第121

「真冬の日本帰省」

年が明けて一月後半に10日間程度の日本帰省をした。前回は夫と一緒だったが今回は、私だけだ。ここ10年くらいは年に二回日本帰省するようにしている。以前は年に一回程度だったのだが、親が70代後半になったとき、このまま年に一回だとあと10回くらいしか親と会えないかもしれない、それは嫌だなと思った。それでできる限り年に2回日本帰省することにしたのだった。日頃なにもしてないが、顔を見せるだけでも少しは親孝行になろうかと。

実家は広島市で、ニューヨークからフロリダに2015年に転居してから帰省にかかる距離と時間がさらに長くなった。ニューヨークからは成田への直行便があるがフロリダにはないので、米国のどこかで乗り継ぎをしなければならない。今回は、行きはダラスで乗り継ぎで空港のホテルで一泊した。翌朝、成田便に乗って成田に到着後、羽田空港までリムジンバスで行って広島へ。時差が14時間ある。1月13日午前8時にフロリダの家を出ても広島の実家にたどり着いたのは日本時間で15日の夜の11時近くだった。

成田空港に着いてから羽田空港行きのリムジンバスに乗るとき、係員が3人いたがそのうち日本人は一人だけで二人はアジア系の外国人だった。以前は、係員は日本人が主流だったので変わったなあと思った。たしかにリムジンバスに乗るのは外国人旅行者が多く、外国語ができる外国人の方が良いだろうと思う。

父は2013年に亡くなり、3年前から母はサービス付高齢者住宅に住んでいて、実家には日頃誰も住んでいない。広島の実家でまず思ったのは、わかっていることだが木造の家の中がとても寒い。暖房をつけて電気ストーブをつけてやっと暖かくなる。しかし、廊下や暖房をしてない部屋は寒くて温度が摂氏12度くらいしかない。暖房をしていない部屋で物の整理とか作業をするとき私はロングのダウンコートを着たまま作業した。

朝起きてすぐの洗面所が一番寒くて、家の中で息が白いのはかんべんしてくれと思った。電気ストーブで洗面所が温まるまで待ってから歯磨きなどした。温暖なフロリダに慣れきった私の体にはこの寒さは厳しい。トイレの手洗いの水が氷のように冷たいのも良くないなと思った。日本の家庭のトイレ自体はウォシュレットの普及率が高くハイテクなのだけれど、トイレの中の手洗いでお湯が出てくる作りにはなっていないことが多い。トイレの中に手洗いはなく、洗面所で手を洗うタイプならお湯は出てくるのだろうけど。

日本は、セントラルヒーティングは北海道くらいしか普及していないので、冬は家の中の寒暖差が大きくてヒートショックで脳梗塞などを起こして死亡する人が毎年かなりいると聞く。冷たい水に手が触れるだけでも血圧がびゅんと急激に上がるので健康リスクがある。木造住宅と言ってもいまどきの新築ならかなりの断熱材を入れていてこれほど家の中が寒くはないのだろうけど、古い木造住宅の冬の寒さは特に高齢者には危険すぎると思う。

ウォシュレットといえば近年はアジア諸国でも徐々に取りつけている家庭が増えているそうだが、米国ではほとんど普及していない。米国在住日本人家庭でまあまあ使われている程度と思う。私もフロリダで家を買って住むまではウォシュレットがずっとなかった。欧州は硬水で、石灰化で細い管が詰まりやすいから普及しないと聞く。米国はそんなに硬水ではないのだが、トイレに電源がないことが多いので設置が難しい。それにお湯で洗うということにカルチャー的な抵抗があるのかもしれない。日本だって最初はそうだったが慣れるとその快適さに多くの人がやみつきになった。フロリダの我が家では家を新築する時にトイレにウォシュレット用の電源を追加で設置した。電源は後からつけるのは難しい。

母はサ高住から実家に戻って二泊だけした。もう車椅子だから家のお風呂に入れないので長く泊まるのは難しい。風邪をひかないように家の中を十分暖かくした。母と朝昼晩一緒に時間を過ごせてよかった。兄が近くに住んでいて母の面倒を日頃よく見てくれているので本当に助かる。感謝している。

日本帰省時に日本で買って米国に持って帰るものはいろいろあるが、まずサランラップ。米国のラップは質がいまいちで、日本のサランラップならピタッと食器にくっつく。それから体を洗う普通の石鹸でDHCのホワイトソープ、花王のメリットシャンプー、メンタムのリップクリーム。私は石鹸やシャンプーなどにあまりこだわりはないのだが米国人の夫はこれがいいと言って気に入ってずっと使っている。

日本の食料品や雑貨は米国で、オンラインで購入できるものもあるが品ぞろえはそんなによくない。ミツカン土佐酢が私は好きなのでそれを毎回日本で買う。近年ヒットしているなべ料理用のだしキューブも今回たくさん買った。資生堂の化粧品も同じ商品が米国で買うより日本で買う方が安いのでいくつか購入。それから百円ショップで、クリアファイルやジップ付のファイルなどいくつかの文房具と掃除用品を買った。

今回の日本帰省は私一人だったので帰りに東京にも寄って友達数人に会えた。夫と一緒だと結局日本観光旅行になるので、なかなか友達と会う時間をとれないのだ。もう十年近く会ってない友達と久々に会ってゆっくり話せておいしいランチや夕食を楽しむことができて良かった。学校時代の昔からの友達っていいものだ。

最後の晩は成田空港の近くのホテルに前泊した。帰りの便は成田からヒューストン経由でフロリダのフォートローダーデール空港へ。ヒューストン空港での乗り継ぎの待ち時間は2時間程度なのでヒューストンでは一泊する必要がなく、その日のうちにフロリダに到着。フォートローダーデールの空港からはウーバーで家まで戻る。ウーバーはまだ日本には一部しか導入されていないようだが、米国では数年前から普及している。ウーバーは簡単に言えば合法で組織的な白タクのようなものだ。

ウーバーには何度も乗ったことがあり満足度は高いが、今回の運転手は最悪だった。運転手はめずらしく女性だった。なんと重いスーツケースを客に車のトランクに乗せさせた。私はハンドバッグ、機内手荷物、ダウンのロングコート、そして大きな重いスーツケースを持っていて大変だったのに。そして家に到着した時も、この運転手は車から出てこようとせず、重いスーツケースを客に降ろさせた。こんな怠惰なことをする運転手は初めてだ。この運転手はプロ意識に欠けていた。女だからといって甘えているのは最低だ。ウーバーは利用後に客が運転手の評価をオンラインで、星印で示すことになっている。それで運転手の質をキープする仕組みだ。客側も運転手に評価されて評価が低い客だと将来ウーバーに乗れなくなるので、めちゃくちゃな評価はつけられない。いつもはたいしたことなくても星5つの満点を運転手にあげるのだが、今回は3つ星か4つ星か迷ったが4つ星にしてあげた。評価が平均3つ星になると解雇されるそうだから。

うちに帰って夫にハグされ、疲れも吹っ飛ぶ。いや、やはり疲れていて時差ボケもあり、すぐに寝た。南フロリダは暖かく一月終わり頃でも摂氏25度くらいある。気持ちの良い気候で本当に冬は助かる。