ニューヨークの風〔肥和野佳子

ニューヨークの風7(2008.6.15)

てるてる坊主

日本では梅雨の季節。 私は以前から思っているが、どうも「てるてる坊主」が首吊り人形に見えてしかたない。 なにか、人の形をした物が首を吊ってて、縁起が悪いように 見えるのだが、どうして、てるてる坊主は晴れをもたらすラッキー人形なのだろう?

こどものころは、てるてる坊主を吊るして晴れを祈ることに、 特になんの疑問ももたなかったが、大人になって、ふと見ると、変な感じがする…。そう思ったことはないか? あれって首吊りそっくりに見えないか? ひょっとして、大昔、晴れなくて、何らかのことで咎められ 、首をつった人がいて、それが何らかのことで転じて晴れの神様にでもなったのか…?

人から聞いた話では、人形を半分に切ったものを吊るすこともあるとか、 人形を逆さに吊るすこともあるとかで、ひょっとして、てるてる坊主は、一種の「いけにえ」なのではと、ふと思った。 人形を半分に切るなんて、殺すことの象徴みたいだし…。 雨乞いというのは、大昔よく行われていた。いけにえも、あっただろう。

アメリカには、てるてる坊主のようなものはない。世界的に雨乞いの風習はいろいろあっても、晴れ乞いの風習はほとんどないらしく、日本のてるてる坊主は世界的に貴重な風習らしい。

好奇心に駆られてインターネットでいろいろ調べてみた。 フリー百科事典『ウィキペディア』では以下のようなことが書かれていた。

「てるてる坊主とは日本の風習の一つであり、これを正立させた状態で軒先などに飾ると、明日の天気が晴れになると言われている。「てるてる法師」、「てれてれ坊主」、「日和坊主(ひよりぼうず)」など地域によってさまざまな呼称がある。一部地域などでは逆に倒立させた状態で飾ると、明日の天気が雨になると言われている(「ふれふれ坊主」「あめあめ坊主」「るてるて坊主」と言われる)。また、てるてる坊主に「顔を描くと」雨になるとする。起源は中国の掃晴娘(サオチンニャン)。」

別のネット情報では、「てるてる坊主の起源は、もともと中国から入ってきた風習で、掃晴娘(サオチンニャン)人形。女の子をかたどった白い紙の人形に赤と緑の着物を着せ、稲の穂でつくったほうきを持たせて軒に吊るし、雲をほうきで払って青空をもたらしてくれるように祈るもの。これが日本に入り、庶民に広がるようになって、てるてる坊主の風習が生まれた。昔、天気は今以上に生活に影響を与えるものだった。農業が重要な生活の基盤だった時代は、長雨やひでりなど不順な天候が続けばひどい飢饉の原因にもなる。このため晴れを願う時は白いてるてる坊主を軒下へ吊るし、雨を願うときは黒いてるてる坊主を使うようになった。最近では雨が降ってほしい時にてるてる坊主を逆さまにして吊す場合もあるようだ。そして、目や鼻を描くのは、晴れてほしいという願いがかなった後に行う。顔を描いた後は、童謡では金の鈴をつけてあげることになっているが、昔はお酒を供え川へ流して供養していたそうだ。」とあった。中国では掃晴娘の風習はすたれてしまって、今はもうないらしい。

ちなみに、童謡「てるてる坊主」(作詞/浅原六朗、作曲中山晋平1921年)の歌詞の3番を知っている人は少ない。3番の歌詞は、「晴れにならなければ首をちょん切る」といった残酷な内容であるため、現在放送する際は3番をカットすることが多いそうだ。たしかに昔の童話や童揺というものは、もともと残酷な内容が含まれていることがよくある。

日本には梅雨があって、うっとうしいかもしれない。余談になるが、てるてる坊主の風習だけでなく、日本の傘文化も世界で希少価値だと思う。日本で生活していると気がつかないかもしれないが、日本では傘のファッションが極めて発達している。デパートには傘売り場があって、いろいろ立派できれいなデザインの傘がある。軽くて機能的な傘もあり、日傘も売られていて種類が豊富だ。

アメリカには小売店の傘屋はないし、デパートにも傘売り場はない。傘は売場の隅っこにちょこんと売られているだけだ。それも単色で黒、紺、赤程度しか売られていない。折傘も大きくて重い。傘のファッションというのはなくて、米国では女性も日本では男性用とされる黒の傘をさすのが主流だ。花柄の傘をさしている人をめったに見たことがない。折傘もきれいにたたまず、くしゃくしゃのままくるっととめる。

アメリカは車社会なので傘をさして歩く機会が少ないので、傘文化が発達しなかったのだろうけど、しっとりの日本文化と、なんとなくがさつなアメリカ文化がみてとれる。

「てるてる坊主」

 

てるてる坊主 てる坊主

明日 天気にしておくれ

いつかの夢の 空の様に

晴れたら 金の鈴 あげよ

 

てるてる坊主 てる坊主

明日 天気にしておくれ

私の願いを 聞いたなら

甘いお酒も たんと飲ましょ

 

てるてる坊主 てる坊主

明日 天気にしておくれ

それでも曇って 泣いてたら そなたの首をチョンと切るぞ