラトン・リゾート・アンド・クラブという1926年開業の歴史あるホテルだ。クロイスターと呼ばれるピンク色のクラシックな建物、眺望の良い高層ビル、低層のビラ、8百メートルを超えるプライベートビーチが目の前に広がるビーチクラブの4つのタイプの宿泊施設がある。私たちが泊まったのはクロイスターだ。落ち着いた風格がある。

 

敷地が広く、ゴルフコースが隣接していて、ゴルフ、テニス、ビーチ、ジムなどを自由に楽しむことができる。私は4泊のうち3回ジムに行ったが、私がニューヨークで通っている家の近くのジムより広々としてきれいだし、マシンも新しいし、ペットボトルの水も飲み放題で心地よかった。

 

海岸のビーチクラブへは、ほんの5分くらいなのだけどホテルのシャトルバスか運河を通るフェリーで行った。フェリーは特に気持ち良かった。ビーチは日差しが強い。海が美しく広大な大西洋が目の前に広がる。当日の天気情報ではニューヨークでは雪が降っているというのに、ここは夏だ。北海道と沖縄くらい違う雰囲気。

 

米国のビーチでは、ビーチのすぐそばのホテルでもほとんど必ずプールがある。それを初めて見た時は海がそばにあるのになぜプールが必要なのかと思ったが、米国人は泳げない人が多く、日光浴を楽しみたいだけの人も多い。プールなら安全だし、水着や足が汚れなくて便利というところだろうか。海でサーフィンはするが、海は泳ぐ所ではないという感覚なのかもしれない。

 

このあたりは白人が多く、アジア人がとても少ない。アジア人だと目立つ感じだ。現地の人もこの辺はあまりおいしい中華レストランがないと言っていた。ホテルでも宿泊客にアジア人は少ないようで、ホテルのベルマンにもジムのフロント係にもすぐ顔を覚えられた。どこにでもいる中国系米国人もあまりみかけない。なぜだろう?地理的に中南米に近いので、ヒスパニック系の移民におされて中国人が進出しにくい歴史があったのかなと推測する。

 

旅を終えて、ニューヨークのJFK空港に戻って来ると、なんと私のスーツケースだけが出てこない。ノンストップの直行便だし早くチェックインしたのに、なんで?もう長く米国に住んでいて国内線も国際線も何度も飛行機に乗ったことがあるが、いままで運が良かったのか、一度もスーツケースが届かなかったことはなかった。何か危険物に見間違えるようなものでもあって調べられている間にスーツケースが飛行機に乗り遅れたのだろうか?デルタ航空の係員によると2時間後の次の便で送られて来ると言う。しかし待つのはいやなので家に帰った。

 

翌日なかなかスーツケースが届かない。スーツケースを失くしたのではないかと夫が航空会社に怒って電話をかけてくれた。ウェブサイトでトレースすると3便後の飛行機でどうやらJFKには着いているらしい。結局スーツケースは2日後に届いた。開けられた様子もなく、たんに放ったらかされていただけのようだった。やれやれ。最後は気をもまされたが、日焼けで腕時計の跡がついた左手首を見るたびに、夏の先取りをしたがる米国人の気持ちが少しわかった。