海外こぼれ話 182 (20168月)      

 

新規客先の訪問が決まる

 

 180号でも取り上げた新規の企業に、コンサルすることが決まった。この企業は、以前に何度もコンサルタントが目まぐるしく変わったことで、組合側が会社側に非常に不信感をもっていた。2年ごとにコンサルタントが来て、今までのやり方を半ば強制的に変えていくので、社員は堪ったものではない気持ちはよく理解できる。その中で新しく私が入ることは、最初から反発を予想していたので事前の準備を入念に行ってきた。

2回の事前の訪問による説明と質疑応答のやり取りで、組合側も随分歩み寄ってこられた。誠心誠意のアプローチがようやく実を結んだようだ。年間の訪問日程も提案通りの案を採用していただいた。この契約が取れた最大の要因は、いつも取り上げているトレーラー会社からの助言や交流会でのやり取りのお蔭だ。私のコンサルタントスタイルと今までの実績などが認められたようだ。コンサルの世界は、本当に口コミによる広がりがとても重要だ。

訪問が決まってからも事前に、4者会議の電話会議も行って微調整も行ってきた。日程表も事前に、組合の合意を得たものを了解するという提出するという細かな配慮を持って対応していると聞いて、なるほどと感心したほどだ。3日間のセミナーと4つのテーマも再確認して、当日を迎えることになった。

朝一のセミナーには、講義だけを聴くというメンバーも参加して、50人になっていた。初めての企業で、これだけ多くの聴衆が集まるのはごくまれだ。改善活動のメンバーは25人なので、それ以外にマネージャークラスや組合幹部も集まっていたことになり、感心の深さが読み取れる。

最初の掴みでセミナーの印象が一気に変わる。それは、挨拶の声の大きさと人に合わせるという意識が重要になる。メラビアンの法則と言われる第一印象を有効利用する。ちょっとした練習をした後で、「オハヨウ!」とドイツ人に大きな声で挨拶をしもらう。「オハヨウ!」と期待以上の挨拶ができ、この一瞬で今回も上手くいくぞと確信し、すぐに「Sehr Gut(非常に良い)」カードを出す。

そこから自己紹介をユーモアや失敗談を交え、さらにトヨタ方式の中身を物語風に解説していく。このやり方は、失敗から学んだ知恵あるやり方だ。一方的にならないように、時に双方向のやり取りやクイズも取り入れて、セミナー自体の緩急をつけて90分で、彼らの動機付けを掛けていく。

 

いよいよ改善活動開始

 

ここの工場は馬鹿でかい。取り扱う製品も大型であり、大型プレス機も何台も稼働しているから、工場内は耳栓が必要だ。改善すべきことは、山のようにある。彼らは何年も現場を見続けているので、見えなくなってしまっている。そこでそのことを気づかせるヒントを事前に与えておく。そして現場を観察した時に、自ら発見できるように仕向ける。

期待通りの成果が出てきた。あるチームが、今まで毎日発生していた不良をゼロにすることができた。この製品は、新商品なので一切手直し修理ができないとメーカーから命令が出ているので、廃棄もかなりあった。その不良がゼロになったのだから、工場長はもろ手を挙げて大喜びだ。

工場長自らチームに入り、背広姿でその現場の清掃作業を率先してやっていた。それを多くの社員も見ていた。そしてそのチームの成果も素晴らしいものなったので、この職場を「不良ゼロ」を合言葉に、他の工程も取組むことにした。多くの工場でも見られたことであるが、トップ自ら手を汚すことは大きなインパクトを持って社員に伝わる。しかし一時的なものは見破られるので、「今後も継続してやってください」と伝え工場長から快諾してもらった。

それをきっかけに他の工程でも不良の原因から真因を追究し、暫定策さらに恒久策へと改善していく。今回で勢いがつき始めた。小さなことでも、自らの力でやると自信になる。このチームに特に指示をしたのは、徹底した清掃だった。清掃し綺麗にし、不具合発見、そして再発防止、さらに検証することだ。

ドイツ人は、いったんやり始めると徹底してやる気質がある。それにさらに動機付けするのが、最終プレゼンの時だ。現場発表をやってもらい、すぐに質疑応答を行い、そして私の感想を述べる。必ずユーモアを交え、事実に基づき彼らの期待していなかった努力した点や改善点を皆さんにも紹介していく。

改善活動に参加できなかった社員もいるので、どんなことをやったのか、どんな効果があったのか、これからどうなるのかという情報の共有化が生まれる。以前のコンサルは、ほとんど現場でそのようなことを仕掛けていなかったようだ。改善活動を現場に支持されるには、情報の共有化が大切である。

他のチームも同様に今までくすぶっていたモヤモヤが一気に晴れた感じで、熱心に取り組み期待以上の成果を出してくれた。動機付けやそのやり方次第で、相当変わるものだと改めて実感した。これから毎月訪問することも決まり、次回のテーマの選定もその最終日に合意を取るようにした。さらに宿題も出して、次回に報告する仕組みも導入した。これで途中止めではなく完了するまで取り組み、確実に経営成果に結びつけることを意識してもらうようにした。

 

レストラン探しの楽しみ

 

 

新しい街の訪問は、レストラン探しの楽しみも待っている。まずはイタリアンの店から探し始める。通訳のMさんからのアドバイスで、スマホから探す方法の提案を採用した。口コミや星の数も検索できるというので、早速候補を上げてもらった。ホテルから歩いて10分のところだが、少し蔭になってわかりづらい場所だったが、スマホの地図案内のお蔭で発見することができた。

店の名は、「テラ・ヌオーヴァ」というイタリアンだ。天気が良いから、店の外でも食事をしている人もいるので具体的に料理も見える。オープンの白ワインとアンティパスタ(前菜の盛り合わせ)とラザニアを頼んだ。出てきた料理は評判通りに美味しく、特にラザニアの味は今まで最高の味だった。

別な日には、ホテルのある駅前ではなく駅裏にも足を伸ばした。それは駅の地下道をくぐればよい。まずメキシコ料理、さらにステーキ屋、その次は中華のバイキング料理などが棟続きにあった。まず中華に入ると、東南アジア出身と思われるウエイトレスがやってきた。箸が必要だというと、持ってきてはじ袋を器用に折り紙のようにして、箸置きを作る。ドイツ人はかなり参ってしまうサービスだ。私もこのようなサービスを受けるのも初めてだ。

テーブルにあるプレートを持って中華炒めの材料を自分で取り厨房の受付に出すと、仕上がるとウエイトレスが持ってくる仕組みになっていた。出来上がった中華やアジア料理、さらには寿司まであり、バイキング方式で好きに取ればよい。食べ放題で15ユーロは、断然お得感があり味もまずまずだった。

飲み物だけは別料金になっていたが、次回からもまた来ても良い店のリストに入れた。ドイツでは、食べ放題の店は食べられ過ぎで赤字そして倒産というパターンが非常に多い。でも中華やアジア料理ならばコスト的にも賄えそうだ。

別の日には、手前のメキシコ料理の店に行った。メキシコ料理は、チェコに行った時以来の体験だ。久しぶりにタコ料理が出る。タコと言っても蛸ではなく、日本の菓子の「とんがりコーン」を平のまま小皿の大きさになったスナック菓子のようなものだ。それにディップというタレを付けて食べる料理だ。

サラダを頼んだら、手のひら大のタコの上に富士山のようにてんこ盛りにしたサラダが出てきた。なんと4ユーロもしない値段だ。ビールとともに食べる。メインの豚とチキンのフライにジャガイモのフライがセットになった料理は、直径30cmの大皿にのって出てきた。見た瞬間にしまったと思ったが、食べきれない量だ。2回目に来た時は、サッカーの欧州カップの最中で、しかもドイツと北アイルランドとの試合があり、店の内外に200人ほどがビールなどを片手に観戦していた。行ってすぐにドイツが1点入れたので、大騒ぎになった。ビールも美味い。ドイツが勝った翌日の改善活動は、必ず良い結果が出ることになっているからだ。

 

日本企業の関連企業もあった

 

この街には、125年前に創業されたドイツでは有名な企業があり、企業城下町になっている。私が訪問しているのは、数年前に買収された会社なので、タクシーに乗って行き先を告げても、昔の名前であの会社かという程度だ。

コンサルに行っている某企業の改善担当が、この街の出身者だったことを思い出した。今度訪問しに行くといったら、是非この街のアルゼンチンのステーキハウスに行けと推薦してくれた。さらに同じ会社にいた同僚が、ヘッドハンティングされて、その街にいるから会ってこいと紹介してくれた。

早速その同僚だったTさんに連絡を取った。彼も私たちと会うことを非常に楽しみにしてくれ、待ち合わせをした。彼は和食の大ファンであり、この街の和食の店を探したら、「かど寿司(Kado Sushi)」という寿司屋が検索に出てきた。他には、「美味しい寿司(Oishii sushi)」という店もあったが、名前から怪しい感じがしたので、街角にある「かど寿司」の店にした。

Tさんは、かれこれ4年間一緒に改善活動に積極的に参加してくれた。しかも彼は現場の人ではなく、営業マンだった。間接部門のテーマや在庫削減など何度も参加して大きな成果を出してくれていた。ヘッドハンティングで的に当たったと笑っていた。彼の経歴を聴く機会に恵まれた。

Tさんは南ドイツ出身で、大学は英国で、卒業後某世界企業に就職してから、米国に1年、インドにも1年、上海に1年、韓国に2年いて、4年前に以前の会社に移ったという。そこでTさんは、自分の仕事だけではなく、横のコミュニケーションを活性化しようと奮起したお蔭で、営業課長までなったという。

新しい会社は、日本が買収した会社でとても有名な企業であるが、今回は企業名を伏せておく。Tさんは、この会社の社長とも既に何度か直接話もしたことがあり、とても切れる人物だという。Tさんは、いきなり某国の営業部長に抜擢されるというので、またビックリした。Tさんの年を訊ねたら、何と32歳だというので、またまたビックリした。まだ独身なので何でもできますと言っていた。ハンティングする人の細かい情報を、良く掴んで推薦するヘッドハンティング会社の調査能力の凄さを知った。

この店には頻繁に女性が多く来店していたが、店内にはあまり人が目につかなかったら、何と店の裏の庭に何十人も客がいた。流行っていることがわかった。話が盛り上がってしまい、予定時間をオーバーして3時間も話し込んでしまった。日本酒の月桂冠などが置いてあったが、私の大好きな銘柄のビールもあったので、また食べにくる店のリストに入れた。

 

ドイツ鉄道にようこそ

 

列車の移動はドイツ鉄道だが、いつまで経っても正確な時間に来ない。現在の定時時間運行は78%というが、インチキなデータだと思う。目標は80%であるが、トップ自ら78%でも十分満足だと言ってしまった。

さらに5分以下の遅刻は、遅延とは認めないとまで言い出す始末だ。完全に狂っているとしか言いようがないほど体質が腐っている。この前も20分遅れで出発したが、結局たどり着いたら30分も遅れてしまった。日本の時間遵守は、とても素晴らしく1列車あたりの遅延時間は、平均数十秒以内だという。

駅の改札口が以前は、ファーストクラス用の特別なレーンがあり、すぐに切符を買うことができた。最近各駅構内を改装し始めて、そのレーンが廃止になった。他の人と同じように、銀行や郵便局の順番待ちのカードを手に待っていなければならなくなった。平等ではあるが、公平ではないと思う。特別に高い会費を払っているので、それなりのメリットがなくなったのは残念だ。

少し益しになったことは、列車内のインターネットが便利になったことだ。無料化になり、以前のように途中で通信できないということがなくなった。また2ヵ月ごとにファーストクラスのカードの人には、片道のチケットがただになる制度も導入した。でも申告手続きが難しく、まだ使ったことはない。

 

日本デーは大賑わい

 

少し前にことですが、521日の土曜日に開催された日本デーを紹介したいと思います。前日までは雨だったが、この日だけ晴れた特別な日になった。今年のドイツは、日本の梅雨のように雨が異常に多い。

今年で15回目になり、日本文化の紹介、書道、着物、着付け、邦楽演奏、日本人による器楽や合唱など、3カ所に設置された舞台で披露される。デュッセルドルフに進出している企業の紹介、千葉県は県単独での紹介など約90のブースには多くの人が集まる。なんと今年は人が多いことを感じたが、あとで報道によると、この日に集まった人は75万人だったという。デュッセルドルフの人口が60万人なのでそれ以上の人が集まった。だから人に押し流されるようにライン川まで来てしまった。

コスプレ隊は、通常の土曜や日曜にも若者が集まる。でもこの日は中央駅から多くの変装した若者がやってきた。セーラームーン、日本のアニメのキャラに変身し、撮影にも気軽に応じてくれる。100s以上の堂々とした体格の女性も、ミニスカートなどで着飾っている。堂々となりきってしまうと逆に圧倒されてしまう。このコスプレのファンッションショーも舞台で開催された。

タコ焼きなど、デュッセルドルフ駅から旧市街の通りに面する店の前には各店で仕立てた露店が設置される。申請したものやテントの数などの確認を、警察や保健所の査察があり、店にあるものを提供するのはOKで、普段店にないかき氷などは違反になるという。違反した場合は、罰金を科せられる。

でも罰金もそうたいしたことはなく、知人の店では毎年適当に色々なものを企画して売っているという。夜23時からの花火は恒例になっており、最大のイベントのだ。今年は過去最高の出来栄えであったと思う。最後の花火のスターマインは超豪華であり、金色に見えた花火は素晴らしいものだった。

これをアパートのベランダでワインをチビチビとやりながらの鑑賞は、ちょっと優越感を持ちたくなる。日本人が資金提供するので、豪華になっているようだ。あとで聞いたら知人たちは、その真下で花火を見ていたそうだ。帰り道は大変だったというが、花火の迫力の方がそれを上回っていたそうだ。

 

ホームパーティーで腕を振るう

 

アパートでホームパーティーを、毎月のように実施することが楽しみになっている。誰彼の誕生日などをきっかけにもする。料理のメニューを考え、買い出し、仕込み、そして料理、そしてワインを飲み、若い女性との会話も楽しむのが、海外での英気を養う原動力の一つになった。今まで6品、8品だったが、10品作ることも挑戦した。メニューは1週間前から検討し始め、前日から準備、プレゼントなどのサプライズを組み込む。最近はデザートまで作ることができる。ただし裏ワザを使って作るが、その素が欲しいとのリクエストもある。

メニューを書き出して、材料や料理の調整作業をしていく。女性ならではのコメントが励みになり、気づきもある。冷凍ものの海老(ドイツは生の海老は原則としてない)は殻つきのものを使いなさい、銘柄はどれが良いと写真で指示を受ける。豚肉を多く使うのが、ダメということが今回判明した。2人が勤めていた料理店では、社員用のまかない料理がいつも豚肉を使っていたようで、豚はもうこりごりだったことがわかった。

鶏肉料理を検討する時、骨ごと買うと鶏の骨格が見えてくる。そして捌くこともまた頭を使い、部位によって料理を変えたりもする。骨の周りは、蜂蜜と醤油に漬けて、レンジでチンしたら骨までしゃぶることもできる。材料も丸ごと使え、そして鶏も完全に成仏?できる。

鳥取産の材料も持ってくることも、サプライズの1つでもある。赤碕産の板ワカメ、鳥取産の甘酢ラッキョ、倉吉の金山寺味噌、赤碕や関金の干しシイタケなどである。今回はSさんが、季節のアスパラガスの料理を2品も作ってくれた。合計12品になり、レストランのフルコース並みの大宴会になった。