第99回
「米国現地の
日本語新聞・日本語テレビ」
日本でもローカルな無料の新聞(フリーペーパー)があるだろう。米国も同じだ。もちろん米国人の為のものが主流だが、日本人が多い米国のいくつかの都市には日本人読者を対象とした日本語のフリーペーパーが発行されている。フロリダには日本人は少ないのでニューヨークの話になるが、現在、ニューヨーク市で発行されている日本語のフリーペーパーは規模の小さいものも含むと6誌か7誌くらいあると思う。よく見かけるものとしては「週刊NY生活」「週刊NYジャピオン」「デイリーサン」「よみタイム」「US Frontline」などがある。
「週刊NY生活」は新聞のページそのままの形で、オンライン上で読むことができるデジタル版もあるのでそれを見ると良いと思う。 もちろん日本からでも読むことができる。「週刊NY生活」は日本語フリーペーパーの中で最も信頼ができ内容が充実している。
www.nyseikatsu.com
編集長は元読売新聞の記者で記者魂をしっかりもったプロで、個人的な知人でもある。90年代終わり頃まで読売新聞は米国在住の購読者には日本語ローカル新聞を作成し、無料で毎週織り込んでいた。彼はそのころから現地日本語新聞を担当していた人物。読売新聞は売上減少で米国から撤退してしまったが、彼は独立してニューヨークに残り、自分で「週刊NY生活」を2000年に立ち上げた。
ちなみに米国で現在、紙の日本の新聞を購読できるのは日経新聞と朝日新聞だけだ。私は日経新聞が好きで長年、紙の新聞を購読している。家に配達(衛星版で当日の新聞が読める)の場合は月額129ドル、郵便で受け取る(2〜3日遅れる)場合は85ドル、これに州によってセールス・タックス(日本でいうと消費税)がかかる。家への配達は米国の中でもニューヨークのような大都市に限られる。私は主に郵便で購読していた。なぜなら新聞配達の人が間違えて配達されなかったことが何度かあり、いちいち苦情の電話をかけるのが面倒になって、別に数日遅れでもよいし購読料金が安い方が良いと思ったからだ。フロリダでは郵便での購読しかないのでそうしているが、ニューヨークの頃より郵便配達に時間がかかるようで、1週間遅れで届いたりするし、一度に5日分の新聞がどっさり郵便受けに入っていたりすることもあるのが悩みだ。
「週刊NYジャピオン」www.ejapion.comは2000年頃から始まった日本語新聞で後発だが、ニューヨークではたぶん一番良く出回っていると思う。フリーペーパーは営業力が大事でこの会社は営業が得意のようだ。全ページの7割近くのスペースが広告で占められている。新聞の内容はもともと新聞記者の経験のない人が作った新聞という素人っぽい感じではあるが、現地情報を手軽に集めるにはとてもよい。広告を見ているだけでもたしかに役に立つ情報がたくさんあると思う。レストラン情報は特に充実している。
これらの日本語フリーペーパーは日本食レストラン、日本食のスーパーマーケット、日本人医師・歯科医のクリニックなど、日本人が立ち寄る場所にたくさん置かれているので、通りがかりに一部もらって帰る。ニューヨークにいた頃はこうして無料で日本語フリーペーパーが手に入ったのだがフロリダでは手に入らなくなったので、「週刊NY生活」のデジタル版を私はオンラインで時々見ている。しかし、デジタル版の新聞は紙の新聞に比べてやはり読みにくい。画面が小さいので拡大しなければならないし、読むのに時間がかかる。一般の新聞もそうだが、新聞はやはり紙が好きだ。とにかく紙なら極めて短い時間でざっと流して読むことができるのがよい。
次に日本語テレビ放送だが、最もメジャーなのは
TVJapanだ。主にNHKの番組の中から、ニュース、ドラマ、バラエティー番組などがいくつか選ばれて1日24時間放映されている。民放の番組も人気の良い番組がいくつか放映されている。たとえばNHKの大河ドラマ、朝の連続ドラマ、「NHKスペシャル」、「鶴瓶の家族に乾杯」、「ガッテン」、「歴史秘話ヒストリア」など。民放からは「東京タラレバ娘」、「逃げるは恥だが役に立つ」の放映が1月から始まった。ウェブサイトを見れば番組表が見られる。
www.tvjapan.net
TVJapanは有料放送でこのチャンネルを視聴するには月額25ドルかかる。ちなみに米国は国土が広いので受信が難しく無料の地上波でテレビを見ることはない。どこの家庭もケーブル会社と契約して有料でテレビを見るのが普通だ。ちなみに現代ではTVを見るためのケーブル、家庭の固定電話、インターネットの3つを同じ会社が扱い、それぞれ契約する。ちなみに我が家ではこの3点セットにTVJapanのチャンネルを追加して月額160ドルくらい支払っている。ちなみに地域によってはケーブル会社がTVJapanを扱っていないので、そういう場合はサテライト・ディッシュ(家庭向きの衛星放送受信機)を設置してそういう会社を通して受信する。
NHKワールドTVというチャンネルがあり、これは日本から外国へ向けての24時間の英語放送だ。ケーブル会社や契約の種類により視聴が可能な場合と不可能な場合がある。我が家では視聴可能で、大相撲のハイライトを英語で夫と二人で見るのが楽しみだ。英語での相撲の解説や分かりやすい説明がよいので夫はすっかり相撲ファンになった。日本のニュース、日本文化や観光地の紹介、料理番組など日本に興味のある外国人にはとても良い構成になっている。
それから日本語TVにはFCIのチャンネルがある。これはフジサンケイグループのテレビ局がフジテレビの一部の番組を無料で米国のケーブル会社を通して流しているものだ。米国の中でもニューヨーク周辺の都市と、ワシントンDC、シカゴ、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、ハワイなど日本人が多く住む地域以外では映らないことが多いようだ。午前7時から8時(ニュース番組)及び午後10時から11時まで(ドラマやバラエティー番組)の一日2時間のみの放映だ。私が米国に住むようになった初期の頃はTVJapanがまだなくて、これしかなかったので、録画して毎日見ていた。
昔は日本の新聞や日本語テレビ放送が米国在住日本人の命綱という感じだった。日本の新聞や雑誌は米国でも田舎に住んでいるとなかなか手に入らないので、日本人同士で回し読みしたりしていたものだ。現代はインターネットが普及したおかげで、海外からでも日本の情報が手軽に手に入るようになり、隔世の感がある。