文化サロン第9期 「アクリル画の世界」

第3回 アクリルの魔術師たち「岩井壽照」(7月6日)

 

〈 感 想 〉

 

今回は、岩井壽照さんの作品と、作品制作のために使う技法についての映像を鑑賞したあと、「なぜ絵を描くのか」「現代アートとは何か」など、美術全般のお話で盛り上がりました。

映像で観た岩井さんの作品は、ほぼ真っ白の画面に、何本かの直線と淡く吹き付けられた青があるだけの、最小限に近い描写で描かれたものでした。それは静かな水辺のようでもあり、あるいは岩井さんが求める心の世界を描いたようにも見えました。

 映像鑑賞後のお話も、興味深いものがたくさんありました。その中で「技術・技法は自分が表現したいものを描くための道具である」という言葉が特に印象に残っています。色々な道具があれば、作品を作るうえでの選択の幅が広がります。上等な道具を用いれば、多くの人の観賞に耐えうる、質の高い作品が出来上がることでしょう。ただ、自分が何を表現したいのかが定まっていなければ、どの道具を使うのが最適かの判断もつかず、結果何だかよくわからないものが出来上がることを、改めて教えていただいたような気がします。

私も時々小さな絵を描くことがあります。私の場合、描いた絵はだいたい人にあげてしまうので、今回のお話に出てきた「なぜ絵を描くのか」の問いに対しては「人とのコミュニケーションの道具として使うから」という答えが浮かびました。

そして絵を描くときは一応何らかのテーマを決めて描くのですが、ここ何年か、なぜか何を描いても前に描いたものと同じような作品になることがあり、頭を悩ませていました。違うものを描くだけの技術が足りないとばかり思ってきましたが、今日のお話を基にして非常に都合よく考えると、もしかすると自分の表現したいものが定まってきたのかもしれません。いずれにせよ、「自分が何を表現したいのか」を意識して、これからも絵を描き続けていきたいです。