今月の執筆者 

中野 隆

稽古、稽古!

磨いて、磨いて!

倉文協だよりを書くのも2年ぶりになると思います。 これから勝手なことを書きますが、中野は尺八を吹く事をそう思っているんだ、と思って読んでいただければと思います。

NHKの「桃源紀行」という番組が好きでよく見ています。中国山東省済南で書を勉強している学生が書について悩んでいた時、先生に相談に行っていました。いろいろ話をしていましたが、先生が学生に「すべての芸術は技術から始まる。技術で不合格なら芸術とはいえない。まず技術面から解決する。」と言っていました。この言葉は心に残りました。 お手本があるのに自分の技術の無さから思うようにできない、という事を常日頃から感じていたものですから、この先生の言葉は真実だ。さらにいっそう技術を磨こうと感じたのでした。

現代では個性を大切にしようという事を言います。 人間性という面では確かに大切にしたいと思います。しかし、音楽・絵画・彫刻また将棋・碁でもそうだと思うのですが、未熟な時は個性ではないと思っています。ただ単に未熟である、くせであって個性ではないと思っています。 磨いて、磨いて、磨いた後から光り現れるのが個性ではないかと思っています。とにかく磨かねばと思っています。

音楽に対する思いというものは、常に技術に先行しています。「ああ、これが出来たら良くなるのに」と思う事が多いです。技術がないために思うようにできない。このことを強く感じています。とにかく、今は(今でも)技術、技術、技術と思っています。本当に大切なのは稽古、稽古、稽古かもしれません。ただ、間違った稽古をすると悪い癖が身についてしまうという事があります。

もう一つ重要なのは知識。 その芸術に対する知識がなければ、独りよがりになってしまいます。歴史、時代背景を知ると、見え方、聞こえ方が違ってきます。練習の取り組み方も違ってきます。ただ、知識が増えるのもいいですが、知識ばっかりで頭でっかちになるのでなく、どう生かすかという事が重要だと思っています。 私はあくまでもプレイヤーですので、思っていることをどう表現するかが重要だと思っています。

技術がどうとか書きましたが、「良ければいいんだよ。」という事を書いておきます。これは尺八の横山先生が言っておられた言葉で、演奏者が良ければ良い、聞く人が良ければ良い、という事だと単純に理解しています。とにかく、良ければ良いと思っています。