リレーエッセー
倉吉絣保存会 牧田圭子
今から40年程前、全国各地で「生活学校」という新生活運動が盛んになっていました。鳥取県でも30校あり、「衣・食・住」等、身近な問題を取り上げ真剣に学習したことを思い出しています。
バブル時代になり、使い捨ての生活に慣れたことでごみの量がだんだん増え、分別方式のごみの出し方、再利用、リサイクルが始まりました。タンスの中で眠っているものを、捨てる前にもう一度使えるものにリフォームする等、考えることが大切になったと思います。生活に欠かせない衣・食・住の中で、身近な川の水質調査等々、多くの課題を生活学校で学び実践したことを思い出している昨今です。
さて、3月11日の東日本大震災では、夢にも見たこともない津波で何もかも押し流される様子がテレビで放映され、信じられない光景に唖然としてしまいました。一昨年6月訪れた仙台空港の上空で見た広い田園風景のすばらしさには感動し、田植えが終わり、みどり一面の稲田を見た時思わずすばらしい、きれいと声を上げていたのです。これが一昨年のあの時の美しい田園かと、呆然としてしまいました。また、福島原発の放射性物質が「衣・食・住」に被災していますが、目には見えない恐怖と不安を感じています。ずっと以前に島根原発に見学に行ったことを思い出しています。
しかし日本中「がんばれ日本」の声と共に、津波の後、荒れた畑で綿の栽培が進められていることを新聞・テレビで知り、今年秋には収穫が出来たとのこと、明るい話を聞き喜んでいます。今、アジアの国々でも「コットン」ブームになり、綿づくり、糸づくりが盛んになっており、近くの弓ヶ浜でも年々多く栽培されています。綿から糸を紡ぎ染色して、絣を織る一環の工程は私達倉吉絣のメンバーの一番の望みです。古い絣を捨て焼いてしまった話を聞くたびにもったいない、残念な思いがします。
絵をそのまま織り込んだ様な複雑な模様が美しい倉吉絣は、約200年前、稲島大助が花鳥山水の絵を絣に織り、普及させました。明治時代、万国博覧会に出品した絣は、諸外国において受賞するなど名声を博した様です。現在では絣の美しさに魅せられた人たちが、その技法を学び、手作業で一本一本の糸に真心を込めて受け継いでいます。
倉吉絣保存会は十二支「干支」の柄を毎年織り、今年は「うさぎ」、来年は「辰」と織っています。また11月15日〜29日まで、リフレプラザで干支展を開催することになりました。自分の干支、家族の皆さんの干支、一度見て頂ければ幸いと思っています。足を運んでみてください。