写真サロン「近未来写真術」第5回 「TOKYO NUDE」篠山紀信

 

【感想】

 今回は、世紀末の東京を独自の手法で写し出した、篠山紀信さんの作品「TOKYO NUDE」と、それに関するインタビューの映像を鑑賞しました。

 

 鑑賞後のお話で感想を求められた際すぐに答えられなかったほど、裸の女性が立つ東京の街の姿に衝撃を受けました。それは、わいせつであるためというよりは、剥き出しの胸やでん部という、夜の街中に馴染まないものが突然いくつも置かれていることでのショックでした。しばらくの間、その作品の意図を考えるところにまで頭が働きませんでした。

 

 暗がりの横断歩道を渡る親子連れのそばにたたずむ、人形のような全裸の女性たち、金属のフェンスに布団のようにぶら下がる、白い女性の裸体…。それらの写真を観たとき、一千万人以上が住まう東京という街には、目には見えない、このような混沌や狂気があちこちにあるのではないかと感じました。街に住まう人は、普段その混沌を見ないようにしているか、もしくは慣れることで狂気に飲み込まれないようにしているのかもしれない、など色々な想像が頭に膨らんで止みません。いずれにせよ、私はまんまと「びっくりさせたかった」と言う篠山さんの狙いどおり、その作品に驚かされてしまいました。