海外こぼれ話 133                    2012.6

 

台湾に22年ぶりに旅行

 欧州ばかりのこぼれ話が続いているが、今回は親日派のいる台湾に出掛けたので紹介したい。台湾の台北には22年前に研修があった時に、船で寄航して以来の訪問になった。その時の台北は、観光コースであった国立故宮博物館などを見て回るお決まりの見物だったので、ほとんど印象に残っていなかったので、今回は親日派である台湾の人たちとの出会いも期待した。出雲空港から羽田空港、そして羽田空港から台北の松山空港(新しく台北の市内に近い空港)までの往復チケットを手に入れて出発だ。出雲空港から羽田空港まで移動し台北に行くので、羽田空港の国際線に初めて搭乗するのでウロウロした。バスが出ているというので、93番乗り場に行くと小型のシャトルバスが出迎えてくれた。目と鼻の先に国際線のターミナルの建物が見えたが、直線ではなく飛行機の邪魔にならないようにと遠く外周を回っていくので、結局15分もかかって建物に着いた。しかし案内板がまったくなく右往左往しながらエレベーターを探して、受付カウンターに辿り着いた。

飛行機での移動時間は3時間半であるが、時差が1時間あるので、実質2時間半と短い。因みにドイツまでは12時間だ。それでも機内食が出るが、欧州線よりもご馳走があったのは何故か?台北の松山空港(愛媛県ではない!古い方は台湾国際桃園空港)に着くと、南国独特の香辛料の匂いがした。外国に着いたという感じがにわかに湧いてきた。事前にホテルに連絡をして送迎用のタクシーを用意してもらった。出口には看板を持った運転手が待ち構えていた。車を取って来るといって駐車場から出て来たら、なんと黒塗りのベンツのSクラスだった。後部座席にも電動リクライニングが付いており、前席までの距離が長く足をグーンと伸ばせるので少しVIP気分になれる。しかし後で請求書を見ると普通のタクシーの数倍にもなっていたが、夢物語が冷めてしまった。夜9時にもなっていたので、道路は空いており15分でホテルに着いた。ホテルは持っているカードの特権を利用して、通常の半額で泊まることができた。

ホテルは5つ星のシェラトン台北であり、漢字では「喜来登」と表現するがまったくの当て字だ。台湾の看板などは漢字も併記してあることが多く、意味を感じ取れるので連想ゲームのようだ。ホテルマンのネームにも漢字で表示されていたが、漢字の下にはオリーブ、アマンダなど英語名も併記されていた。

コンビニで

現金を下ろし買い物も体験

22年前に台北に来た時はツアーだったので何も考えずに徘徊していたが、今回は個人の旅なのでしっかりと自己管理する必要があった。まず両替は現地に行ってコンビニで現金を引き出すことにした。空港やホテルで両替すると10%も手数料を取られるが、コンビニで引き出すと2から3%と非常に安く、足りない分だけ引き出せば良いので便利だ。コンビには何とセブンイレブンが9割以上で、後ファミリーマートや地元のコンビニがある。街中は100から200m毎にコンビニがあるほど広まっているので何かと便利だ。

コンビニのATM機は、日本の銀行のカードを差し込んでいけば良い。ただし漢字が出てくるが、およその意味はわかるので、金額1000TS単位のところをタッチして、暗証番号を入力すれば簡単に引き出せて明細も出るので確認もできる。ドイツはこの明細が発行されない。ついでに飲み物やお菓子も買えば、お釣りの小銭も確保できる。セブンイレブンは、日本と違いどの店にも外に向かってテーブルと椅子が置いてあり、外に向かって食事ができるようになっていた。日本は本が並べられていて、人寄せになっているがこの点に文化の違いがありそうだ。また酒やタバコも置いてあり、驚いたのは関東煮(おでん)があったことだ。おでんの具もほとんど日本と同じであったが、味は非常に薄く辛子は付いていなかった。風土の違いを垣間見ることができた。

レシートをもらうと薄い赤を基調としてカラフルなものだったが、裏にもなにやら印刷が施されており、ある人はそのレシートを街中にある透明なポストに入れていた。それらを集めて寄付金にしているようだった。私はこれらすべて持ち帰り、写真とともにノートに貼り付けて思い出作りにしている。旅は準備自体を楽しみ、実際に現地に行って楽しみ、帰ってから写真やお土産などと共にお土産話も楽しむという三段階の旅を楽しんでいる。

台北市内観光は

気軽なタクシーで移動

朝は様子がわからないので、ホテル内にあるバイキングスタイルの朝食を摂ることにした。750台湾ドル(約2000円、レートは日本円の約3倍、以降台湾ドル=TSと略す)は日本の5つ星のホテルとほぼ同額だ。つまり台湾は日本の物価に対して半分から1/3程度なので、非常に高価な朝食である。しかし台湾料理、西洋料理、そして和食があり、それらの品数は豊富にあって迷うほどだ。席も自由であり窓辺にとってゆっくりと朝食を食べながら、ガイドブックで今日の行き先を練り直す。周囲を見ると何と7から8割が日本人であり、しかもほとんどが女性であった。

あいにくの雨であったが、出かける頃になると雨も上がってくる。まずはタクシーに乗ってグルメパラダイスの「永康街」に向かった。初乗りが70TS(約200円、いかに物価が安いかわかる。また5TSごとにメーターが上がる)、目的地までが185TS。台北の足はタクシーが重宝する。そこには台北の目的である小籠包の店である「鼎奉豐(ディンタイフォン)」を探すことであった。信義路二段という大通りのそばにあったが、店の前には数十人の人垣になっていた。

大人気だとは聞いていたが噂通りであったが、諦めてすぐ近くの他の店に入ったら、小籠包は皮が分厚く肉汁も少なかった。しかも紹興酒を頼んだ時にグラスのつもりだったが、ボトルを頼んでしまい返品は出来ないといわれ、残った分は持ち帰ってホテルで飲む羽目になった。店の選択に失敗したようだ。店の印象も悪く幸先が危ぶまれたが、露払いになったようで注ぎの店からは好転した。狭い路地の両側をウロウロしながら物色するが、街には断然若者が多く賑やかであり、色々な食べ物の匂いがいたるところで漂っており、台湾の人のエネルギーが活性化していることがわかる。

ガイドブックから探していたオーガニック喫茶店「回留(ホェリュウ)」でお茶を飲むことにした。満席だったので、少し待つほど人気店のようだ。席に着くと回りの半分以上は日本人客だった。台湾のお茶の入れ方をウエイターが教えてくれる。ちょっとした葉っぱであるが、何と9回も湯を入れて飲むことができるという。ティーバックの紅茶が何回飲めるか挑戦したことがあったが、8回目にはもう色も味もなかったが、このお茶は9回も飲めるという。実際に6杯湯を入れて飲んだが、4回目から美味しくなってきた。6杯目になるともう腹が一杯になるので飲めなくなる。余っていたお茶の葉をティッシュに包んでもち帰ろうとしたが、レシートにはその料金140TSがしっかりと加算されていた。

格安のマッサージにはまる

マッサージも台北の楽しみだった。色々と物色したが、ホテルまで送迎してくれる店があったのでフロントに頼んでもらった。大きなホテルなので日本語の出来るスタッフが必ずいるので安心できる。その店はホテルから10分の場所にあった。何と「志村けん」が店の宣伝をしており、スタッフの制服はトレードマークの「バカ殿」のイラストが入っていた。店には「押切もえ」や「山田優」などのタレントもこの店に来たという写真が貼ってあった。90分のマッサージは1500TSと安いが丁寧にしてくれる。マッサージ師はすべて女性のようで、80人以上が待機しており、24時間何時でもOKだというサービスの良い店だった。

下着1枚になりパジャマのような着物を羽織ったが、その柄もバカ殿のイラストが入っていた。蒸しタオルを幾重にも巻きまず熱で血行をよくするようだ。マッサージをしていると顔や足裏の角質の除去などのエステをしませんかとかうるさく聞いてくるので、マッサージだけに留めた。実は彼らはこのオプションが儲けになっているようだったので、安易に頼まないことが賢い。帰りの車を待っている間に、次々とマッサージの終わった人が待合室に集まってくる。それぞれに帰りのホテルのカードを渡されて待機するが、ホテルによってカードの色が替えてあったのは目で見る管理の改善した証拠だ。凄腕のマッサージだったのでまた行くことにしたが、今度は2時間のオイルマッサージにしてもらったが、これも2000TSと格安だったがクセになりそうだ。他にも街中にマッサージの店が多くあるので迷ってしまうが、事前に調査をしておくと安心だ。

鼎奉豐の小籠包を食べる

台北のもう一つの狙いは、有名な「鼎奉豐」の小籠包を食べることであった。「台北101」という高さが509mで、101階建てのビルのショッピングセンターにも出掛けた。タクシーで165TSと安い。地下を覗くとなんと鼎奉豐の店があった。11時から開店なので、それまでビルの中を探索したが頭には小籠包しか浮かばなかった。1115分になって行ったら既に満席になっており、15分待ちとなった。小籠包を食べるには忍耐が必要だ。

番号札を持ち、手渡されたメニューに必要なオーダーを記入した。案内されるとちょうどガラス張りの小籠包を作る工程を見ることができた。見えるだけで作業者は30人もいた。ウエイトレスも30人も数えることが出来たが、見えない人たちを考えると100人以上の人が働いているようだ。まるでブロイラーの生産のように立ったままでの作業を強いられている。ちょっと工夫をすれば作業環境がよくなるのにとついつい商売のことを想像してしまった。待っている間にお客様の人員を数えてみたら240人もいた。つまり開店とともに一気に200人のお客様が来店して、小籠包を食べている勘定になる。食べてみると以前の店はザルの底に敷いてあったのは紙であったが、ここは布であった。また皮は非常に薄く、少し破って中の肉汁を出すととってもジューシーであり、それにショウガとタレと一緒に食べると美味いことがすぐにわかった。あとモヤシやキュウリなどのおつまみは、その場で頼めばすぐに出してくれるがそれも美味しかった。店員のサービスもよく、お茶のサービスをしながら伝票を見て、まだ料理が来ていないかを何度も確認していた。これは日本も見習って欲しい。

本店しかガイドブックにはなかったので、まったく期待していなかったので幸運だった。実はホテルの近くにあるSOGOという日系のデパートの地下にも店があったので、本店には行かないでこの地下でまた食べることにした。夕方だったので待ち時間は25分もあったが、タクシーで本店に行くよりはましだ。同様に番号札とメニューを渡され、電光掲示板に表示される番号を確認しながら順番を待った。この店でも同様にウエイトレスはよく教育されていた。これで2回も食べることができた。美味しく腹一杯食べて600TSとは満足だ。

買い物に出かける

「台北101」の地下にはスーパーがあったので、どんなものを売っているか興味があったので見て回った。なんと北海道産の昆布、ホタテ貝の干物、ラーメン、調味料をはじめ多くの食品があった。さらに良く見るとドイツ製やイギリス製、フランス製などの海外の菓子や食品も実に多くの食品があった。日本のスーパーも驚くべき多くの品数だった。これを見ただけでも台湾の人たちのバイタリティーを感じた。しかも安いときているから段ボール箱で日本に送りたいと思った。欧州では市場を覗くと庶民の生活が見ることができ訪問することが楽しみになっているが、台北はスーパーが楽しみだ。

乾物ものも有名なので、卸の店が集中している「迪化街」に足を運んだ。開運のパワースポットといわれる「霞海城隍廟」には、多くのカップルがご利益を得ようと参拝していた。こっちは食べる方に専念して、ひたすらカラスミ(ボラの卵巣を塩漬けして干物にした高級珍味)を手に入れることだった。店によって値段も違うのでひたすらサンプルを味見して、値段を目踏みしていった。やり取りが日本語でも何とかなるもので、上手くいかない方がむしろ面白い。

その他にキノコ、パイナップルなどの果実の干物、さらにウミウシやツバメの巣、フカヒレなどよくもこれだけの食材を集めたかと心配するくらい店に出していた。店先に出してある試食品を、少しずつ食べているだけでも腹の虫は満足してしまうがこれも旅の楽しみだ。昼時になると店員が店の中でひじをつきながら、食事をしている光景を多く見た。レストランに行ってもひじだけでなく、足を組みながら食べている姿も見たが、少し行儀の悪さを感じた。

地下鉄を利用してみた

移動をタクシーばかりでなく地下鉄(MRTと表示されている)も使ってみようと、ホテルのすぐそばの善導寺駅に行った。どうすれば良いかと自動販売機の前に行き現地の人の操作を見て確認したら、行き先までの料金を入れてボタンを押すだけだった。まず近くの駅まで行って見ることにした。路線は色分けがされており見やすくなっていた。お金を入れると青い樹脂のコインが出てきたが、日本は紙の切符なので違和感がある。

そのコインを持って改札口に行くと、カード式の画面とコインを照合する絵にタッチすれば改札口の門が開く仕組みになっていた。しかしどっちの方向かわからずウロウロしていたら、現地の若者が「どうされましたか?ご案内しましょうか」と笑顔と非常に丁寧な日本語で話し掛けて来た。丁寧に教えてくれたが、日本語の流暢なことと親日派がいることを実感した。地下鉄は非常に綺麗であり、使ってみると便利なこともわかった。改札を出る時は、コインを改札口の穴に入れると門が開くのでそのまま出れば良く、20TSから30TSで移動できる。従って大まかに地下鉄に乗ってから、後はタクシーを使えば良いことがわかったがクセになりそうだ。

バスに乗って

映画の舞台九份へ

台湾の金鉱街として有名になった「九份」に行って見ることにした。バス停までは地下鉄を利用して、バス停に行くとちょうど出発するバスが来た。100TS払って乗ったが、どこで降りて良いかはアナウンスされるかと思ったらどのバス停にもアナウンスはなかったのでちょっと心配になった。その代わりに電光掲示板には、「行車愉快」「請勿飲食(飲食はしないでください)」などの表示は出てきたが、隣のお嬢様たちは堂々と豚マンやジュースを飲食していた。優先席は、博愛座と記入されていたがなんとなくわかる。70分かかるというので、腹をくくって停留場に止まるごとに写真を撮って暇つぶしをしながら移動した。そのバスは非常に多く走っているようで、バネがギシギシと今にも折れそうな音を出していた。ドアも自動になっていたが、1回では閉まらず2回、3回と繰り返して閉めていた。タクシーは40万kmも走るが、バスは200万kmも走ることが出来るほど頑丈だ。多分このバスもそれくらい走っているようだ。

目指す「九份」に到着した時に初めて運転手は、大きな声で叫んだがすぐにここが「九份」とわかった。今まで観光地らしきものがなかったが、一気に観光客が見えたからホッとした。ここは宮崎駿作のアニメ「千と千尋の神隠し」のモデルとも言われている。狭い階段が迷路のように続くが、その両側には屋台ほどの小さな店が延々と連なっていた。ここはレトロ感を味わう散歩道のようだ。張子のように首を左右に振りながら坂を登っていくが、いかにも観光客のようだ。そこは台湾映画「非情城市」の舞台にもなっていた有名な場所で、至る所でその写真が貼ってあった。日本語のできる店員もいるので値段交渉も面白い。1時間も歩いていると喉が渇き、崖から飛び出た喫茶店があったので、そこで一息入れたら眺めが最高の場所だった。

休憩後に今度は坂を下って戻ろうとすると、東京の山手線のような多くの人でごった返すような人出になっていた。散策しながら食べ歩きもできる絶好の場所でもあり、遠い昔の縁日を懐かしむこともできる良い場所だ。ビルの上では結婚したカップルの記念撮影が執り行われていた。日本人観光客も多く、同行しているガイドの説明をただで聞くことは問題なしである。