フロリダの住居

〜集中冷房で快適〜

 

フロリダの家に住み始めて3カ月になる。フロリダの夏はとても暑く湿度も高い。しかしそれは外のことで、家の中はどこの家庭もセントラル・エアとよばれる集中冷房の設備があるので、家じゅうすみずみまで涼しい。トイレももちろん、クロゼットの中にも冷房の吹き出し口が天井にあって服も涼しそうだ。

 

ニューヨークに住んでいた頃は夏は家の中が暑かった。マンハッタンの集合住宅はとても古いものが多く、集中冷房の設備はないものがほとんど。バルコニーもないアパートが多く、冷房機は窓枠式で音がガーガーうるさいものを多くの人が使っている。たとえバルコニーがあっても日本のようなセパレート・タイプの冷房機は米国の家は壁が厚くて設置困難で全く普及していない。窓にはめ込むタイプの古くさい冷房機なんて日本ではもう売られていないのではないかと思うが、米国の個人宅では現在もたくさん使われている。

 

それでマンハッタンのアパートに住んでいた頃は窓枠式の冷房機を使っていたのだけれど、それがまた温度調整が難しく、つけると寒いし、切ると暑い。私は寒がりなのでつけっぱなしなんてできず、切って扇風機を回したりしていた。寝るときもつけっぱなして寝ると寒すぎるので切って寝て暑かった。

 

それがフロリダでセントラル・エアになったとたん、なんと快適なことか!集中冷房は毎日24時間ずっとつけっぱなしで使うのが普通。局所冷房と違って強い風が出るわけではなく、そよそよと優しい冷気が天井の吹き出し口から出てくる。温度は自動設定になっているので常に希望の温度を保てる。私は華氏80度(摂氏27度)に設定しているのだが、ほんとうにちょうどよくて気持ちいい。多分これは日本でいうと大きな病院に入院している時の病室の温度くらいと思う。

 

初めて米国で生活し始めた時の冬のセントラル・ヒーティングの快適さに感動した時と同じだ。米国北東部の冬の寒さは半端ではないので、集中暖房はどんな家にもある。家の中すみずみまで一定の温度で暖かいので家の中に居る限り「寒い」という言葉を発することがない。それと同じで、米国で半端ない暑さの州にある家は、集中冷房があるのが普通で、家の中に居る限り「暑い」という言葉を発する必要がない。

 

フロリダの夏は酷暑なので私はこの夏ほとんど家の中から出なかった。仕事は家でオンラインでできるので問題ない。外出するときも車で移動なのであまり外を歩くことがない。駐車場から建物の中に入るまで歩くだけだ。散歩しようと思ったら早朝か日が暮れて気温が低い時でないと夏は日差しが強すぎて危険。

 

フロリダの住居は平屋が多い。2階建ての家もあるが、集中冷房では冷気は下に行くので1階と2階を同時に快適温度にするのが難しく、2階を快適温度にすると1階は寒くなりすぎると人が言っていた。近年の新しい2階建の家は階ごとに別々の設備があって同時に快適温度に出来るようになっているとも聞く。

 

そしてフロリダの家には、米国北東部の郊外の一戸建の家ではどこにでもある地下室がない。地下室は1階全体の面積と同じだけあるのでとても広くて、半分を物置に、半分を子供のプレイルームにしていたりする家が多い。家によっては地下に寝室・キッチン・リビング・バスルームを作って一つのアパートとして賃貸住宅にして家賃を稼ぐ人もいる。フロリダは湿地帯が多く、地下室に向かないので家に地下室はないのだろうと思う。

 

それから驚いたことに、フロリダの家にはガスラインが来ていない地域がほとんどで、オール電化が普通。キッチンも電気式なのでガスの火が見えず、慣れるまで調理が難しかった。オール電化で育った子供が大人になってガス式のキッチンになったら危ないのではないかなと思った。なにしろガスの火を見たことも匂い嗅いだこともない人が大丈夫なのか?しかしそれで社会問題になってはいないから大丈夫なのだろう。オール電化で集中冷房を毎日24時間つけっぱなしで、どれだけ電気代がかかるのだろうとおそるおそる請求書を見ると、ひと月たったの150ドル程度で安くてびっくり。

 

フロリダでは冬は暖かく、このあたりは寒くても摂氏18度くらいにしかならない。しかし、ハワイにもセントラル・ヒーティングはあるようにフロリダにもセントラル・ヒーティングはどこの家にもある。私は冬暖かい室内にもう慣れきっているので、冬は家の中を摂氏24度くらいにするつもりだ。ガスやオイル式の集中暖房はそれほどでもないけど電気式の集中暖房は高いよとニューヨークの友人が言っていたが、ここは電気しかないし、そんなに使わなくても大丈夫と思うので電気代もなんとかなりそうだ。

 

フロリダは毎日のように雷が鳴る。そして短時間の強い雨が降る。あまりに強いどしゃ降りの雨が降るので車を洗車にださなくてもきれいになる。芝生はよく伸びる。芝刈りは自分でしなくても、コミュニティで雇っている専門の人が芝生や植え込みの手入れをしてくれるのでなにもしなくてよい。ゴミ出しも、リサイクルのビン、缶、紙などを分けるだけで毎日いつでもゴミ捨て場に出せるので便利。

 

フロリダの家の庭にはたいていトカゲがいて、時々トカゲが家の中に入って来る。これは困る。集合住宅の2階以上ならそんなこともないのだろうが、一階ならどこからか入って来る。家じゅう網戸になっているのにほんとにどこから入って来るのと思う。トカゲといっても尻尾がクルリと巻いた緑っぽい色のトカゲで愛嬌がある感じだが、やはりいやだ。

 

フロリダのローカルなちらし広告を見ていると、ゴルフカートが売られていて、ゴルフカートなんて個人が買うものか?と思ったが、そこはフロリダ、コミュニティ内を移動するのに、車を出すまでもないならゴルフカートで移動するのだ。コミュニティ内は歩けなくもないがたしかに端から端まで歩くには30分くらいかかるので、歩かない人も多い。

 

コミュニティというのは、周囲に柵があって特定の位置にゲートがあり、そこにセキュリティの係員がいて、人の出入りをチェックするタイプのコミュニティと、周囲に柵はあるが特にゲートは設けていないタイプがある。フロリダはコミュニティ形式になっている住宅地が多く、それぞれのコミュニティは不動産価格が高いところも低いところもあり、社会階層がコミュニティによってそれぞれ分かれる。55歳以上の引退者に限定したコミュニティももちろんいろいろあって、豪華な家が立ち並ぶコミュニティも、安っぽいコミュニティもある。ニューヨークでもそうだったが、米国は一般的にどこに住んでいるか住所が大事な国で、住所で社会階層がはっきり分かれる国だと思う。