海外こぼれ話 181 (20167月)      

 

セミナーの事前準備

 

 定期的に通っているトレーラーメーカ―に訪問した。この工場は、事前にセミナーの講義内容のリクエストがあり、2から4週間かけて準備をしている。それは今までの講義にないことが多く、事前準備しないと彼らの期待に満足そして感動を得られないからである。

講義を聴いてモチベーションが上がり、すぐに改善して成果を出せるように仕向けることだ。毎回はかなりの高いハードルになるが、ここで講義ができれば他の企業でも活用できるので、ある意味新しい挑戦をさせてもらっている。

 彼らはいつもビデオ録画し、その講義の内容をすべて記述して共有化している。この他にもこの方式を採用しているところもある。いずれも事務局がしっかりしているからである。後に残るのでプレッシャーはあるが、役者と一緒だと思っているので撮られてなんぼと割り切っている。

ドイツのコンサル会社のホームページにこの工場で行った講義の一部を、ビデオで提供してもらった映像を23分間観られるようにした。いつもこのような舞台役者のように語りかけているので、普段の私の講義スタイルを覗いて戴けたら幸いです。YouTubeでは、「Vortrag Matsuda」を入力すると視聴することができます。私は日本語ですから内容は聞き取れます。

 今回は、トヨタ方式の「人と機械の関わり」と「動機付け」の2つになった。前者はいつも話をしていることにさらに深く突っ込んで欲しいというもので、人と機械の棲み分けはどうした良いのか、本質を見極めることの大切さ、最近ドイツで盛んに取組まれている第4次産業革命との関係なども含めての講義内容を準備した。

後者の「動機付け」もいつも話には持ち出しているが、改めて編集し直した。人は何のために生きているか、見た目の重要性、相手の良いところを観察して書き出す訓練をする、意識を高めるためにメモを取る、いつもレベルアップさせるためにらせん状に向上する(スパイラルアップ)意識を持つ、マネジメントサイクルを回すなどを網羅して、原稿を作り直した。講義は2回に分けて行われ、さらにそれに基づいて現場での観察、問題点の発見などが行われた。参加したメンバーは、水を得た魚のようにイキイキとして活動に取組んだ。

 

通訳のMさんが翻訳本を出した

 

通訳のMさんが、日本語のトヨタに関する本を翻訳して出版した。「トヨタ式最強の経営」:日本経済新聞社刊で、私自身も以前から何度も読み直し勉強している。この中の事例に「金太郎飴」がトヨタの人たちのことを示唆している。どこを切っても同じ金太郎の顔が出てくるというもので、ドイツ人には全く想像もできない飴だ。

それを紹介するために、この金太郎飴の製造元に直接問合せして、金太郎飴ができるまでのビデオ映像も観ることができるように交渉したら快諾があった。「金太郎飴本舗」という東京浅草にあるメーカーで、アマゾンなどでは注文できず直接発注するようになっている。15分くらいのビデオで、これもYouTubeに掲載されている。

色のついた飴の基を、アゴや唇などを重ねていくと、直径35cm、長さ70cm、重量はなんと約50Kgもなるという。それを熱いうちに手で伸ばしていくが時間との勝負だ。商品になるのは直径2cmであり、70cmの長さがなんと250mになり、面切りの飴玉に換算するとなんと7000粒になるという。その製作過程を観ているとまるで芸術品のように思える。

この本の紹介に、この金太郎飴も付けて一部紹介しているが、この工場の担当者の女性に渡したら最初は石鹸と思ったという。でも飴玉と聞いて口に入れると甘かったので納得したという。見たことがなければ納得もできないので、まずはやってみる(行動してみる)ことだ。面白いことにこの好奇心があるのは、どの国でも女性のようである。

 

難民問題はまだ続いている

 

 ミュンスター市役所の現場改善が今年で3年目となり、この3年間の評価が良ければ次年度も継続するとの示唆があった。でも昨年来の難民の問題で、市当局は大混乱のようだ。普段半年以上かかる手続きも、政府からの圧力?でわずかその日の内に完了することもあるという。その反動で、他の業務に影響は出てくるのは当然の結果だと思われる。

今年になってから難民の流入は、入口における歯止めがかかり激減しているようだ。でも既に入ってきている人の対応は、想像以上に大変なようだ。女性は自転車にも乗れる人がいないようで、生活に不便ということで自転車の乗り方を教育したそうだ。でも交通ルールまでは教えなかったので、大問題になったという。想像はできるが、まさか普通に生活していると「赤信号は止まれ!」までは教えることもないと誰も想像できない。それほど生活程度が良くない人が、100万人も流入すれば受け入れる側も周囲の混乱は理解できる。

 ある企業で聞いた話だが、娘がマンハイム大学に通ってアパートに住んでいるという。難民が押し寄せたので、「国が今より高い家賃を彼らのために支払うので出ていけ!」と宣告されたと嘆いていた。本末転倒というか理不尽な話だ。

ドイツの1つ星や2つ星のホテルのオーナーは、難民のお蔭で高い家賃が満額で入ってくるので、大金持ちになっている。その難民の多くは、嘘の申告をしており、1人で2人分の手当てをもらっていることも発覚し出した。住む所が与えられ、お小遣いも普通の低所得者よりも多くもらうことができる。今のところ仕事がないから、彼らは酒を飲みそして犯罪に走るのは当然だ。

欧州は現在難民の偽装した人たちも加わり犯罪が激増しているので、用心を心掛けたい。ドイツはかなり安全であるが、日本の犯罪数の5倍以上なので用心したい。メルケル首相の取った難民の政策が大きな批判となっており、彼女も最近は癌の末期症状のようにヒステリーなことを言うようなった。日本では紹介されなかったが、ドイツ地方選挙でもその批判の結果が出ている。

 

市役所のセミナー

 

 ミュンスター市役所のセミナーも結構厳しい要求がある。幹部は何度も参加するので、何度も同じ講義はつまらないというのだ(本当は理解していなくわかったつもりでいる)。毎回レベルアップか同じことを説明するなら、その必要性を示してからにして欲しいリクエストが出るようになった。また勉強する機会を得ることになる。プロとしては、このような要求に俄然と燃えてくる。

毎回新しいことの気付きが提供できるように、説明方法や資料も時間のある限り何度も添削して仕上げていく。その過程に多くの気付きやヒントが見えてくるのも楽しみであり、講義のあとの評価も楽しみである。

飛行機が飛ばないで列車でベルリンまで移動した余剰時間で、数千枚の改善事例写真が整理できたので、この市役所のための改善事例集を再編集することが簡単にできるようになったのも一つの成果になった。

彼らに対しての講義には、今日は何を講義するのか明日は何かを事前に説明して、その関連性も大枠で話をしておくことが納得しやすいことが見えてきた。それをフリップチャートに書き出し、指を指して注目させるようにした。またいきなりの説明ではなく、背景も事例を交えることもヒントである。そしてさらにメモを取ることも指示することで頭に入りやすくなる。

今回の講義を局長が聴くのは4回目といっていたが、講義が終わったらすぐに私のところにやってきて、握手を求めてこられた。非常に内容が理解でき、皆さんにも納得できるものであったと、最大限のお褒めの言葉があった。あとはワークショップのメンバーが成果を上げていくことだ。

まだまだメンバーだけでなく、中間管理職に多くの反対者がいるのは容易に想像できる。なにも変えたくなくそのまま定年退職したいと願う筆頭の職業が公務員であり、どの国も一緒なのは当然だ。だからこそまたやりがいがあり、色々とこちらも実験を試みたいものである。

それにしてもこの局長は、やる気のある人だ。企業もトップの熱意次第で企業体質が変わるというが、まさにその通りだ。私はその割合が8割、従業員が1割、コンサルタントの力が1割の配分だと経験上思っている。

 

15年ぶりの工場見学

 

 南ドイツのある企業から工場見学の承諾を得た。この工場はドイツでも有名な企業で、日本にも輸出している製品がある。普通この工場を見学するには、無料ではなく一人2000ユーロも請求されるほどの工場である。15年前にある人に連れ添って工場見学をしたことがあり、それ以来の訪問であり非常に楽しみにしていた。今回は特別に無料にしてくれた。

約束の時間は午後からなので、ランチを食べてから行こうと以前行ったことのあるレストランを探した。店はあったが、残念ながら当日は休みだった。別な店を探したら、なんとその店は、通訳のMさんが以前行った店であった。その店独特のソーセージと野菜を頼んだが、とても美味しかった。

以前工場のあった場所には、当時はレンガの建物であり10年前に全面的に建て替えられた大きく綺麗な建屋に変わっていた。周囲は田舎の田園風景はそのままだった。約束の時間に合わせて玄関にて、担当のGさんを呼び出してもらう。工場実習に来ている大学生が、代わりに迎えに来てくれた。会議室まで移動するが、立派になった建物に関心が移る。でも肝心なのは中身だ。

工場案内をしてくれるGさんが登場された。穏やかな人ですぐに友達になれそうな人だ。まず自己紹介をするが、私の写真とイラスト付きの名刺に皆ニコッと微笑む。いつもの通りに「名刺に裏表がありますが、裏表のない人間です」と言葉を添えるさらに顔が崩れる。

Gさんの自己紹介があったが、なんと1998年からトヨタ方式に興味を持っており、この工場の副工場長の立場にあるという。早速工場見学のため注意項目のレクチャーから始まる。工場は新しくなったが、地下室の秘密の抜け道は当時のまま活用されていた。

 出荷場から入荷場まで後ろからの工場見学は、コンサルタントでないとやらない方式であり、Gさんもすぐに対応された。オープン型のラインは相変わらずで、何本のラインが整列して立ち作業で生産をしていた。ラインに部品を供給する水すまし作業もできており、その呼び出しのアンドンランプも設置されていた。

 だが標準作業に関するテキストが見当たらない、管理板はあるがルールが見当たらない、作業姿勢が悪いままでの作業になっているなどの気付き項目が発見できるように目が慣れていった。いても立ってもおれなくなり、つい気付き項目を紹介することになってしまった。

工場見学なのに、ついコンサル病が出てしまった。でも彼もその機関銃のような指摘に大いに賛成をしてもらった。自分のところのコンサルタントを育成しているが、やはり外部の眼が必要なことも理解されたようだ。予定時間を大幅にオーバーしてしまったが、彼らには厳しい指摘になったようだ。丁寧なお礼と挨拶でそれがわかった。

 

デュッセルドルフのマラソン大会

 

デュッセルドルフ市主催のマラソン大会が開催されるというので、日曜日の午後から観戦するために旧市街に出掛けた。アパートのすぐ隣の道も33kmの距離表示が出ていた。この街の特徴として、新旧の建物を見ながらそして何よりもコースの高低差が少なく走りやすい。

制限時間が6時間なので、そのバラツキは多く、色々なランクに分けて思い思いにランナーは走っている。着ぐるみを着た人も走っている。中学生のような女子も走っている。4月月末であるが、途中雨も降り出すと急に寒くなる。

観戦しながらゴールのライン川沿いの旧市街に行くと、完走した人に配布されるメダルをもらっていた。良くみるとゼッケン番号の色とメダル種類が違うようだ。タイプ別に区分してあるのだろう。参加料は、約100ユーロだ。

途中の給水場は、無数の紙コップが転がっている。参加者14千人、世界76か国からの参加があり、見ると色々な顔が読み取れる。この紙コップは、1人あたり10個必要だとミュンスター市役所から聞いていたので、ざっと14万個のゴミだ。ゴール近くには、数多くの観客も集まって人垣になって前に進めないほどだ。ゴール近くの公園には、十数台の救急車が待機していた。

寒くなってきたこともあり、今朝洗濯しておいたYシャツのアイロン掛けがあったので、急いでアパートに帰ることにした。途中標識や机などを回収する車が既に片付けを行っていた。これを組織するのは大変事だ。

アパートに帰って1時間もすると、空が真っ暗になりアラレと雪が降り出した。10分ほどであったが、今度は晴れ間になりまた雨が降ってきた。これがドイツ特有の4月の天気だ。毎年このような日が何日かあり、それが終わると本格的な夏になる。日本には、女心と秋の空という言葉がある。ドイツでは、女心と4月の空と表現するという。

 

ホームパーティーで料理の腕を振るう

 

 デュッセルドルフの鳥取県人会の仲間であるAさんの誕生日が近くになったので、内緒でお祝いすることにした。いつも私の手作りの料理で女性の皆さんが会話を添えて、ワインと一緒に楽しむ会である。一人よりも女性がいるとアパートも賑やかになる。何よりも料理の腕が上がるのが嬉しい。

 Eさんがサラダを用意するということだったが、既にアボガドと洋梨は買っておいたので、そのサラダを作ることにした。アボガドが柔らかく熟すのに時間が掛かるからだ。付き合わせは、トマトやリンゴも試したが、食感が良いのは洋梨だ。Aさんの好きなカボチャの南蛮煮、Kさんの好きな筑前煮は、筍の代わりに初めて使う中国産のサトイモを代用し、あとは八角を入れる。

それに人参のシリシリ、前回ちょっと不評だったエビチリをリベンジする。冷凍した海老を数えたら35尾もあった。解凍してすべて殻を外し、尾っぽまで綺麗に殻をはがす。8割以上は綺麗に取れた。また背ワタも丁寧に爪楊枝で除去したが、なんと40分も掛かってしまった。レタスは手でちぎって水に漬ける。

筑前煮に使う鶏肉の骨の周りについた肉片を食べるために、醤油に蜂蜜を混ぜてレンジでチンする。これは前日から漬けておく。鶏には骨まで完全に成仏して戴く。今回JAL機内で、教わったチーズを作った。モッツアレラチーズの醤油漬けだ。チーズを一口大に切って、醤油、昆布、ニンニク、鰹節、生姜を混ぜたタレの中に、3日間ほど漬けておく。これが赤ワインに合うので、事前に作ってみたが美味い。この醤油ダレは、帰国する時に余ってしまうニンニクと生姜を捨てないで、何か流用できないかと考えたものだ。

さらに今回持参した地元赤碕産の板ワカメ(御来屋産は塩辛いので、食べられない)を、前菜のツマミとした。Kさんは、地元に帰った時に買うのはこの御来屋産で、一年前の物ものがまだ残っているという。Aさんを待っている間、赤碕産をビールと一緒に食べ始めると、止められなくなるほどだと絶賛していた。段々無口になってきたが、美味しいとそうなってしまう。ワインは4人で3本用意し、すべてスペインワインにて準備した。これらのメニューを書いて準備を始める。そのメニューはあとで、Aさんのささやかな記念になった。

Aさんがソフトボールの練習が長引き、遅れて来た。「誕生日おめでとう!」と皆さんでお祝いするとAさんはびっくり、サプライズは成功した。そこからワインをグラスに注ぎ、乾杯とともに料理がテーブルに登場していく。

人参のシリシリは、すぐに28cmのフライパン一杯だったのが完食売り切れ。エビチリも大好評で、19尾の海老も売り切れてしまった。見事にリベンジ成功した。さらに好評のデザートは、今回は「かんてんぱぱ」製のプリンを始めて作った。デザートは女性は別腹と言って、皆好きなようだ。8人前用意したが、完食だった。Aさんの素敵な誕生日祝いとなったようだった。