「夜型人間」

 “I don’t get up early. I’m a night person.”

 

英語で夜型人間のことをnight personと呼ぶ。ちなみに朝型人間はmorning personだ。私は子供のころから朝は苦手。夜は集中できる。しかし通学や通勤でどうしても朝早く起きなければならないことは社会生活上普通にあるから、それなりに起きていた。しかし、フロリダに来てからは、私はもうクライアントのオフィスには通わなくてよくなり、オンラインで家で仕事をするようになったのでとても楽になった。

 

オンラインの仕事も勤務形態は人によって様々なのだろうけど、私の場合は基本的に自営業だから24時間のうち何時に働いても自由なので、私は主に夕方から深夜にかけて仕事する。私からのEメールがクライアントの所に行くのは深夜1時とか2時だったりするので、「Yoshikoはいつもクレイジーな時間に働いてる!」と言われる。

 

私が朝起きるのはだいたい午前10時頃。朝、コーヒーを飲んでEメールを読んだり、ツイッターをチェックしたりしてゆっくりする。昼が近いので朝ご飯は食べない。ちなみに夫は高校生の頃から朝はコーヒーを飲むだけで朝食は食べない人なので、我が家では以前から朝食を作ったことがない。それから私は歩いて5分の所にあるクラブハウスのジムに行く。私はジムに行く時はなるべく集中して毎日行くようにしている。行かない時は何カ月も行かない。そろそろ減量しないとなあと思って4月ごろからできるだけ毎日行き始めた。

 

ジムでの運動時間は1時間強。家に戻って昼食にクロワッサンを一つ食べ、それからテレビを見たり新聞を読んだりしてゆっくりする。日によっては車で夫と一緒に外にランチに行ったり、近所のスーパーに買い物に行ったり、夫の医者通いに付き合ったり。そして午後3時くらいから仕事を始め、6時くらいで一旦休憩。それから夜9時くらいから深夜1時半頃まで仕事する。そして私は昔から寝る前にお風呂に入る習慣だったので、今も寝る前にシャワーをあびてから寝る。ベッドに入るのはだいたい毎日2時台、遅い時は3時半くらいになることもある。

 

深夜遅くまで起きていると、NYにいたころはよく夫に叱られて「早く寝なさい!」と言われたものだが、最近はあきらめたのか言われなくなった。夜型人間は「早く寝なさい!」と言われるのが苦痛だ。これは是非知ってほしい。放っておいてほしいのだ。朝早く起きなければいけない用事のある時はたとえ夜遅くまで起きていてもちゃんと起きるから。

 

たしかに社会一般は昼間の時間帯に合わせて動いているし、夜遅くまで起きて慢性的に睡眠時間が少ないとしたらそれは不健康だろう。しかし、私のように毎日決まって夜遅くまで起きて、朝遅くまで寝て、別に睡眠不足ではない場合なんら問題ない。

 

以前の睡眠の常識、成長ホルモンが多く分泌される睡眠のゴールデンタイムは午後10時から深夜2時の間で、その時間に寝ていることが大事だというのは近年の研究で間違いであることがわかった。成長ホルモンが活発になるのは睡眠に入ってから最初の3時間というのが正しいそうだ。だから別に夜の10時から深夜2時である必要はない。睡眠に入ってから3時間の間に良質の睡眠をとっていればよいのだ。

 

そもそも私は睡眠のゴールデンタイムが夜の10時から深夜2時だなんてことは、自分の体験からして、はなっから信じていなかった。なぜなら、そもそも人間の体がどうやって今午後10時だなんてわかるのか疑問に思った。朝の強い光を浴びてから何時間か後に眠くなるのは自然だ。電気がないような大昔の時代ならともかく、現代は夜でも電灯で明るいし、強い光は自分が朝でも昼でも起きてカーテンを開けなければ浴びないではないか。

 

毎日7時に起きる人なら夜11時ごろ眠くなるのが自然かもしれないが、毎日朝10時まで寝ている人は深夜2時まで眠くならないのは当たり前だ。それを3時間早くずらせ、深夜起きているのは不健康だというのは世間の思い込みで、不規則なのが不健康なのであって、毎日規則的に夜更かしなのは何ら問題ないはずだと信じていた。それが正しかったとわかってうれしい。

 

睡眠時間は8時間が良いという世間の常識も疑わしい。年齢にもよるし、個人差が大きい。厚労省の「健康つくりのための睡眠指針2014」によると15才は8時間、25才は7時間、45才は6時間半、65才は6時間がよいとのことだ。ほかにもネットで調べると、80年代に米国で百万人以上を対象に行われた追跡調査や、それとは別に日本で40才から79才の男女11万人を対象に88年から99年にかけて行われた追跡調査の結果(名古屋大学予防医学 玉腰暁子氏)でも、健康に支障をきたさない睡眠時間は6時間30分以上で7時間30分未満だそうだ。睡眠が少なすぎても多すぎても良くない。

 

最近NHKの番組で「睡眠負債」というテーマで、休日に朝遅くまで寝ているのは睡眠不足がたまっていて「睡眠負債」の状態でそういうのはよくない、毎日夜10時に寝るのが健康に良いと言っていたが、私はそんなむちゃなと思った。現代日本人のライフスタイルで夜10時に寝るなんて困難。小学生でも塾通いで夜9時頃家に帰る子もいるのに。休日くらい好きなだけゆっくり寝るのは当たり前。たとえ睡眠が足りていても夜型人間にとっては朝は眠いものだ。

 

そもそも夜型人間は夜早く寝ろと言われても、なぜかそんな早い時間には寝つけない体質なのだ。夜10時に寝ようとすると寝つけなくて不眠症になりそうだ。実際朝7時ごろとかとても深く眠っているので、朝早く起きるなんて夜型人間には不健康そのものだと感じる。だから早寝早起きが健康に良いだなんていくら世間が言っても私は全然信じていなかった。夜型人間にとっては遅寝遅起きこそ健康に良いのだと体験的にわかっていたから。

 

人間には一定の割合で遺伝子的に夜型人間が存在する。これは私の個人的解釈だが、それは人間にとって必要だったからそうなっているのだと思う。太古の昔、夜中じゅう火の番をしたり、外敵に村が襲われないように警備をする人が必要だった。夜型人間はそういうニーズにこたえていたのだと思う。

 

現代でも夜勤の仕事は職種によって必要だ。たとえば看護師には夜勤があり、交代で順番に勤務しているようだが、あれは不規則になるので健康に良くないやり方と思う。思い切って毎日夜だけ勤務の夜勤専門の看護師を雇えばいいのにと思う。上乗せ料金を払えば、夜型人間の看護師が応募してくるのではないかと思う。普通の人がまったく夜勤が不要になるほどは集まらないかもしれないが、交代の夜勤の回数は減るだろう。実際、米国の病院には夜勤専門の看護師や技師が働いている。つい最近も近所の大きな病院が夜勤専門の医療事務員を募集している広告を見た。救急患者は間真夜中でもやってくるので入院の手続きやら、いろんな書類に患者のサインをもらったり、夜中も医療事務員は必要なのだ。

 

夜型人間は社会の役に立つ。夜型人間の深夜まで起きている自由を是非侵さないでほしい。早寝早起きこそ健康に良いなんて勝手な押し付けはやめてほしい。繰り返しになるが、不健康なのは不規則な睡眠スタイルであって、夜遅くまで起きていること自体ではないと思う。