今月の執筆者
永田央紗
『死ぬまでにしたい
10のこと』
「俳優の大杉漣さんが、66歳で死去。」
このエッセイの話がきた頃、そんなニュースが流れ、好きな俳優だっただけに、強い衝撃を受けた。まだ少ない人生経験の私だが、今の時代66歳は、まだ若い。私の周りでも年齢関係なく亡くなった人はいる。だが、さっきまで一緒にいた人が、さっきまでテレビで見ていた人が亡くなる。こんな衝撃は、祖母を亡くした時以来だ。
私の祖母は皆の言うところの「いい死に方」をした。もちろん83歳だった祖母は、耳は遠いし、心臓も弱く、何かにつかまらないと歩けない。だが、自分の事は自分でやっていた。亡くなる前日も、洗濯・掃除、炊事といつもの生活をし、その夜、祖母は就寝前に、私と電話で会う約束をした。
「待っとるけ」「じゃあ明日ね」
翌朝、祖母の訃報を受けた私は、まるで映画のワンシーンのように、泣き崩れた。これでもかと、わんわん泣いた。83歳。人生ほぼ生きてきた。誰かを失うのはとても辛い。亡くなり方もそれぞれ。時が経てばと言っても、時折ふと思い出し、涙する日はなくならない。どんなに若くても、どんなに健康に気を付けていても死ぬときは死ぬ。残された者の喪失感は計り知れない。だが、だからこそ私は、亡くなった人が、どう生きたのかがとても気になる。人生を謳歌できたのか。そう思うと、大杉漣さんは、自分のやりたいことができていたのは幸せだったと思う。この世の中でやりたい事ができているのは、ほんの一握り。だが、自分で人生を選択できるという時代でもある。
『死ぬまでにしたい10のこと』は、海外映画の邦題である。内容は、余命2か月の宣告を受けた主人公が、死と向き合い『死ぬまでにしたい10のこと』を書き出し、一つずつ実行していく。自分が死ぬことを隠すと決め、いつも通りの生活をし、裏では死ぬ準備をしていく。残される子供達にメッセージを録音するという、よく見るシーンもあるが、印象に残っているのは、夫以外の男性と付き合うことという事だ。
私は、10以上のやりたいことをリストアップしている。しょうもない事まで。その中から、するべき事を決め努力している。悔いのない人生なんて理想だ。何を選択しても悔いは残るだろう。中途半端で死ぬかもしれない。それでも「まあいいか」と思える位の人生にしたい。そう選んだのは自分。自分の責任だ。大杉漣さんの死で、改めて終活を考えさせられた。まあ、まだ死にどきでは無いと思っているが。
(ザ・ラニアルコーラス)