今月の執筆者
齋 藤 奈 緒 美
「笑顔」のお届け
私は2007年をもって解散した、倉吉リコーダー教室の数人の仲間と、今も時折、老人施設で訪問演奏を行なっている。
訪問にあたっては、施設の方に一緒に歌って頂ける様な、わらべ歌や唱歌、民謡、歌謡曲の選曲を心掛けている。鳥取県出身の田村虎蔵や岡野貞一の作品「大黒様」や「一寸法師」「ふるさと」、民謡なら「貝殻節」や「三朝小唄」そして「上を向いて歩こう」「肩たたき」等は常連曲(?)だ。1911年に作られた「鉄道唱歌・山陰線」の歌詞には東郷湖や投入堂、倉吉町や名和神社、大山など、地元の地名が沢山出て来て楽しく、この曲もよく使う。施設の方が歌詞カード片手に、リコーダーに合わせて歌って下さると、私達も嬉しくて、自然に笑顔になる。
また昨年より、ドッグトレーナーのTさんに誘われ、我家の雑種犬を連れ老人施設に伺い、ドッグセラピーを体験するようになった。訪問当初は3匹の訪問犬―ラヴラドルレトリバー、雑種、チワワ―の名前紹介で始まり、犬とのジャンケン大会や、「待て」「ボールキャッチ」等犬の芸の披露で終わっていた。しかし、ある日Tさんが「歌を歌いながら犬達と触れ合ってみてはどうかしら」と発案され、さっそく試してみた。
私がリコーダーで吹く「幸せなら手をたたこう」のメロディーにのせ、Tさんが「♪幸せなら耳触ろう」と替え歌を歌いながら、椅子に座ったお年寄りの側を犬達と歩く。そして「さぁ、わんちゃんの耳を触って下さい」と促すと、最初恐る恐る手を伸ばしていた方も次第に、歌に合わせて耳や背中、尻尾と撫でていかれる。皆さん、一緒に歌ったり、手拍子をしたりして楽しそうに犬と触れ合うようになられた、気がする。
ドッグセラピーに歌と楽器を取り入れたことで、我々も(多分ワンコ達も)今までよりリラックスして時間を過ごせた様に思う。これからセラピーには、愛犬と共にリコーダーも連れて行きたいと思っている。
演奏やセラピー終了後「全く歌わなかった方が、今日は歌っておられてびっくりしました」「普段は見られない様な笑顔を、見ることが出来ました」という施設担当者の、温かい労いの言葉は、本当に嬉しい。
訪問演奏にしても、ドッグセラピーにしても、結局皆さんに「笑顔」をお届けしたい、それだけを目的に行なっているような気がする。そして、その「笑顔お届け」にリコーダーはかけがえのない相棒である。
人の「笑顔」を見ると、こちらまで心が暖かくなる。
自分の行為を喜んで頂けるのは、何と幸せなことか。笑顔のお届けに伺い、私達が笑顔を頂いて帰っている。
日本の、小さな県の小さな街での小さな活動だけど、これからも「笑顔のお届け」を仲間達やリコーダーと共に無理のない程度に続けていきたいと思っている。
(笛吹きマダムズ)