リレーエッセー
日野川河畔の朝
森 尚美
1シーズン前の冬が来る十一月の初めのことです。数年前から、鳥取県の鳥であるオシドリを観てみたい、と言っていた友人の言葉をやっと実現することができました。
オシドリ観察ができるのは、十一月から三月の間、そして、餌を食べる朝か夕方の時間ということを調べていました。冬は道路の凍結や雪が心配なので、十一月に入ったらすぐに出掛けることにしました。
コーラスのお仲間三人連れで、夜のコーラス練習の翌日、早朝五時半、真っ暗な中を出発しました。琴浦から車を西に走らせ、米子自動車道へ乗ります。しばらく走っていると、ようやく辺りが見えるようになりました。
インターチェンジを下りるころ、朝日を浴びた山々の中腹に、白い雲がかかり、帯状になってたなびくさまは、幻想的で水墨画のようです。すると、日野の町並みが眼下に見えて来、背後の山の深い蒼、中腹の白雲、雲の間の山肌に紅葉の赤も見え、色彩の妙に感動。すがすがしい思いです。
夜明けの七時ごろ、日野川の鉄橋下に観察小屋を捜し当てました。駐車場では、おじさんがちょうどバケツにどんぐりの餌を準備されるところです。
川辺へ向かって歩いて行くと、います。います。・・・・・たくさんの鴛鴦(オシドリ)が、押し合いへし合い、ひしめき合っています。
三人とも、本物を見るのは初めてです。写真でしか今まで見たことが無いので、私はてっきり、もっといかつい感じの鳥だと思っていました。ところが、なんと小ちゃく、ころころと可愛い鳥なのでしょう!
オシドリを観ることが念願だった敬愛する友人も、私たちも「可愛い。可愛い。」の連発です。その友人は「どんぐりみたい。ぎゅっと抱きしめたいわぁ。」と、感動しきり。
オシドリは敏感ですぐに飛び立ってしまうので、小屋の穴から望遠鏡がのぞかないよう気を付けて観察です。
おじさんが餌をやると、しきりに潜っては、水面に出て来ます。よく観察していると、つがいもそこここに見つけることができます。
オシドリを堪能し、私たちが川辺を後にするころには、鳥たちも飛んで行きました。
おじさんが教えてくれました。三月の飛び発って行く時期には求愛のため、雄の羽の緑色が鮮やかになると。
今度はぜひ、その緑を見たいものだと考えているところです。
(ザ・ラニアルコーラス)