リレーエッセー

今月の執筆者 中野 隆

今年も「中野隆尺八コンサート」に来ていただきありがとうございます。 演奏会でいつも思うのですが、昨年の自分より少しでも進歩していたら良いなと思っています。 1日1歩、3日で3歩、3歩進んで2歩下がるという歌がりますが、ジグザグであっても前に進んで行けたらと思っています。

コンサート会場でも説明しましたが、今年も尺八を3本使用しました。A管(低いラの音が基準音)、D管(レ)、E管(ミ)です。 代表的な長さの尺八はD管で、実寸が1尺8寸(54.5p)のために総称して尺八と言っています。 尺八吹きは楽器の事を「尺八」と言ったり、「竹」と言ったりしますが、笛とはあまり言いません。 笛と言う場合は横笛を指す場合が多いです。

長さの違う尺八を使う理由は曲によって最低音が違うために使い分けているという事と、もう一つ大きな理由は同じ曲でも低い音で吹く場合と高い音で吹く場合では曲の雰囲気が違うために吹き分けているという事があります。 高い音だと明るく感じ、低い音だと深みを感じます。そのためか精神的な深みを求める虚無僧の曲では長い尺八を使う事が多くなりました。

 演奏会では最後の曲に「鹿の遠音」を吹きました。 その後、皆さんが優しいのでアンコールの曲が有るのですが、実はアンコール曲はどうしようか迷っていたのです。結局「鶴の巣籠り」を吹きました。「鹿の遠音」と「鶴の巣籠り」は同レベルの曲のために帰ってから、妹に「本番で使うような曲をアンコール曲にはどうかな」と、言われてしまいました。次回は、お客様に気持ちよく帰っていただけるような曲を選定したいと思っています。

 最近、時間が無いなと思っています。稽古する時間が取れないという事も有りますが、あと何時間、何百時間、何千時間吹けるだろうと思っています。私が尺八仲間に「75歳くらいまで元気に吹きたいな」と言ったところ、仲間の1人が「自分は80歳前だがまだまだ大丈夫、吹けますよ」と言われました。それで、75歳ではなく急遽85歳まで元気に吹くことに決めました。 そのためには健康第一です。