「エイミーの恋愛と結婚」

 

エイミーは私の友人の一人でニューヨーク在住。1976年生まれで、米国でトップ層であるアイビーリーグと呼ばれる大学の一つ、イェール大学でMBA(経営学修士号)を取得し、年収はとても高く、高度に知的なアジア系米国人だ。彼女はかなり年上の私に時々恋愛相談を持ちかけた。

 

エイミーはニューヨークの投資銀行で働いていた頃、仕事関係で知り合った男性と恋愛をして一緒に数年間暮らしていて、その男性と結婚したいと思っていたが、その男性は結婚する意思はなさそうだということがはっきりして別れた。それが2010年、彼女が34才の頃。

 

その後、エイミーはインターネットで真剣に婚活を始めた。米国では老いも若きもインターネットで恋人や結婚相手を見つけるのは今やごく当たり前のことで、独身で全くやってない人はほとんどいないと思う。彼女はmatch.comという先発の大手で定評のあるサイトを使った。

 

エイミーの趣味は私からみると不思議なのだけれど、なぜか自分より学歴も経歴も低い、いわゆる「格下」の男性とばかり会っていた。高卒の男性でたいした仕事をしていない人とも断らず会っていた。それで結局、平凡な大学を卒業し年収もたいしたことのない年上の男性に惚れられて強引さに引っ張られて半年後にスピード結婚をした。私はそんなことしていいのかなあと思ったが、30半ばの大人がすることだし、ただ祝福するしかなかった。しかし、その結婚は最悪だった。彼の家族が経済的に問題のある家庭でなにかと経済力のあるエイミーに頼ってきたのだ。それで2年後に離婚。

 

すぐ次の相手探しが再開。次はmatch.com以外のサイトも使った。eharmonyという後発だが真剣な人が多いという評判のサイトと、tinderという新興のサイトも使った。大雑把に言うとmatch.comは真剣な人も軽い気持ちの人もいて千差万別。eharmonyはまず登録する時にデータ入力の量が多くて書くのに時間がかかり過ぎてめげることがあるので、いい加減な気持ちの人は少なく、結婚相手探しには向いている。tinderはスマホ時代の手軽さで、相手の写真を見るだけで良さそうなら右、ダメなら左と降って行って、興味を持った同士が連絡し合うというシステムで、街で声をかけるのをインターネット上でやっているような感じ。

 

eharmonyではなかなか思うような人に出会えず、tinderはあまりにも軽い人が多くて結婚につながらない。落ち込むエイミー。以前、イェールの経営大学院にいた頃に恋愛して一緒に暮らしていた年下の男性(高卒でセールスマン)のことをいまだに忘れられないという。その時は周りの人に彼とエイミーでは釣り合わない、続くはずないし別れた方がいいと言われて、他にもいろいろ問題もあって卒業時に別れてしまったが、自分が純粋に好きだったのは彼だと言う。私は「エイミーみたいに知的にも経済的にもレベルが高くて、そういうあなたの個性を好んで求めてくれる人が必ずいる。まだ出会ってないだけよ。もっと探せばきっと出会えるから。」と励ました。

 

そして結局、またmatch.comで出会った人と交際を始めた。その男性はロバートといい、彼女より10才位年上でそのことは彼女は気に入っていなかったが、医者で様々な分野の知識の幅が広い人で信頼できた。離婚一回で彼女と同じく子供はいない。出身大学も一流でロバートは何よりエイミーの知的レベルの高さを気に入り、彼女の年収が高いことも誇らしく思っているようだった。私はこの人よさそうねと交際を続けるように言った。

 

エイミーにとっては初めての同格かそれ以上のお相手だ。私は、エイミーは外見はきれいだし学歴も経歴も申し分ないのにこれまでなぜ学歴も経歴も下の人とばかり付き合うのかと聞いてみた。すると「私はアジア系で親がたいしたことない。私と同格かそれ以上の男性は、美貌で、トップ大学を卒業し、出身家庭もしっかりした女性と結婚する。私はかなわないのはわかってる。レベルの高い男を掴もうとそんなに必死になりたくないし、なる必要もないし、自分より下くらいのお相手の方が気楽でいいの。それに私は宗教的に博愛主義で、学歴や経済力が劣るからといって交際しないということはしたくないし。」と。

 

その後、エイミーとロバートはうまくいって一年の同居の後、2016年に結婚。私のアドバイスが良かったと感謝された。その時、エイミーは39才。子供がほしいと願っていたので今度は妊活に必死になった。自然にはなかなか難しいようで不妊治療に励んだ。何事にも努力家だ。そして体外受精でなんとか妊娠し、昨年41歳で、男の子が生まれた。今度は、息子の学校のことを心配してどこの私立学校に入れようか、そこに入るためにはどこどこのキンダー(幼稚園)に入れなければとか言っている。

 

日本から見ると40才前後で普通にどんどん婚活するというのはすいぶん遅いように感じるかもしれないが、米国では40才はまだまだ若くてそれなりにモテる。なにしろ離婚が多くて再婚市場が豊かなのだ。夫の50代後半のいとこも今年の5月に再婚した。おとといも夫が通っているクリニックの医者(60才)が「この秋は結婚式が多くてね、親戚の誰々の結婚式が9月で、友達のが10月で、11月は自分の結婚式があってね。」と言った。でも、そういう話は誰も驚かない。60才過ぎても70才過ぎても結婚する人は普通にいる。私は米国で生活し始めた初期の頃、大学生が「次の週末は祖母のボーイフレンドが家に遊びに来る。結婚するつもりらしい。」とかいう話に「えー!」と驚いていたが、米国では全く普通のことですぐ慣れた。日本も現在は3組に1組が離婚すると聞く。いずれそういう時代が来るのだろうか?