写真サロン「近未来写真術」第8回 「日本典型Quintessence of JAPAN」柴田敏雄

 

【感想】

 今回は、山・川などの自然の中にある、コンクリートでできた人工物を撮影する柴田敏雄さんの作品に迫りました。柴田さんは東京芸術大学で油絵を専攻していたそうですが、その後版画を経て写真に転向、ベルギーの王立アカデミーの版画学科に留学した経歴を持っています。 

そんな柴田さんの作品は、雑草や川の水といった、決まった形のない自然と、コンクリートでできた一つの決まった形しか持たないものが同じ画面の中に置かれていて、目を引きました。格子状のコンクリートで覆われた山の斜面、建設中のダムの一部、造りかけの橋の脚、崩れかけた山肌を支えるように造られた、まるで棚田のようなコンクリートの階段。特に、格子のように同じ形のものが連続している写真が多いように感じました。

自然と人工物の組み合わせとなると、ともすれば「環境破壊」などの考えが写真に加わってしまう恐れがありますが、柴田さんの写真ではひたすらに形の美しさが追及されていました。ダムってこんなに興味深い形をしていたのかしら、と魅入っていました。

 

資料映像鑑賞後のお話では、柴田さんの写真が絵画の基本である「対比・対称・繰り返し(リズム)」が取り入れられた、「絵描きが撮った写真」であるという講師の先生の言葉に、納得するところが大きかったです。自然と人工物の対比、人工物ならではの対称さ、繰り返される格子…見直してみると、確かにその通りなことばかりでした。今後、写真を見るときには、この絵画の基本からも見ていきたいです。