リレーエッセー
今月の執筆者 市川依子
「カチューシャの歌」
去る五月七日「アザレアのまち音楽祭オープニング・ナイト・ガラ」では「カチューシャの歌」が演奏されました。
この曲は私の少女時代の頃です。日本の演劇界に女優第一号として誕生した松井須磨子が主演した「復活」の主題歌で日本国中に大ヒットした曲です。彼女の演ずる数々の舞台は第スタートしての風格を備え、地位を保ち、高く評価されていました。
後に評論家であり、新劇運動家として有名であった「島村抱月」氏と松井は芸術座を立ち上げ、大人気を集め、華やかな芸術活動を続けていました。中でも代表的な主演作品は「復活」です。松井節「カチューシャ」として、幾度も再演されていました。
その頃の新聞や雑誌には松井の写真が多く載っていて、とても印象付けられました。「復活」の原作によれば、寒いシベリヤを流されていくカチューシャのことについては、「カチューシャの少しヤブニラ目の、あの大きな瞳で見つめられたら大抵の男たちはイチコロになってしまう……」と書かれていたのを覚えています。
しかし思いもよらぬことが起きました。抱月の死後、須磨子は後を追って自殺したのです。いろいろな噂が飛んで松井と抱月は心中したとか。他にも、まことしやかに伝えられてまったくショッキングな出来ごとでした。
一昔前の有名人たちの、まっすぐ一筋と言われている驚きの生き方をして、今に至るまで伝わっている事実が多いのは「スゴイ!!」。ひたむきに歩みつづけた松井流の真似は、中々出来ません。彼女は「わが人生に悔いなし」と、最後も淡々として、晴れやかに他界しました。人生とは、出会いと別れの繰り返しのようです。カチューシャの物語ピッタリに、歩み続けたことでしょう。
アザレアのまち音楽祭においで下さるお客様は、喜びも悲しみも人それぞれに心を打たれて満足してくださると思っています。
現在は倉吉市勤労青少年ホームが日曜日も利用が出来るようになって、嬉しいことです。
良い場所とよき指導者と、本人の努力と、三拍子揃って活動が出来るわけです。楽しく我が道を行くことで次の世代も育つということになります。豊かな心を育てることで、自分と向き合いながら、ゴールに近づきたいと思います。
(倉吉つぼみ会バレエ教室 主宰 )