今月の執筆者

小泉和子

〜過去と未来を繋ぐ点〜

友達に誘われて小学校4年生の時始めた「筝」。面白いとも思わないで、ただ友達が誘いに来るから一緒に通っていただけでした。それでも中学校になり、私も色々考えるようになりました。面白くないのにお稽古に通っているのは、意味が無いと思いました。それに「将来何の役にたつのか?」と…。母に「止めさせて!!」と泣いて頼みました。しかし母は首を縦に振ってはくれませんでした。

しかし、こんな私が、何といまだに、飽きもしないでお稽古に通っています。休んだのは小学校6年生の時、股関節脱臼で入院した6ヶ月間だけです。こんな子ども時代を過ごした私なのに、18歳で師範の免許を習得し、二十歳頃から教えてもいます。今まで続けて居られたのは、やっぱり友達がいたから…そして家族の応援があったからだと感謝しています。今では、演奏する事が楽しくてしょうがありません。「この楽しさをたくさんの人に知って頂くには、今、何をすれば良いか?筝に携わっている私に出来る事は何だろうか?」といつも思います。

伝統音楽は一般的に、雅やか、癒される、逆に、とっつき難い、古臭い、と言ったイメージがあると思います。

それもそのはず、長い時間をかけてじっくりと成熟され、伝統という積み重ねによって、楽器の演奏に伴って礼儀作法、演奏の「型」など日本人らしい室礼の(「設(しつら)え」のこと。室内の装飾。)演出で、総合的な表現がなされていったからだと思います。

伝統文化を後世に繋いでいくには、「若者にも愛され続けていけるように、新鮮な風を吹き込んでいく事も必要だ!」と思います。「型」を守りながら、さらに発展させていく事、つまり新たな「創造」も必要という事です。それには、理解されない時もあるかもしれませんが…そこで生まれたエネルギーを大事にして諦めないでやり続け、先人の文化を徹頭徹尾敬虔(けいけん)しつつ、そしてそれを育てて、後に繋いでいく…そうすれば、伝統は常に容易い事ではありませんが「生き続ける事が出来る…」と思います。

私は「筝」に携わって色々な出逢いがあり、色々な事を学んで本当に楽しく、毎日を感謝して過ごす事が出来ています。

こんな私の思いは、その時代に必要とされ、尚且つ、道義にかなったことを目標として、生かされている喜びがあれば良いと思います。要は自己完成に向かっていれば良いのです。何でも良いんです。突き詰めていく過程が面白いんです。私には「筝」との出逢いがありました。

宇宙から見れば小さな、小さな「点」でしかない私ですが、「筝をもっと大勢の方に、身近に感じて喜びを知ってもらい、過去と未来を繋ぐ点になれたら…」と思う気持ちでいっぱいです。