「フロリダでクリスマス」

 

例年はニューヨークの夫の姉の家で親せきが集まるクリスマス・パーティーに参加するのだが、今回は夫と私はニューヨークに行かなかった。行くつもりで早くから航空券を購入し、ホテルも予約していたのだがすべてキャンセルした。循環器系疾患のある夫の健康状態がいまひとつで、寒さが厳しいニューヨークに行くのは不安があるので行かないことにしたのだった。フロリダに2015年6月に転居してからもずっとクリスマスはニューヨークで過ごしたので、フロリダで過ごすクリスマスは今回が初めてだ。

 

フロリダはハワイみたいに常夏だ。12月は極めて気候が良く、暑くも寒くもない。気温は日中は25度位。12月から3月は特に観光のハイシーズンで、フロリダに寒い州から避寒目的の観光客が押し寄せる。別荘を持っている人たちは11月頃から4月頃までフロリダで過ごして夏場は別の州の本宅に戻る。冬になるとフロリダは人口が増えて、レストランが混んだり道が混んだりする。

 

クリスマスの時期というと多くの場合は雪景色のウィンター・ワンダーランドをイメージする。しかしフロリダに雪は全く降らない。ヤシの木が立ち並び、さんさんと太陽が降り注ぎ、青い空が美しく、プールやビーチで気持ち良い時間を過ごせるのがフロリダの冬だ。そんなフロリダでもクリスマスは全米と同じようにする。クリスマスツリーを飾り、クリスマスのライティングなどの飾り付けをし、サンタクロースも現れる。

 

例年、我が家では生木のクリスマスツリーを買う。ニューヨークのマンハッタンに住んでいた頃は通りでたくさん売られていて、その中から好みの木を選んで購入し、自分で運んで家に持ち帰るか、配達を頼むかだった。フロリダでも11月終わり頃から生木のクリスマスツリーを売るテントの店が現れるが、うちのあたりでは配達をしてくれない。客が自分の車に積み込んで持ち帰るのが一般的だ。しかし、うちはセダンの車しかなく、車の屋根に木を縛り付けて運ぶのは車に傷が付くから嫌だった。それでネットでオンライン注文で宅配してくれるクリスマスツリー業者から購入した。

 

クリスマスの飾りはツリーやオーナメントだけではない。サンタクロースのフィギュア、クリスマスの飾りソックス、キリスト誕生を描く置き物などいろいろあって、家の中が賑やかになる。

 

クリスマス用の食器セットもある。我が家はLENOX(レノックス)というメーカーのものが好きで、大皿、小皿、パン皿、コーヒーカップとソーサー、マグカップ、飾り皿など年々買い足してLENOXのクリスマス用の食器を揃えて、クリスマスの時期に使っている。ちなみにLENOXは米国製で、ホワイトハウスで使われる食器はLENOXだ。私は米国で生活を始めた初期の頃、郊外のアウトレットでLENOXの食器を見て一目で好きになった。なんともいえない上品なクリーム色の基調に定評がある。

 

我が家は55歳以上の人が購入できるアクティブ・シニア向けのゲイティッド・コミュニティーの中にある。介護設備はなにもない。このコミュニティーは6百軒くらいの家で構成されている。中央にクラブハウスがあり、テニスコート、プール、スポーツジム、ビリヤード・ルーム、ゲーム用のカードルーム、ステージのあるホールなどがある。クリスマスの時期にはロビーにクリスマスツリーが飾られる。フロリダでもうちのあたりはユダヤ系の人が多くて、ユダヤ教の飾りも置かれている。

 

クラブハウスの中にカフェがあって、夫と私は時々週末にランチを食べに行く。ウェイトレスたちと顔見知りでいつもお世話になっているので、クリスマスの時期には特別のボーナスとしてクリスマス用の封筒に入れてチップを一人25ドルあげた。去年は二人にだけあげたが、今年はキッチンの人たちにもあげることにして合計5人にクリスマス・チップをあげた。

 

米国ではクリスマスの時期に日頃お世話になっている人たちに特別のチップをあげるという習慣がある。たとえばコンドミニアムに居住してドアマンがいれば、その建物の居住者はそのドアマンたちにチップを渡すのが普通だ。ドアマンにとってはこのクリスマスの特別チップは大きな収入になる。人によっては郵便配達人にチップを渡す人もいる。封筒にお金を入れて自分の郵便箱に入れておけば、郵便配達人がそのチップを持っていく。

 

クリスマスの時期は、コミュニティー居住者の息子や娘の家族が訪問してきて、クラブハウスが若い家族連れで賑やかになる。いつもは高齢者ばかりのプールやジムに若い人や子供たちがいるのはいいものだ。子供向けのイベントも用意されている。

 

今日もジムに行って窓から見る青い空、にぎわうプール、ヤシの木、ロビーのクリスマスツリーを見て、ああ、フロリダのクリスマスだなあと思った。暖かくてなんて気持ちがいいのだろう。ニューヨークのロックフェラーセンターの巨大なクリスマスツリーやその周辺の華やかな飾り付けのクリスマスもいいものだが、循環器系疾患のある夫の為にはこの暖かいフロリダがやはり助かる。夏場は酷暑だが、冬のフロリダは最高だ。