今月の執筆者

「犬と私と倉吉の町並み」

 

 犬との出会いは14年前。以後倉吉の町から打吹山周辺と毎日コースを変えながら、散歩を楽しんでいます。市内は河原町方面へ向い、小鴨橋のたもとの大イチョウから向きをかえ、東へと下り、気が向けば打吹公園へ寄ったりもします。以前博物館の学芸員である根鈴氏の講演で、倉吉の町並みは東方面へ向い、遺跡を掘らなくても、ローマの遺跡の様にそのまま残り、倉吉の町の移り変わりを目で見る事の出来る貴重な町並みなのですと言われた事を思い出しながら通りを歩いて行くと、倉吉の歴史探訪の様で余計楽しくなります。

 現在博物館、館長の(文化財課、課長)の眞田氏がこういう倉吉の町並みをこよなく愛され、保存しなければと、強い意志で臨んでおられる気持も伝わってきます。そしてこの倉吉の町並みのバックには、デンと構えた打吹山の存在に気付かされます。

 春夏秋冬。季節毎の見事なまでの美しさ、時として思わず立止まって見入ってしまいます。最近では、打吹公園のもみじの、紅葉のあまりの美しさに「何も京都まで行って紅葉を見なくてもいいじゃないの」(実は、1113日に京都の東福寺、永観堂、清水寺と人込みにもまれながら紅葉見物に行ったのでした。)と犬に話しかけると、犬は何かの臭いに反応している様子で、私のほうには見向きもしません。

 春は桜。昼の桜。夜の桜。(少し遅い時は貸し切り状態で、ぜいたくな気持になります。)夏は緑のシャワーと、陸上競技場の犬走り付近の蛍。蛍の群舞を見た時は実に幻想的。秋は紅葉。上を見上げると、顔が真赤に染まってしまう程の赤、黄、オレンジのアンサンブル。冬は、景色が白一色。銀世界なのです。打吹山さん、打吹公園さん、本当に有難う。

 打吹公園は日本で二番目に出来た歴史ある都市公園だそうです。一番目はどこでしょう。実は、日比谷公園なのだそうです。これ本当の話なのですよ。打吹公園が百周年を迎えた時に、倉吉市は公園の整備をされました。暗い場所に照明を付け、夜でも安心して散策が出来るように歩道も整え、歩きやすくなりました。まるで、犬と私の為にして下さった様だと、勝手に思っている次第です。

 平成22年、123日に倉吉市勤労青少年ホーム(リフレプラザ)主催の第一期、若いビジネス・パーソン育成講座で、ゲストの森氏のお話では、「全国の観光地、街、町」に視察に行って参考になったけど、どこも倉吉の参考にはならなかったとおっしゃった事が、印象的でした。結局、倉吉は東京にも、大阪にも、京都にもなれないのだから。倉吉は、倉吉でいいのだと。倉吉が生き残って行く為にこの美しい町並みを守り、育てていけたらと願いつつ答えを探しながら過ごしていきたいと、感じる今日近頃です。