ニューヨークの風(肥和野佳子)    26

「私の減量の成功法」

 

年始に今年こそ体重を落とそうと思った人は多いだろう。私もまたそろそろ始めようかなと思う。経験的に私は2カ月で5キロ程度ならいつでも落とせる自信がある。この10年で過去3回トライして、3回ともできたから、たぶん大丈夫。もちろん人によって体質があるから、同じようにやっても効果の出方がちがうだろうから、私のやり方が有効かどうかは保証の限りではないが、まあ、こんな感じでやっている。

 

だらだらやらずに、やるときは本気でしっかり一定期間の短期勝負でやる。私の場合はいつも2カ月勝負だ。まず、しっかり記録をつけること。これが一番大事。記録があれば分析ができるし、自分を客観的に判断できる。問題点も発見しやすい。成果が上がるのも目に見えてくるので、達成感を得て、モティベーションもあがり、もっと頑張ろうという気持ちが起こって、よい行動のスパイラルが生じやすい。

 

記録と言ってもなにも詳細ものをつける必要はない。毎日体重と、食べた物のおおまかな記録をメモするだけ。体重だけでも効果は十分ある。「毎日つける」がとにかく大事。いくら運動しても、たくさん食べたら体重は減らないことに気がつく。運動だけでもだめだし食事だけでもだめ。運動プラス食事制限のコンビでやる。

 

ダイエット(食餌療法)としては、カロリーコントロール中心。有酸素運動でジムでステッパーを20分間しても消費カロリーは150キロカロリー程度にしかならない。毎日やっていればそれほどでもないが、20分間のステッパーは結構たいへんだ。あんなに苦労しても、ご飯一膳分程度にしかならない。食べたらあの苦労がチャラになってしまうと思うと食べる気がしなくなる。ラーメンなんて一杯700キロカロリーもあるからお昼にちょっとなんて気軽には食べる気にならない。食べ物を買う時にカロリー表示をよく見るようになる。

 

減量を始めても最初の2−3週間はあまり体重が減らないので、つらい時期だ。人間の体は飢餓に備えて、カロリーを少ししか取らなくなると、まず、省エネ型の体になるらしい。だから最初のうちは運動してもあまり食べなくても体重が減らない時期がある。それに、筋肉は比較的すぐつくので筋肉がついて体重が減らないという要素もある。

 

食べる量が減ると胃が小さくなるので、そのうちあまり食べなくても平気になる。空腹感は慣れで、たいして感じなくなる。朝はバナナ1本程度、昼はトマト1個にクラッカー2枚とか、おからクッキーのみとか、またはマグカップにコーンフレークとノンファット牛乳を入れたものだけとか。夜は普通に食事するが控えめ。独身で家族がいなければ夜ももっときつい食事制限はできるのだが、家族と別メニューというのも面倒なので、普通にした。そういう意味では一人暮らしのときの方がダイエットしやすかった。

 

体を壊さないように、いろんな種類のビタミンをバランスよく配合されたマルチ・ビタミン剤を1錠と、コエンザエムQ10 (120mg)を1錠、毎日飲む。一人暮らしのときはシリアルを夕食にすることもあった。シリアルというのはコーンフレークなどのことで箱に入ったものをサラダボウルくらいの入れ物に入れて、牛乳をかけたりして食べる。箱から出すだけなんて、犬の餌みたいだけれど、もともと朝食用に開発されてきたので、結構栄養バランスがよい。低カロリーのシリアルを選んで買う。

 

勤務先では仕事に集中しているので、だいたい空腹感は忘れている。家にいておなかがすいたら豆腐かサラダを食べる。ドレッシングは低カロリーのものを少しだけつけるか無しで食べる。高カロリーで食べたくなるようなものを冷蔵庫の中に置いておかない。

 

お菓子はダイエット中は絶対買わない。あると食べてしまうので買わないのが一番だ。でも2週間に1回ご褒美の日を作って、少しだけならよい。その場で食べきれる量のみ買う。私はダイエット中に、通りの屋台で見かけるハニー・ロースト・ピーナツがどうしても食べたくなって、5センチ角くらいの小さい袋入りが1ドルか2ドルなので、買ってその場で歩きながら食べて、なんておいしいんだろうと思った。

 

運動はやはりフィットネス・ジムに通うのが良い。ジムには科学的に効率よくフィットネスできる機械がたくさんあるし、運動する雰囲気にあふれている。フィットネス・ジムはできるだけ近くで便利な所にあるジムを選ぶのが良い。自宅や勤務先の近くか、帰り道にあるとか、とにかくそこへ行くのに時間がかからないところがよい。遠いと行く気がしない。

 

ジムで運動をするのはそれだけでも結構時間がかかる。運動だけで1時間くらいやりたいから、着替えやシャワーの時間を含めるとだいたい普通1時間半くらいかかる。そこに行くのに片道30分もかかったら往復1時間で、合計2時間半にもなってしまう。そんなに時間をかけては1日の自由時間が少なくなってしまうので、自由時間が豊富にある人以外は望ましくない。

 

継続して行くことが大事で、そのための動機づけが必要だ。1回1回料金を払うシステムではなく、定額制で、行っても行かなくても料金は同じというシステムを選択するのが良い。定額制なら少ししか行かなければ1回あたりの料金が高くなり、たくさん行けばいくほど1回あたりの料金は安くなり、お得感があるので、行かなければ損をするという気になる。

 

自分の経験では、料金が安すぎるところは良くない。NYで私営のジムは定額制で月額だいたい65ドルから120ドルくらい。NYの公営のジムは格安で、1年間で70ドル。公営なので設備はまあまあという感じで、タオルは持参しなければならない。ロッカールームは学校の施設みたいに安っぽくて単純だが、まあそれなりに清潔感はあって悪くはない。しかし、ただみたいに安いと、失うものがないのでなんとなく行く気がしない。行ってここちよくなる雰囲気でもない。この公営のジムに入ったこともあるが、結局2回しか行かなかった。

 

その点、ホテルのフィットネス・ジムは高級感があって気持ちがいい。タオルも質がいいしローションなどもあって癒し効果もある。通常、ホテル客でなくても会員料金を払えば使える。料金は高いが、それほど高くないホテルも探せばある。私は毎年夏場だけ毎日通うクライアントがあり、そのオフィスのすぐ近くに、ミレニアムUNプラザホテルがあって、夏に2ヶ月間だけ会員になってウィークデーはほぼ毎日昼休みにそこのジムに行く。そこは短期は入会金なしで1カ月145ドルで、ホテルだから普通の私立のジムより高め。月に20回行くとして、1回7ドル25セントの計算になる。それでも高いかもしれないが、2カ月のことだし、休めば7ドル25セント損するからと自分の尻をたたく動機づけになる。

 

昼休みにジムに行くのはゆっくりはできないのが難点。着替えやシャワーに時間をかけない。オフィスの机を離れてから机に戻るまで、すべて含めて1時間15分で済むようにやる。昼食はトマト1個にクラッカー2枚食べるくらいで、机の上でいつでも食べられるので、昼休みを食べる時間に使わない。もし仕事中におなかがすいたら、低カロリー(1本90キロカロリー)のダイエット・バーを食べる。スナック的なものなので、机で食べて問題ない。

 

余談だが、ミレニアムUNプラザホテルにお昼休みの時間に行くと、よくANAの客室乗務員のグループと出くわす。ANAはもうここ数年間もあのホテルを常宿にしているようで、ANAの客室乗務員さんたちを見かけるたびに、「ああ、あの飛行機に乗ると日本に着くのね。」と思って日本へのドアを見たような気になる。日本とつながった気分になれるので、いつもロビーを通るたびに、今日はANAの人達はいないかなと探す自分がいる。

 

それから、運動するときのフィットネスのウェアも自分のモティベーションを上げる効果のあるものを着るのが良い。着て気分が良くなるかっこいいウェア、自分の好きなこだわりのウェアを着る。私はワコールのCW-Xという高機能タイツに、日本のアディダスのシャツがお気に入り。こんなかっこいいデザインのものは米国には売っていなくて、たまにどこで買ったのと人に聞かれる。スポーツ・ウェアは日本が世界一進んでいると思う。

 

米国人はジムで割とおしゃれっ気のないウェアでやっている人が多いので、ちょっとかっこいいのを着ていると人目を引くので、だらだらかっこ悪く運動するわけにいかない。ある程度緊張してかっこよく運動しなければならなくなる。そうやって自分を追い込む効果もある。ジムやウェアには一定のお金をかける価値はある。効果を出すにはある程度お金はかけた方が良い。

 

記録の付け方にもコツがある。まず目標を定める。毎日行くとか週3回行くとか、それなりの頻度の設定する。運動の量も何をどのくらいするか、具体的に決める。私はまず、腹筋百回で体をほぐして、それからマシンを使った筋トレを3種類20分程度、筋トレは同じ筋肉を毎日やるのはよくないので、上半身と下半身に分けて交互に日を変えて行う。有酸素運動はステッパーかトレッドミルで20分、長いときで30分毎日やる。そしてそのノルマを達成できた日には「マル」をつける。人間、「マル」をつけると続けたくなる。

 

ジムで体重計に毎日乗ると、増えているとなぜだろうと分析し始める。「ちゃんと運動はいつものようにしたのだから、あれを食べたのが悪かったのかなあ」とか思い当たることが浮かぶ。逆に減っていると、「昨日はそういえば食べなかったなあ」とかわかる。「普通に食べたのにどうしてこんなに今日は減っているのかなあ、きつめのランニングで汗をたくさんかくと結構違うなあ、でもこれは水分出ただけよね」とかわかるようになる。

 

私の経験では、こんな調子で毎日ジムに通うと、だいたい3週間ごろから、体重計に乗るたびに体重が減ってきてうれしくなる。運動にも空腹にも体が慣れてきて平気になるので、どんどん結果が出てくる。運動メニューももっときつめに上げることもできるようになる。だが、無理はせず、気持ち良くできる程度で十分だ。

 

だけれど、また減らない時期もある。体のリズムがあるので同じようにやっても結果がでない時はある。それはそれで気にしない。増えなければ良しとする。するとまたそのうちに減ってくる。そんな感じで2カ月やると5キロくらい減量できる。何キロ減ったと言ってもその人の体重によってその意味は違うので、現在の体重の10%以上は落とさない方が良いと思う。2カ月で急激に落としすぎは健康によくない。

 

私の場合、2カ月で結果を出すとあとはジムをしばらくやめる。適度に自分で体を動かしながら普通に生活をする。2カ月で体ができているので、普通に食べてもリバウンドは来ない。半年過ぎるとさすがにやや体重が増えるが、それほどでもない。数年間運動しなかったときは5キロくらい増えてしまったので、また2カ月のダイエットで落とすことができた。健康的には1年を通して少しずつ運動をするのがよいというのはわかっているが、5キロ落とすのに1年もかかるのは面倒くさい。健康維持目的で運動する場合はともかく、減量として成功させるには、とにかく本気で短期決戦で一気にやる方が結果は出やすいと思う。記録をつけるのがキーで、本気度の高さ、自分に対する厳しさが大事だ。