リレーエッセー

今月の執筆者

     林原 滋

「今、鳥取を想う」

エッセーって何ぞや?作文とは違う?

「リレーエッセーをお願いします。」と、ある日封書が届いた。

「学校を卒業して以来、作文すら書いた事がない、それすらまともに書いた事がない僕に、エッセーなんて………無理。」悩む事二週間。どう書いていいのか解らないが、とりあえず今思う事を綴ってみる事にした。

僕は風景写真を撮る為に昼夜を問わず山に行く事が多い。撮影場所を求めて車を走らせていると、ある看板がよく目に留まる。

「熊出没注意」

町からまだ数キロしか走っていない、どちらかと言えば町寄りの方です。そんな集落に近い道路脇に、当然目立つように立っている。

「えっ!こんな場所に熊出るの!?」半信半疑で看板を見送りつつ、ふと思う。

「あんな看板、昔は本当に山奥でしか見たことないのに、それがこんな集落に近い所に立っているなんて…山に食べる物が無くなってるんだなぁ…」

確かに最近、野生動物が集落に下りてきて、畑や民家の庭先を荒らしている、と注意を呼び掛ける町内放送を耳にする事が多くなった気がする。その為、野生動物と出くわす事もしばしば。(猿、狐、狸、フクロウ、ヌートリアなど)以前から居たとは思うのだが、昔よりも見る事が多くなった。猿、猪、フクロウ、などは山中でなく、町村の付近で目撃することが多く、フクロウなどは名和町の港町でよく見かける。関東の方では、狸が都会の真ん中に巣を作り暮らしていると聞いたことがある。

「開発や天災により、食べ物が少なくなった山で餌を捜すより、街の繁華街で残飯をあさる方が遥かに効率もよく、食べ物に困らない。」とTVで伝えていた。自分達を襲う捕食者が居ない事もあるようだ。しかし車が頻繁に行き交う都会、別の危険もかなり伴う。餌が豊富にある以外、とてもいい環境とは言い難い気がする。

まさにこの鳥取でも同じ事がおきている。見た目には変わったように見えなくても確実に自然破壊、環境の変化がおきている。それに伴い住む場所や餌場を無くした動物達が東伯町内全域に姿を見せるようになった。そう考えるのが自然だと思う。日々山道を走っていると、道路拡張工事、携帯電話アンテナ設置工事、土砂崩れ防止工事などいろんな工事現場を目にします。どれも現代の私達には必要な事なのでしょう。

街から離れて暮らしている人たちの為に、カーブの少ない安全な道を、同様に土砂崩れによる被害を避ける為には相応の工事も必要になり、携帯電話の急速な普及を考えれば当然。でも、その裏には大きな犠牲があり、その犠牲の上に成り立っている事を忘れないでほしい。人の手ではけして造ることが出来ない自然の景観、そこに住まう動・植物達、壊してしまうと、人間が滅ぶまで二度と元に戻らない。何千年も続けてきた共存共栄の世界を、これ以上壊してしまったらどうなるか…想像に難くないです。

鳥取県は本当に田舎です、僕自身この田舎街が嫌で、若い当時何度も思った事があります。

「どうして鳥取には都会のようなお店や遊ぶ場所が無いんだろう?なんで作らんのだろう?野山ばかりで、こんなに土地は沢山あるのに、若者離れは当たり前じゃん、行くところも遊ぶ所も無さ過ぎだで」

今この鳥取にすむ若い世代の人達も、当時の僕と同じように思っている人が何人も居るんじゃないでしょうか。

でも、鳥取はこれでいい、この溢れる自然がいい。今は解らなくても、いつかきっとその良さが身にしみて解る日が来ると思う。都会と同じになる必要は無いです。海よし山よし自然溢れる鳥取県、鳥取自体がテーマパーク、派手なアトラクションも電飾パレードも無いけれど。