文化サロン第9期 美術サロン「アクリル画の世界」
第9回 ジャンルを超えて「山本裕子」(8月17日)


〈 感 想 〉

 今回は、山本裕子さんの作品の紹介や制作過程・技法の紹介、制作の上での意図・考え方などに迫る映像を鑑賞しました。
 映像の中で興味深かったのは、山本さんが論理的に自分の作品についてお話されていたことでした。山本さんは東京藝術大学で油絵を専攻され、中世から現代に至る絵画の歴史を一通り踏襲し、その上で自らの絵画を追及してこられたのだそうです。映像で紹介された山本さんの作品は、水性クレヨンなどでドローイング(単色の線による描画のこと)された和紙を重ねることによって支持体を作り、その上にさらに描画していくという過程によって生み出されていました。このような制作方法をとる作品を作る前は、カラフルな立体作品ともとれる作品を制作されており、いずれにせよ既存のジャンルを超えた新しい絵画を生み出そうとする強い意志を感じました。今回の映像は1990年ころのもので、最近では文字をモチーフにした作品(立体の文字と平面(絵)を同じ空間に並べたもの)を作っておられるそうです。90年からどんな過程で今の作品に変化していったのか気になると同時に、山本さんの今までの作品たちを、年代順に並べて鑑賞していけたらどんなに面白いだろうかと想像してしまいました。
 また、映像の中でもう一つ印象に残ったのは、「鑑賞した人が何かを感じることで、初めてその作品は出来上がる」という言葉でした。私が山本さんの作品を見て感じたことは、「根拠はよくわからないけれど、山本さんとは仲良くなれそうな気がするなあ」という直感でした。おそらく、作品の色使いや立体の形などが私にとって心地よかったからかもしれません。そんな直感を感じたと同時に、自分の描いたものは人に見せないといけないと改めて教えられたような気がしました。ちょうど縁あって、来年発表の機会をいただくことができたので、どんなにどうしようもないものでも自分の描いたものを作品として「完成」させようと思います。

(倉吉市/20代/女性)