海外こぼれ話 171       

 

オランダのホテルは次回の楽しみに

 

 オランダの国境近くにあるトレーラー会社の仕事で、今度はオランダの4つ星ホテルになったと喜んでいた。いつもは車で15分くらい離れた料理の美味しいホテルにしていたが、道路工事がこの2年くらい続いていて開始時間にギリギリになることもあった。このためもっと近くに良いホテルを探していた。ようやくオランダのホテルが、近くてインターネットの口コミにも評判が良いとなっていたホテルを探すことができた。そのホテルは訪問先から車で10分以内にあったが、オランダということで今まで検索していなかったのだ。

隣の違う国だが、実は距離が近くて便利だという感覚は日本にはない。でも欧州はEUになって国境でのパスポートチェックがなくなり、行き来が楽になったのでこのようなことができるようになった。以前にもオーストリアのホテルからドイツの会社に行ったり、スイスの会社にドイツのホテルから出かけたりすることもあった。ドイツの最南端の工場には、スイスのチューリッヒ空港から移動した方が断然楽なこともあった。

ところが直前になって、ホテルの方から大きな団体が入ってきたので、キャンセルして欲しいと変更依頼があった。代わりのホテル紹介もなく、こんなことがあるかと思うが、これが日本と外国のホテル事情の違う事例の1つだ。連泊してさらに追加したら、その日に予約していた人が泊まれないという理不尽な約束事もあり、面くらうこともあった。結局楽しみにしていたが、次回までのお預けになった。

結局、車で5分のところのホテルに宿を取ることにした。ウエイトレスがコック兼任で、しかもホテルの受付も一人やっているというマルチ人間のホテルだ。今回はさらに、ホテルが経営しているテニスコートの貸し出しも一手にこなしている。彼女も大学生くらいの年だが、愛想が今までになく良かった。料理は美味しいとは言えなかったが、笑顔が良く手早かった。

朝は7時から食べることができるが、朝食の準備も彼女1人でやっていた。並べたパン、ジャム、ハム、チーズ、紅茶、コーヒー、スクランブルエッグ、ゆで卵、水などの飲み物、ヨーグルト、デザート、果物など20皿以上も並べている。彼女は、それをスマホで撮影していた。恐らく責任者に仕事ぶりを報告するために、撮影しているようだ。泊まる部屋は9つしかないが、数人は泊まっているので準備も大変だが良くやっていると感心する。

 

反対派を賛成派に変える取組

 

今度の依頼内容は、係長クラスに改善の反対派がいるようであり、その人たちを探すにはどうしたらよいか、どう説得したらよいかというテーマだった。彼ら曰く、マツダは以前から誰が賛成者で、誰が反対派なのか今まですべて当てていたが、その秘密は何か教えて欲しいという。

参ったなあ!話をしている態度やその人の職場の5Sや作業環境を見ての判断なので、特に秘密や秘訣はない。ただ以前からこのような時には相手の話を聴くだけでなく、眼を見ることにしている。そわそわするとか自信がないとか、心の様子が眼に表れてくると思っている。でも数値化するのは無理だ。

でもそのことを説明しないと話が進まないので、マネジメントとリーダーシップを兼ね備えた人物のあるべき姿をイメージして、係長としての職務は何かを定義して説明することにした。「人は何のために生まれたのか?」という哲学的な話から導入していった。話を始めると次々と台詞が頭に浮かんでくる。

事前に3週間前から色々と資料を集めて勉強していたことが、一気にまとまって話ができるようになる。100分間双方向でやり取りも交えていくと、反対派の顔も次第に変わってきたのがわかってくる。

講義の後にある現場に行ってさらに説明を加える。その職場の作業環境の結果は、上司の心が反映したものであると伝え、1時間ジックリと観察する。彼らの気づかないこと細かいことを、あれもこれもと指摘をしていくと彼らの顔が引きつってくる。いかに自分の部下を、粗末に扱ってきたかを気づかせることができたようだ。こんな環境で仕事をさせていたのか!部下は自分の家族と同じだ!などと問いかけていく。

この時に彼らの眼を見て、どう対応しているかを判断している。視線をそらした人は特に注意が必要であり、すぐにその人のところに行きフォローする。すぐに行くと、どういう訳か大抵本音が聞けるので、フォローもしやすい。要はきちんと話を聴き相手を認めることで、大抵の人間関係は紐が解けていくようになると思う。それは日本人、ドイツ人といった国境はないと感じる。

コンサルの経験から上司の役割は、自分以上の人物を何人育成したかが評価基準になると説明している。部下を踏み台の材料にしてこなかったか、自分の失敗を部下に押し付け、部下の手柄を自分の手柄に取り上げてしまわなかったかなどを、胸に手を当てて見なさいといつも言っている。実に多くの事例を身近に見てきたので、これらの事例が反面教師にもなっている。

参加メンバー同士の話し合いから、グループ討議、ミニプレゼン、私からのフィードバック、意見交換を重ねていく。反対派のようであった人たちが、変わっていくことが見えてきた。まだまだ本音も言わないかもしれないが、グループに入っているメンバー同士は、既にどうすればよいかを感じているはずだ。

ここから先は賛成派の人たちが、自ら説得していくように仕向けていく。豚もおだてれば木に登るというが、人もその気にさせると良い方向に向いていくものだ。

 

対応の悪いレストラン

 

この2年間に、旧東独の工場に数多く来る機会が増えてきた。以前は、B社の工場があるバッハの生家のあるアイゼンナッハだけだった。訪問するには、交通の便が余り良くない地方だったこともあり、縁もあまりなかった。しかし東西の壁が壊れ20年以上も経過したので、労働賃金が安く政府の資金援助もあって、多くの企業が進出してきた。そのため訪問する機会が一気に増えた。

今回もほとんどの従業員が、反対派である工場にやってきた。前回は料理もワインも美味しかったので、今回も要塞兼お城のホテルを利用した。ホテルに着いてレストランに行くと多くの客がいたが、ほとんど老夫婦だ。満席状態だったので、一番離れた席に通された。すぐにメニューを持ってくると言ったウエイターは、20分も経ってもこないので、通訳にメニューを取りに行ってもらった。それから5分後になって、飲み物の注文を取りに来たが、バツが悪いのか別なウエイターが謝りながらやってきた。

飲み物はさらに15分経ってから持ってきた。遅い!同時にパンとバターを持ってくるものだが、持ってこない。催促してようやく持ってきて、注文を聞くことになった。もう40分以上も経っている。前菜は止めた方が良いと思い、メインのみを頼んだ。しかしメインの料理も出てこない。ビールも2杯目が空になってしまった。ようやくメインが出てきたが、席に着いて1時間以上も待たされたことになる。味は当然不味い!

2日目は、訪問先のメンバー3人と一緒にこのレストランで食事をすることになってしまった。街中のイタリアンかと勝手に思っていたので、ショックだった。6時半から食事というので、今日の仕事をレポートにする。時間が余ったので、ホテルの中庭に出ると3人がテントの下でビールを飲んでいた。

既に6時から飲んでいるという。天気が非常に良いのでそこで乾杯した。日本のラガービールと言われるピルツナーが非常に美味しかった。余りにも美味しかったので、その場で2杯も飲んでしまった。銘柄を見ると地ビールだったが、久しぶりに美味しいビールにありつけた。

レストランのなかに入り、今度は5人なので少しは料理が早く出ることを期待して、前菜もメインも全員が頼んだ。結局昨日と同じく料理が出来ていたのは、オーダーしてから1時間後だった。頼んだチキンは、脂もすっかりなくなっていて、皮がショボショボに縮んでしまっていた。不味い!しかも頼んだ地元の赤ワインは、今日は切らしているというので鶏冠(とさか)に血が上ってしまう。同じ感じのワインがあるので、それを用意するという。不味かったらお金入らないというので、飲む前から不味い!と言っておいた。

次回のホテルは、別なところにして欲しいとリクエストしておいた。しかし彼らはさらにビールを飲んでいて、結局11時ごろまで飲んでいたと翌朝話をしてくれたが、なんと5時間も飲んでいた。ドイツ人の胃袋と膀胱の偉大さは、ビールを飲むために作られたのかと思うほどいつも呆れてしまう。

以前ドイツ人を日本ツアーに招いた時に、一晩でコンビニのビールをすべて飲んでしまったという逸話もあるほど呑み助である。大抵の人は、3から6リットルは飲める。ローテンブルク市の市長が、一気に3.25リットルのワインを飲んで街を救ったという実話があるほど彼らは本当に良く飲む。

 

反対派を賛成派に説得していく

 

この旧東独の工場は、3回目の訪問だった。最初は予備診断だったので、実質2回目のワークショップになる。じっくり現場の観察もできるようになった。旧東独の人たちの共通点は、共産圏時代に長く働いていた人たちは言われたことしかしないというロボット的労働者がほとんどだ。

今回の訪問で、この工場の問題の本質が見えてきた。作業指示が出ているにもかかわらず、自分の好きなように加工していたのだ。10個生産するのに、材料が20個分あれば20個作ってしまい、後工程も生産指示が10個なのに20個そのまま生産して、結局は不動在庫になってしまっていた。なぜそんな無駄なことをするのかと問いただすと、段取り替えが発生するので大変だ、同じ材料ならまとめてやった方が楽だ、などと自分勝手な理屈だけを並べる。後工程のことは考えていない作業をしていただけであった。そのためにほとんどのものは死蔵在庫になり、結局は廃棄する派目になっていた。だから儲からないのだ!

すべての人ではないが、多くの人がこのようなムダな仕事を何とも思わずに作業していたのが見えてきた。なぜそうしていたかは、会社に来ていれば給料がもらえるので、職場にいればよいという考えに浸ってしまったのだ。

小まめに段取り替えを行うとそのようなことはないが、仕事したふりをしておけば問題ないという環境になってしまった。誰も同じことをすれば問題ないという共産主義の悪い点が、このような競争をしない、もっと良くしようという意欲もない作業環境を作ってしまったのだ。思想とは恐ろしいものである。

定年前の製造部長を筆頭に各課長も同じ考えだったので、従業員も右に倣えとなってしまった。でも今回は少しずつ賛成派が出てきて、そのことに気づき始めたのは大収穫だった。定年にあと2年に迫っていた女性の課長が目覚めて、あと2年しかないができるだけ改革を行いたいと宣言もしてくれた。

必要なものしか生産、加工しないというトヨタ方式の根本思想を根付かせるには、相当な時間と労力が必要だが、目覚めた人たちを中心に取り組んでいけば、2年後には儲かる工場になっていくはずだ。その支援ができるように、本社部門にも働きかけていく意欲が湧いてきた。

それでも1つのテーマで、従来1個組立てるのに33分掛かっていた作業を19分まで短縮できた。さらに4分短縮できる改善案も考えることができた。結局半分以下の時間でできることが、自分たちの手で可能なことが見えてきた。これを経験に少しでも自信を持てば、考え方も変わってくることを期待したい。

 

デュッセルドルフの若い女性

 

デュッセルドルフのアパートの近くに日本料理店「加賀屋」があり、昨年まで早稲田大学フィルハーモニー管弦楽団のビオラのトップにいたさっちゃんがいる。この前アザレアのまち音楽祭のオープニングで、オペラ「魔笛」の指揮をされた松岡先生のサインと写真、さらにCDを彼女に渡すこととができた。松岡先生に訊ねると、彼女を良く覚えておられたので、さっちゃんも感激して舞い上がるくらい喜んでいた。

松岡先生は、アザレアのまち音楽祭のあと、その早稲田フィルで「新世界」などの指揮をされた。さらに1週間後は、成城大学の管弦楽団の指揮もされていたが、本当にタフな指揮者だ。来年も2大学の指揮をされることが決定済。

さっちゃんを知るきっかけになったのは、「加賀屋」の店に3年前からいるAさんとは顔馴染であったからだ。昨年から3人の若い女性が入れ替わっていたので、Aさんから紹介をしてもらった。

ランチを食べ終わって、これから原稿の入力作業をしようとピアノを弾く仕草をしたら、「あら、松田さんはピアノを弾かれるのですか?」「いいえ、これからパソコンのキーイン作業です!」と答えると、「あら、さっちゃんは(ヴァイオリンの弓を引く仕草)これですよ」とAさん。「ああ、ヴァイオリンですか?」「いいえ、ビオラです!」とさっちゃん。こうやって会話が弾んでいった。そこで持っていたアザレアのCDを貸し出した時に、松岡先生に4年間指揮をしてもらった話が出たという訳だ。

出張から帰った夜にも時々お店に行くのは、若い女性のパワーをもらうためだ。若い女性の笑い声は、疲れが吹っ飛ぶ。ということで、今回はAさん、Kさん、そしてさっちゃんの3人の写真を撮影することができた。さっちゃんの写真は、松岡先生にも送信しておいた。

 

JALの翼を利用し続けて16

 

コンサルの仕事は20001月からで、翌2月から欧州への出張が始まった。当初は年に8回であったが、毎月のように通うようになった。JALに生涯マイル数が登録されており、日本とドイツの行き来で往復160回以上、航空会社のワンワールドのアライアンスでは、通算約200万マイルであるとわかった。

いずれもビジネスクラスを使っているので、一往復が数十万円掛かる。でもドイツを起点にして航空券を買っているので、かなり日本から買うより割安になる。それでも計算をしてみると、約1億円を飛行機代だけに使っていたことがわかり、それなりの価値が私にあるのだろうかと愕然とした。

これに国内外の飛行機や鉄道、タクシーなどの移動費用、ホテルの宿泊費用、通訳費用、給料、会社の儲け、その他の諸費用などを試算してみる。それに今までお客様から支払って戴いたコンサルタント料金の売り上げから計算すると、そんなに外れた金額ではなかったのでホッとした。

その見返りとして、ビジネスクラスからファーストクラスへのグレードアップがあると思う。マイルやクーポンを使うことも多く、1年に多い時は9回も利用した記憶がある。時にはビズネスクラスがオーバーブッキングで席が取れなくなり、空いているファーストクラスへ上がるJALからのサービスも時々ある。

JALのカードに利用したマイル応じてランクがあり、私は最上級のエメラルドだ。でも数年前から、飛行機の部品から11つ手造りで作ったメタルカードを特別にもらっている。バーコードがなく金属で重いが、ステータスには十分な重さだ。出雲空港内の係員たちでは私のカードしか見たことがないと言い、かなり貴重な存在らしい。専用の電話番号に掛けると、優先的に頼みごとに対応してもらえる。

ジャンボ機の時は、ファーストクラスの席は12席もあり、大抵3人から数人しか利用していなく実にゆったりというか、逆にCAは手持無沙汰であった。1人か2人の時も何度かあったが、かゆいところに何本の手が届くというのは、逆に苦痛の時もある。最近機材が替わり、12席から8席になってからいつ満席状態だ。皆さんがマイルを活用する機会が増えたせいだと思う。

ファーストクラスの楽しみは、食事とお酒だ。和食と洋食の2つからその場で選ぶことができる。酒はシャンパン、白赤のワインが3から4種類、日本酒は大吟醸が2種類、焼酎は森伊蔵など2種類などたくさん選ぶことができる。

1つのお膳に2から3つのワインや酒を並べて、少しずつ料理に合わせるのが楽しみだ。時にはソムリエの資格を持ったCAもいるので、ワイン談義に花が咲くこともある。機内食webというサイトに時々投稿しているので、どんな料理が出ているかは、そちららでご覧戴ければ幸いです。